パットン大反撃作戦
「上陸部隊より報告! 天塩海岸への上陸に成功しました! 補給線の寸断に成功!」
「よし! これで勝てるぞ!」
旭川で報告を受けたパットンは喜んだ。
本来なら、東京で極東陸軍司令官として、東アジア全域の戦場を統括する必要がある。
しかし、彼は一人の戦士だった。
後方で椅子にふんぞり返るなど出来ない。
その手の事は、信頼できる牛島に任せて自分は責任だけを負い、北海道で、この戦争の趨勢を決める反撃作戦の指揮を執ることにした。
上陸作戦が重要だが、パットンは陸戦、戦車戦の指揮官であり、戦車を指揮したくて旭川に来ていた。
既に激戦が行われている旭川だが、ようやく集結した第一管区隊が手元にあった。
開戦から第二管区隊と増援の第七歩兵師団と第一騎兵師団が加わり防衛にあたっている。
航空支援があるとはいえ彼等だけでは北日本の八個師団と戦うには数が足りない。
それでも第一管区隊は予備として温存。
前線で損耗した部隊も後方に下げると補充して温存していた。
そのため前線の兵力は急速に減少した。
名寄から旭川までの長距離移動と国連空軍の航空攻撃で北日本軍主力が損耗し突破力が減少していたこともあって、前線は維持できていたが、危険な状態にかわりはない。
だが、それでもパットンは予備を作り出した。
天塩上陸作戦が成功し、金床が出来た後、叩き込むためのハンマーが、北日本軍に叩き付ける為の兵力が必要だった。
「命令通り直ちに出撃! 撃滅しろ!」
作戦開始前から準備を命じていたため、パットンが命じるとすぐに栗林二等警察監率いる第一管区隊が、戦車を先頭に突撃を開始する。
硫黄島の防衛戦が印象的なため、防御的な指揮官と見られがちな栗林だが、栗林の兵科は騎兵であり、機動戦が得意だ。
防衛戦を戦い抜いたのは栗林の友人であり、歩兵の神様とされた千田少将を強く求め、将兵の指導を任せたからだ。
騎兵出身だけに機動力の大切さ、関東から北海道までの移動の重要性も認識しており、彼の動きは良かった。
連日の攻撃で損害が蓄積していた北日本軍主力にこれを抑える能力は無かった。
また、後方の天塩に上陸された事が報告され動揺していた事もあり、前線は急速に瓦解してしまった。
「敵の前線が崩壊しています!」
「よくやった栗林! 流石だ! 全軍で総反撃だ! 全部隊はありったけの火力を投入して敵軍を攻撃! 連中を北に押し返せ!」
ようやく反撃を命じられ、各部隊は攻撃を開始した。
圧倒的な工業力を見せつけるように砲兵と航空支援によって大量の弾薬が叩き込まれる。
後方への上陸、前線を突破されたこと。
この二つが重なり北日本軍主力は急速に瓦解していった。
だが、それでも後方の予備を中心に遅滞戦闘部隊を編成、
天塩川沿いに防御陣地を作り国連軍の進撃を抑える様にしていた。
「迂回できる余地がない」
両側を山に囲まれ、天塩川沿いしか進撃できず、迂回できないことにパットンは苛立った。
機甲部隊の真価は機動力による迂回。自由に移動して敵の弱点を突くことだ。
これでは正面からの殴り合いしか出来ない。
「怯むな! 敵を追撃しろ!」
それでも戦車を前面に出して、敵の防御陣地を潰しつつ、進撃する。
しかし、北日本軍の反撃により予定よりスピードが遅く、スケジュールが遅れ気味だ。
その事にパットンは苛立ってくる。
このまま逃げられるのも嫌だし、北日本の主力が先に稚内の防衛線に到達し味方の陣地を蹂躙してしまう。
なんとしても防ぎたかったが、どうしようもなかった。
そして天塩海岸に上陸した部隊も予想外の事態に陥っていた。
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