国会奪還 新憲法成立
飯田の命令で国会敷地内に入った装甲車が議事堂建物に接近する。
武装したデモ隊は窓から小銃を放って攻撃した。
中にはバズーカを放ってくる連中もいたが、羽田の一件で警戒していた装甲車は巧みに旋回して攻撃を躱し、避けた。
特機隊は無傷だったが、何故か反撃せず、むしろ後退するようなそぶりを見せる。
下がっていく特機隊を見たデモ隊は俄然活気づき、攻撃を強める、窓に集まって小銃を撃ち続ける。
それが飯田の狙いだった。
装甲車が十分下がったのを見てすぐさま航空小隊は行動に入った。
五機のヘリが不気味な唸り音を上げながら降下し、建物に機体を向け発砲する。
窓に近付いていたため、デモ隊多数、それも武装していた者が負傷した。
デモ隊混乱する中、特機隊の一部隊員が手榴弾を取り出し一斉に投擲。
装甲車もガス弾を各窓に撃ち込み盛大な爆発が起きる。
予想外の大きな爆発とガスに衝撃を受けたデモ隊は一時行動不能になる。
飯田はこの隙を見逃さず命じた。
「総員降車っ! 突入開始っ!」
すぐさま装甲車が建物入り口に殺到して停車、
装甲化されたM3ハーフトラックの後部扉が開き、隊員が降りて議事堂に向かって駆け出す。
混乱したデモ隊に立ち直る時間を与えず、一挙に建物内部へ突入し入り口を確保。
後続を建物内に入れる。
入り口が確保されれば特機隊のものだった。
暴徒の応戦に怯まずむしろ弾に当たりにいくように突進する。
「狂ってやがる!」
撃たれに来る姿を見て銃撃を放った暴徒は叫んだ。
だが特機隊はそのように訓練されているし正しいやり方だ。
強靱な装甲服でも当たり所が悪ければ貫通する。
正面が一番装甲が厚く弾をはじき返せるし、間接部なども正面からの銃弾を想定して組まれている。
下手に避けようとすると側面を晒しかえって危険だ。
また、避けたりしたら、後ろの仲間を敵の銃撃に晒すことになる。
だから、正面から当たりにいくように訓練を受けており、実戦で発揮していた。
「うおおおおっっっっ」
弾丸を浴びながら特機の前衛隊員は突き進み、MG34の掃射を浴びせて掃討していく。
装甲車の銃架からも機銃が下ろされ隊員に渡り、建物内部へ投入される。
突進により入り口を確保すると議事堂内部各所へ隊員たちが展開していく。
大理石で出来た廊下や部屋でデモ隊相手に激しい銃撃戦が起き、破片が飛び交う。
階段付近では登らせまいと激しい攻防戦が繰り広げられた。
だが、このような狭い空間の制圧になれた特機隊が上手だった。
各部屋には手榴弾の投擲が行われ、暴徒の抵抗を一つ一つ潰して排除していく。
激しい戦いになったが、最終的にデモ隊は特機隊火力により粉砕され、敗れ去った。
いや、皆殺しにされた。
圧倒的な火力で、逃げ道を塞いで攻撃したため、デモ隊で国会から出てきた者は捕らえられた重傷者だけだった。
騒乱の翌日、議事堂を特機隊が警備する中、国会が開かれた。
だが抵抗を全てMG34と手榴弾で破壊したため議事堂内部のデモ隊の死傷者の血と肉片で濡れていた。
「こんな酷い場所見たことがない」
制圧後、議事堂内に入った議員は惨状を見て、絶句し、一人がやっと一言口に出来たほど内部は酷かった。
特に首相の鳩山一郎はショックが大きく、本会議以外では喋らず、休憩室の一角に吐瀉物があったという証言が残るだけだ。
「途中で放り捨てなかっただけ満点だ」
とは、眉一つ曲げず淡々と職務を遂行していた高木の言葉だ。
冷徹なのか、あるいは全てを受け止めようと覚悟していたのか、不明だ。
陛下の控え室である貴賓室の損傷も酷かった。
弾痕も凄かったが一部の調度品が盗まれていた。
左派は特機隊による破壊だと非難した。
だが、過激な左派の一派が搾取の証拠として貴賓室の調度品を一般公開して自らが犯人であると誇示したことから余計に反発を食らった。
壁の弾痕、血痕が残る血なまぐさい中、国会が緊急招集され本会議が開催。
勅使――酷すぎる惨状のため流石に陛下の臨席を賜る事は憚られ、代理の使者が立てられ、本会議場で国会を召集し緊急勅令の発令伝達、新憲法の制定命令がくだされ、予め高木が用意していた憲法案を内閣はすぐさま返答。
大まかな内容は日本国憲法を受け継いでいたが、第九条では政府に日本の防衛が責務とされ、必要な戦力を確保する事が明記された。
また集団的自衛権も認められており、国連への協力も許されている。
改憲も認められており衆参の三分の二の承認で変更可能となった。
陛下の了承を受けると衆参両院は即日了承した。
左派の議員の多くははデモ参加者を匿った現行犯で逮捕され、あるいは抗議のため欠席し、出席者の満場可決で新憲法は成立した。
同時に日米安全保障条約も承認され即日発効。
クロマイト作戦への日本警察予備隊、海上警備隊の参加も了承された。
その翌日、日本にある港湾から多数の汽笛が鳴り響き、次々と船が出港していった。
船舶には多数の将兵、あるいは軍需品が乗せられており、一個師団とそれを支えるための物資を載せた船団の総トン数は百万トンを越えた。
しかし、出港したのはその船団だけではなかった。
日本各地の港から同規模の船団が出港し、日本海の海上で合流し大船団を作り上げようとしている。
これらの船団は李承晩が訴える仁川上陸作戦に参加すると見られていた。
その様子は、港の港湾労働者にいる協力者、あるいは一般市民の協力者、沖合に展開したスパイ船、上空を飛ぶソ連偵察機によって東側各国に伝えられた。
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