北海道か 樺太か 半島か
太平洋戦争時なら玉砕は多い。
水雷戦隊を使っての救出を行ったが、全てを救えたわけではない。
九割近い損害を出して、なお守り切った事例もある。
しかし、今回は攻略戦だ。
圧倒的な兵力で攻める。その兵力が大損害を受けたら今後の戦争にかかわる。
稚内だけでなく、朝鮮半島と、中国大陸に戦線を抱えている。
しかも、民主主義国であるアメリカは損害に対してナイーブだ。
日本も先の大戦の悲劇もあって、国民は損害に対して敏感になっている。
稚内へ大兵力で突入させ陥落しても損害が大きければ、転戦できず、他の戦線を好転させる事は出来ないし、政権を維持する事も不可能だ。
「包囲網を固め封鎖するしかありません」
その事を知っている佐久田は、無理な攻撃を戒め、手堅い攻城戦を行う事で損害を減らしていた。
「その意味で現有戦力は過剰と言えます。他の戦線を安定化させ、日本の安全を確保する必要がありますので転戦は必要でしょう」
「朝鮮半島への派遣か?」
「はい、巡航ミサイルの発射基地を抑える必要があります」
「樺太、北日本を制圧しないのか? 国民や世論の一部は声高に言っているぞ」
「仮に制圧できたとしても、北日本の北の国境はソ連の樺太領と接しています。戦争が続いている現在、ソ連と国境を接するのは得策ではありません」
「だから朝鮮半島か」
「はい」
「海外派遣は危険じゃないか?」
「朝鮮半島を安全化しませんと、またミサイル攻撃を受けます。東西が激突した時、北の根拠地になる可能性が高いです。韓国に防波堤となって貰いましょう」
「あの反日の李承晩を支えるのか?」
高木は嫌そうに言う。
あの口先だけの無能を、日本を口汚く言う李承晩を好む日本政府関係者はいない。
「ですが、韓国が敗れれば我々日本が、赤化した朝鮮半島に対する最前線となります。北日本を含めて二方面に対応する備えをしなければなりません。兵力分散阻止の観点から韓国に守らせるべきでしょう」
「韓国が攻めてくる可能性があるぞ」
好戦的な李承晩が政権を維持するために日本に武力行使する可能性は高い。
個人の妄想でも韓国大統領、一国の元首であり、軍事作戦は出来る。
最終的に日本の戦力で撃退できるにしても、行われたら危険だ。
「だとしても東側に属する北朝鮮が半島統一国家であるより、遙かに少ないでしょう。反日的でも同じ西側陣営ですのでアメリカの掣肘が期待出来ます。武力衝突が日常的になるより、十年に一度程度で済みます。いざとなればアメリカの支援も考えられます」
「それでも頭にくることが多そうだな」
「毎日巡航ミサイル攻撃を受けるよりマシですよ」
「そうだな」
高木は納得した。
「朝鮮半島、少なくとも南半分は日本のために西側にいた方が良いことは分かった。ならば、半島の維持のために新たな作戦を考える必要があるな。考えはあるのだろう」
「ありますけど」
佐久田は戦争前、シナ事変の前からの癖で予め作戦案を予備を含めて考えている。
今も頭の中には作戦案がいくつかある。
勿論、現状で実行可能な作戦も数個ある。
「しかし、承認されないでしょう。日本政府は勿論、国連軍も認めるかどうか」
国連軍が編成され世界からの支持と援助を得ていたが、逆に日本が独自に動ける余地を奪う結果となっていた。
文民統制もあり、何もかもが遅い。
「ならば、認めさせるために説明する必要があるな」
「どういうことです」
「君もサンフランシスコに行くんだ。そして、状況を説明し作戦案を出し承認させろ」
「認めますかねアメリカが。随員としても行けるかどうか」
「ニミッツさえ認め、見事北日本軍の主力を撃滅したんだ。君が行くことに文句を言う奴はいない。むしろ、救世主の登場と救いを求めて来るだろう」
「しかし急ですね。荷物を纏める時間もない」
「名称は変わっても海軍軍人だろう。将校行李だけで何処へでも行けるだろうが。それに行くのはアメリカだ。日本なんかより物は豊富だ。道中も困らないだろう」
「恨みは買っていそうですがね。通り道は私が攻撃した事のある場所だ」
第二次ハワイ攻撃を事実上指揮したのは佐久田だ。
かなりの恨みが多いはずだ。
「通行料代わりだと思って受け入れろ。なに、作戦が通るなら安い物だろう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます