ヘリコプターの将来性

 信濃同様、ヘリコプター母艦への改装を米軍より強要された雲龍型空母群は実験的な艦艇となった。

 だが、今回の上陸作戦でその能力をフルに発揮した。

 ドックの空きがなく、改修されていない艦であろうとヘリコプターを運用できた事は大きい。

 急な作戦にもかかわらず、特に改装もせず大鳳型一隻と雲龍型三隻と四隻ものヘリ空母――内大鳳型と雲龍型二隻は未改造で参加し、百機前後のヘリを運用しており、非常に役に立っている。

 この成果を見た米海軍は余剰の空母群をヘリ用として改造しようと考えるほどだ。

 一方、ヘリに惚れ込んだ日本の場合は、ヘリ専用の母艦を新造する計画まで立てる程だ。

 信濃級がある現状では実現の可能性は低いとされていたが、巨大化する艦載機に合わせて巨大化、当然高額になる通常型空母に比べ安価に調達できるため、金欠の各国――国力の衰退により海軍を縮小している英国さえ例外ではなくヘリ空母の導入を検討していた。

 ヘリ空母が日本の重要な輸出品になる可能性は高かった。

 事実、この作戦の成果を見た人々はこぞって日本にヘリと母艦を発注し、日本人を喜ばせ実現させた。


「だが、流石に戦車は運べないだろう」


「いや、いずれ運べるかもしれません。ただ、大きくなりすぎて船で運用できないでしょうが」


「ならLSTで十分だろう」


「しかしLSTが乗り上げるまでの間、海岸で部隊を降ろし進撃するまでの間を、ヘリで高地に運ばれた兵士達が援護する効果は大きいと考えます。少なくとも敵に有利な高地を取られて一方的に打たれる心配はありません」


「それは大きいな」


 反斜面に作られた陣地を吹き飛ばす事は艦砲では難しい。

 艦艇から見えない部分を抑えてくれるだけでも違うだろう。


「今後ヘリから攻撃出来るようになれば、我々も楽になるでしょう」


「あんな小さいのに何を乗せられるんだ。大砲なんて釣り上げるだけで精一杯だろう」


「地形に関係なく、運べるだけで優位だと思います。ですが、ヘリにロケットなど反動の少なく炸薬量の大きい兵器を積めば、敵の陣地さえ破壊できます。しかも状況が許せば至近距離まで高速で近づけます」


「敵が無防備なわけないだろう」


「その場合でも、高速で離脱する事が出来ます。そして距離をとって反撃する事も可能です。ヘリには将来性があると自分は考えます」


「そうか」


 そう言って艦長は感慨深く言った。

 近年の技術の発展は凄まじい。

 前の太平洋戦争前に海軍に入隊した艦長にとって、主力は戦艦だった。

 だが、航空機の威力を見せつけられたパールハーバーとマレー沖から一変して主力は空母と航空機に変わった。

 今また、新たな主役としてヘリコプターが登場したことに驚きを隠せない。


「だが、将来は今を越えなければ、やってこない。そろそろ、上陸部隊が上陸するぞ。援護の用意をしておけ」


「了解です」




 一方、上陸作戦の主役、LST達、舟艇は激しい音と共に自らの身体を砂浜に乗り上げた。


「上陸開始! ハッチ開け」


 艦首のハッチが開かれ、中にいた米第一海兵師団、警察予備隊海上機動隊、海上警備隊特別陸上団の将兵が戦車と共に飛び出してきた。

 彼らはすぐに要衝となる高台を占領し橋頭堡を確保すると、後続を呼び寄せ前進を始めた。

 この時、日米の部隊で動きが違った。

 米軍は反撃を恐れて、太平洋戦争での経験からではなく、自分の命大事と兵士達が考えたため、前進は慎重だった。

 一方、日本側は、敵の動きがないと分かると迅速に前進した。

 浸透戦術、機動力を生かした戦いを指揮官、下士官クラスは戦中に叩き込まれたため、兵士達も上に従うという国民性により、命令に忠実に、身の危険を顧みず、意識することなく、無防備に前進した。

 その様子は米軍は感心し、呆れた。

 幸運なことにヘリ部隊の周辺制圧と北からの反撃が無かったため、結果的に日本側の作戦が、功を奏し、迅速に占領地を拡大していった。

 最初の目標であった鉄道線の破壊及び占領は成功し、更に前進を続行。

 南にいる北日本軍陸上部隊主力への補給路を切断。

 反転してくるであろう北日本部隊への迎撃態勢を整えた。

 特にヘリの機動力は素晴らしく、午後にはオホーツク海側まで移動し、沿岸部の制圧を行い道路の封鎖し北日本軍の退路を全て絶てた。

 そして戦車を中心とした機甲部隊が音威子府方面に向かい、早期に北日本軍主力を捕捉予定だ。

 その報告を受けたパットンは、喜び勇んで反撃を命じた。

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