稚内の反撃
天塩海岸に上陸した陸上部隊は迎撃陣地を作り上げると北日本の北海道の拠点稚内に迫った。
「作戦は順調に推移中」
予想よりも反撃が少なく、最新鋭のヘリを多数使用して迅速に行われたため、作戦は当初タイムスケジュール以上のスピードで進んだ。
予想以上のスピードに北日本軍が対応出来なかったのも大きかった。
まさか、自分たちでさえ登りづらい高地を、ヘリで迅速に兵隊を送り込み制圧するなど思ってもみなかった。
損害も少なく、作戦に参加する将兵達は稚内の制圧も時間の問題かと思われた。
しかし、浜頓別までの突進、補給線寸断後は早々に作戦が頓挫した。
「敵部隊の反撃が始まりました」
稚内への進撃を始めて数時間後、司令部に報告が入った。
「来やがったか、何処で始まった」
「戦線全域です!」
稚内へ向かって進撃していた国連軍だったが突如現れた北日本軍の防御のために攻勢は頓挫した。
「何故だ。敵部隊はいなかったのだろう」
「突如後方に現れたようです」
北日本軍は地下に潜っていた。
そして国連軍が通り過ぎた後、地上に出て背後を襲撃し、包囲殲滅を図った。
「敵部隊を攻撃して撃滅しろ。稚内はすぐそこだ」
すぐに反撃が命じられ、国連軍の攻撃が行われる。
しかし北日本の反撃は止むことはなく、国連軍の進撃も中断した。
「どうして突破出来ない」
中々稚内占領できないことに焦りを覚えた国連軍の指揮官が苛立って部下に言う。
「反射面陣地です。我々の砲撃が届かない場所に隠れています」
正面にある隘路、道の両側にある丘の後ろ側に陣地があり、攻撃出来ない。
国連軍が丘を越えて行くまで、北日本軍の攻撃はない。
だが、丘を越えた後、北日本軍は陣地から出てきて攻撃を行う。
国連軍が後方から援護しようにも丘の向こう側で見えない上に味方が近すぎるため、同士討ちの危険があり、米軍自慢の砲兵による圧倒的な砲撃は封じられる。
それでも援護射撃を行うが、北日本軍も対砲兵射撃を行い、米軍に反撃してくる。
砲兵に被害は出るし、突入した味方も磨り潰され、這々の体で後退することになってしまう。
「東側に行っても日本軍という訳か」
太平洋戦争中日本軍相手に激戦を繰り広げた指揮官は納得した。
小島でも僅かな斜面を使って防御する日本軍に手を焼いてきたのだ。
特に沖縄戦では同じ手を使われ損害が多かった。
「我々の火力だけでは難しい、航空支援を要請しろ」
直ちにオホーツク海に展開する日米機動部隊から艦載機部隊が発進し、猛爆撃を加える。
地形が変わるほどの爆撃を行うも、失敗した。
彼らの腕が劣っていたからではない。
彼らは、反転北上中の北日本軍主力への猛爆撃を連日行っており、成果を上げていることは戦後の調査で判明している。
攻撃が進まなかったのは、本郷中将の防御陣地構築が巧みだったからだ。
地下深くに退避した彼等は、空手が収まると無事な出口――各壕は必ず、二箇所以上の出入り口を作るように指導されており、生き埋めを防いでおり、すぐに地上に出られた。
そして地上に出ると接近してくる国連軍に対して射撃を行い進撃を止めていた。
「ダメです、空爆でも抵抗は収まりません」
「ならば、艦砲射撃を要請しろ」
直ちに稚内沖合に展開していた戦艦部隊から砲撃が行われ、陣地破壊を始めた。
一六インチ、一八インチの大口径砲が陸上に叩き込まれる。
「これで俺たちの仕事はなくなったな」
猛砲撃を見て今回が初陣の兵士達は軽口を叩いた。
だが、先の大戦を戦った古参兵や下士官を中心に、激戦が起きるという確信を抱き、覚悟を決める者が多かった。
攻撃終了後、進撃が再開されると暫くは無抵抗が続いた。
しかし、丘を越えたところで、先遣隊が後方の味方から見えなくなったところで稚内守備隊は反撃を開始。
連合軍の兵力を磨り潰した。
「あれで生きていたのか」
上陸部隊は愕然としたが、実際、守備隊は生きており、稚内は落ちなかった。
「しかし、そんな指揮官が東側にいたとは信じられないな」
だが、存在したのは事実だった。
稚内防衛司令官本郷義夫中将、元帝国陸軍中将にして第六二師団、沖縄戦を戦い抜いた師団の初代師団長だった。
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