ソ連の援助
「資本主義者の走狗から自衛するためにも同志達には武器が必要であり、ソ連は協力を惜しまない」
ソ連船団に武器弾薬が載せられていた理由を同志スターリンがタス通信を通じて世界に伝えた。
偉大なる同志スターリンの手厚い心遣いにより大量の武器弾薬――戦車揚陸艦にT34や猛虎戦車までが積まれていた。
それが北日本によって奪われ、稚内に送り込まれ国連軍に向かって牙を剥いたのだ。
勿論、残りの物資も稚内へ救援物資として陸揚げされた。
修理要員、あるいは荷役要員として船に乗り込み、隠れていた北日本軍将兵が、物資を担いで稚内へ上陸し、物資を供給していた。
数日かけてようやく船団を撃破した国連軍だったが、灰にしたのは三分の一のみで、陸揚げ出来た物資は稚内守備隊へ供給された。
かくして稚内守備隊は息を吹き返したどころか、反撃を開始。
乗船していた増援、二万と共に包囲している国連軍、警察予備隊第五師団及び第六師団に襲いかかった。
朝鮮半島に部隊を引き抜かれていたこともあり、防衛線は貧弱で、二個師団は後退せざるをえず、天塩の海岸さえ放棄して下がっている。
結果、稚内陥落まであと少しとなったのに振り出しに戻ってしまったことを佐久田は悔いた。
「全て私の責任です」
「そう、自分を責めるな」
自責の念を強める佐久田を高木は慰める。
国連軍の兵力が少ない中、やりくりして大胆な作戦を行い、戦線を安定させた。
その手腕は見事であり、国連軍の中でも佐久田の評価は高い。
しかし佐久田自身は自分のミスが許せなかった。
「しかし、北日本が封鎖線を突破しようとすることは想定していた事です。武蔵の修理状況を見ても出てくる可能性は高かったはず。なのに朝鮮半島にかまけて封鎖突破を許したのは私の責任です」
「あんな手を使うなんて誰も予想できないよ」
海上輸送で最大の問題は荷役、船からの積み替えだ。
船同士あるいは船と陸であっても多大な時間が掛かる。
北日本軍が稚内へ救援の船団を送ろうとしても、そのために船団の呼び寄せ、物資の積み込みに時間が掛かると予想していた。
船団集結と物資の積み込みの兆候がなかったため、佐久田達は警戒を緩めていた。
せいぜい、駆逐艦によるドラム缶輸送が関の山だと考えられていた。
大規模な船団など戦争初期に手早く展開した国連軍水上艦艇部隊の臨検と接収を受けて北日本には最早無かった。
それを北日本は、入港した物資満載のソ連船団の強奪という手段で船も時間も手に入れ、稚内に送り込んだ。
出港までの準備段階を略奪で不要にして時間を捻出。輸送に掛かる時間と、下ろす時間だけで輸送作戦を成功させたのは作戦的には勝利だ。
勿論、国際法的な問題がある。
「ソ連はどうしています?」
「北日本の行為は遺憾であると言って、モスクワの北日本大使を追放し、豊原にいたソ連大使を召還した」
「どうせ芝居でしょう」
「だろうな」
これほどの、大規模なやり方、特にソ連側が必要な物資を用意して船に積み込んでいなければ、今回の作戦は実行できない。
表向きは被害者ずらしているが、裏で結託していたのが丸わかりだ。
「国連はどうしています?」
「厳重に抗議している。ソ連が手引きしたのではないかと言っている」
「言っているだけですか制裁しないのですか」
「参戦をちらつかせて、こちらを牽制している」
「口だけでしょう」
第二次大戦の被害が大きすぎて未だに痛手から回復していないのと、西側の圧倒的な国力に恐怖したソ連、スターリンは西側との戦争に及び腰だった。
「だが、実際に参戦されれば今以上に戦域が拡大する。ソ連まで加わると極東だけでなくヨーロッパにも広がる可能性が高い。ソ連の暴発を防ぐためにも強く抗議できない」
「アジアはヨーロッパより下ですか」
「ああ、東西両陣営、盟主たる米ソにとって重要なのはヨーロッパでありアジアだ。ヨーロッパでの駆け引きの道具になっている」
「我々は欧米の手駒ではありませんよ」
「勿論だ。そのためにも、独自に動き、戦争を終わらせなければならない」
欧米に好きにされないよう、日本は幕府を倒し、明治維新を成し遂げ列強となった。
日露の後、迷走し、太平洋戦争で日本がアジアの盟主となる事を夢想して、しくじった。
だが、欧米への抵抗、従属から自立独立を目指したのは、間違いではない。
日本ではなく欧米が代わりにアジアを支配するなど、一九世紀の焼き直しだ。
ならば、アジア、日本が独自に対処しなければ。
「無策のままではないだろう。対応もキチンとしただろう」
「勿論です」
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