パク達の奮戦

「なんなんだこいつらは」


 満州と共産中国が参戦したことを知らないパクは戸惑うだけだ。


「畜生め!」


 だが迫ってくる兵士、何万もの兵隊が味方である訳がなかった。

 直ぐにパクは据え付けてあった機関銃を握り、乱射する。


「ぐあああっっ」


「ぎゃああっっっ」


「くたばれっ!」


 絶叫と共にダイキンと刻印された薬莢と銃弾が機関銃から放たれ、襲ってきた兵士たちが次々と倒れていく。

 多数だが、小銃装備だけで襲ってくる兵士など機関銃奏者の前には的でしかない。


「大丈夫かパク!」


 抵抗している間に、混乱から立ち直った仲間がパクの元に駆け寄ってきて、加勢する。

 パクは一瞬安堵するが、文字通り一瞬でしかなかった。

 背筋に悪寒が走ると、パクは機関銃を抱えて蛸壺から逃げ出した。

 直後、ほぼ水平射撃に近い迫撃砲の砲撃が、パクのいた蛸壺を直撃した。

 共産中国軍は軽火器、歩兵用の火器が中心だ。

 戦車などはないがその分、歩兵装備を巧みに使う。

 迫撃砲の水平射撃もその一つだ。


「君たちの迫撃砲には銃剣が付いていないだけだ」


 と日中戦争で共産党軍と戦った日本軍将兵が呟くほど、猛烈な火力を浴びせてきており、その腕は一級だった。

 その猛威は朝鮮半島での戦闘でも遺憾なく発揮された。


「警戒線を突破されたぞ!」


「後退しろ!」


「何処にだ!」


「街道から離れろ! 狙われるぞ!」


 奇襲で混乱しているが、仕方ない。


「ここから連中を銃撃しろ! なんとしても防ぐんだ!」


 パクは味方が集まる場所へ駆け寄り、合流して即席の陣地を作って抵抗する。

 四ヶ月前まで一般市民だったが、度重なる激戦がパクたちを歴戦の兵士に変えた。


「一連謝した陣地を変更しろ! 固まるな! 動き続けろ!」


 囲まれようとも、釜山橋頭堡で鍛え上げた粘り強さで、抵抗する。

 流石に共産中国軍も韓国軍を攻めきれず、確保した地点に留まり膠着状態となった。

 だが、彼らは十分に役割を果たした。


「諦めたか」


 中国兵が、攻め寄せないのを見て、パクの仲間が自分を安堵させようと呟く。


「いや、何かを待っていやがる」


 しかしパクはすぐに気が付いた。

 彼らが留まっているのは、味方の増援を待つこと。

 攻撃に失敗したら、撤退するのがセオリーだ。

 留まっているのは味方が来る予定があることだ。


「弾薬を再分配しろ!」


 新たな攻撃に備えてパクは迎撃態勢を整えようとした。

 援軍を呼びたいところだが、通信機が見当たらない。

 伝令を送り込んでいるが、間に合うかどうか微妙だ。

 攻撃世来るなと念じるが、非情にも山間からキャタピラの音がした。


「連中、戦車まで持ってきたか」


 パクの周りに絶望的な雰囲気が広がる。


「大丈夫だ。バズーカがある」


 初期こそT34にバズーカが効かず韓国軍も米軍もパニックになった。

 至近距離、100M以下で十数発撃っても攻撃してきた戦車には逃げるしか術がなかった。


「そうだ! 俺たちにはスーパーバズーカがあるぞ」


 仲間の一人が鼓舞するように言う。

 開発配備されたばかりの新型バズーカ、スーパーバズーカが配備されなければ、T34を釜山は陥落していただろう。

 スーパーバズーガが行き渡りT34を撃破出来るようになった今は最早怖くない。

 しかしパクは背中に冷や汗が流れる。

 音がT34ではない。

 もっと重く、禍々しい響きだ。

 そして姿を現したT34より大きな戦車の影にパク達は愕然とした。


「なんだあれは」

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