鎮南浦と元山への上陸
「作戦成功です」
「うん」
鎮南浦沖を航行する大和の艦橋で報告を受けた佐久田は大きく頷いた。
先ほどまでつゆ払いの砲撃を行っていたが、砲撃目標への攻撃は全て終了。
上陸部隊の支援要請が無い限り、撃つ事はない。
だが、最早必要は無い。
ヘリ部隊が突進し、緊要地点、沿岸を見下ろす高台と、平壌へ進む進撃路へ兵員を送り込んでいた。
海岸周辺の高台は全て日章旗か星条旗が掲げられており、橋頭堡は完全に確保された。
北朝鮮軍の配備は手薄だ。
元々、武力統一のために野戦軍を優先しており守備兵力は手薄。
その僅かな防衛部隊も仁川へ増援を出した分、減っており、平壌には僅かな兵力しか居ない。
数の上では補充されていたが、殆どが予備兵や民兵で戦闘力は皆無。
戦車を先頭にした突進を抑えられるハズがなかった。
「上手くいって良かった」
自分の作戦が上手くいったことに佐久田は安堵した。
李承晩が明言し暴露してしまった仁川上陸作戦は実行するしかない。
韓国大統領の面子などどうでも良いが、韓国軍の士気、開戦以来、退却と撤退続きで士気は低下している。
何とか踏ん張っているのは後がないのと仁川上陸という希望があるからだ。
実行されなければ、韓国軍の士気は瓦解し、戦線が崩壊する可能性が高い。
碌でもない国、韓国だが、半島が真っ赤になるよりましであり、存続して貰わなくてはならない。
以上の理由から仁川上陸は決定されていた。
それに、作戦の目論見通り成功すればソウルを朝鮮半島の大動脈を、北朝鮮軍の補給線を寸断し包囲殲滅することが出来る。
しかし、仁川は上陸に不向きな地形であり、第一次世界大戦のガリポリ上陸作戦――上陸した後イスタンブールを占領しロシアへの連絡歩確保、トルコ分断などの占領目標を達成できる、だが上陸地点が高台に近く防御側有利など類似点が多い――その二の舞になる可能性が高かった。
しかも潮位の差が激しく上陸できる機会が一日に二回の満潮時しかない。
そのため佐久田は失敗を想定、代替案を考えた。
上陸が失敗するなら仁川を陽動作戦にして、北朝鮮軍を誘因。
上陸部隊主力を他の方面に投入し迂回上陸させる。
満潮時にしか上陸できないが、逆に言えば洋上に船に乗ったままの部隊や物資が多数残される。
しかも李承晩の拒否により、日本の戦力は洋上に上陸できる状態で残されている。
これを使って上陸作戦を展開すれば良い。
韓国は文句を言うだろうが、使える兵力を使つかわなければ戦争に勝てないので無視だ。
それに上陸するのは北朝鮮の領土内。
日本の部隊上陸を拒否する韓国領土内ではない。
韓国は朝鮮半島の正統な唯一の政府であり、朝鮮半島全域が領土だと主張しているが実効支配出来ていないのだから無視だ。
そして上陸地点として選んだのが鎮南浦と元山の二箇所。
ここから上陸し東西から北朝鮮を分断するのだ。
兵力分散を危惧する声もあったが北朝鮮軍の弱体化と、北朝鮮本国が手薄なことが写真偵察、潜水艦を使った偵察員の潜入上陸で分かっており、実行可能と判断した。
以上の作戦案を佐久田はスプルアンス提督とニミッツ、パットンに提出。
パットンは仁川以上の大胆な作戦を喜び手を叩いて了承。
残りの二人には少し、嫌な顔をされたが李承晩への反感もあり仁川と連動した作戦として最終的に了承した。
仁川への上陸が失敗したと聞いたスプルアンス提督は直ちに作戦の実行を佐久田に命令。
一六日に鎮南浦と元山への上陸作戦を敢行した。
日本国内に残っていた空母、翔鶴型や雲龍型など大戦で生き残った空母を総動員しヘリを乗せて次々飛ばしていく。
その中にはタンデムローターを持った大型ヘリも含まれた。
H-21ワークホース、兵士からは形状からフライングバナナ。
兵員二〇名か二.五トンの貨物を吊り上げる事が出来る。
105ミリ榴弾砲さえ輸送できるため、確保した橋頭堡、それも下を見下ろせる高地に大砲を迅速に配置して反撃に出てきた少数の北朝鮮軍へ打撃を与えた。
北朝鮮首脳部は鎮南浦、元山への上陸を想定しておらず、国連軍の上陸に狼狽した。
仁川へ兵力を転用していたこともあって平壌付近に防衛戦力は殆どいない。
僅かな守備兵力も大和の砲撃と信濃の空爆により殲滅され、抵抗できなかった。
そこへアメリカ第一海兵師団、更に日本の空中機動部隊が上陸し鎮南浦周辺を確保した。
「作戦を第二段階へ移す。上陸部隊は直ちに進撃開始、後続を上陸させ進撃を続けろ」
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