天塩海岸上陸作戦
当初、第7艦隊司令部の大泊攻撃は否定的なものだった。
北日本が防備を固めていると予想されていた上、ソ連船籍の輸送船が入港してることから、ソ連の参戦の可能性もあり、制限も多く、攻撃の効果は限定的だと考えていて却下した。
しかし、佐久田の強い上申とニミッツの許可もあって実行された。
結果は大成功で、直後の偵察により戦艦二隻を撃沈し、北日本海軍の作戦能力は消失したと判断された。
佐久田は反復攻撃を上申したが、ソ連船舶への被害拡大と都市部への誤射――実際は来たの防空砲火の流れ弾が放たれただけだが、北の宣伝によって、国連軍の市街地攻撃とされ非難されたことも大きく空襲は一回に限られた。
それでも佐久田は周辺基地への攻撃と豊原への攻撃を行わせ、延べ一千機に近い航空機を動員し、南樺太における北日本の戦力を壊滅させた。
これは北日本が根拠地である樺太から稚内への援護が不可能になった事を意味する。
上陸作戦に支障を来すものは何もない、と考えられ、上陸作戦は直ちに実行された。
大泊奇襲から数日間は北海道および樺太の各所へ陽動作戦として艦隊による砲撃及び空爆が行われ、北日本は上陸地点を確定できず、右往左往した。
同時に反撃のための戦力は失われた。
特に北日本人民共和国の暫定首都、豊原――共和国憲法で首都は東京とされており傀儡政権に不法占拠されているため豊原を一時的な首都にするとされていた――への攻撃は空爆に驚いた北日本首脳部が急いで北海道北部で作戦に従事していた戦闘機を呼び戻し、豊原防空を固めさせた程だ。
そのため、北日本の前線では戦闘機が足りなくなり宗谷海峡から南の制空権を国連軍に奪われる事態となった。
ただ、間宮海峡ソ連の領海に近い海域を遊弋している北日本海軍第一艦隊への攻撃は、政治的な理由、ソ連領空を侵犯する可能性があったため、許可されず、生き残った。
それでも稚内周辺の戦力が無くなったことは作戦への妨害が減少したことを意味する。
このような国連軍優位の流れから開始された上陸作戦は順調に推移した。
作戦はまず、空挺部隊の降下から始まった。
決行日の深夜、関東及び東北の航空基地から多数の輸送機が離陸。
編成されたばかりの警察予備隊の空挺団及び急遽派遣された米空挺第八二師団が運ばれた。
多数の夜間戦闘機が警戒に付いており、輸送機は何の障害もなく前線の上空へ至った。
この手の作戦だと、味方上空を飛んでしまい、誤射の危険、特に大口径砲を持つ、艦艇からの誤射はキツい。
しかし、オホーツク海側から侵入する事で、誤射の可能性を極限まで減らしていた。
「作戦開始! 降下! 降下!」
指揮官の命令で多数の空挺兵が輸送機から飛び出す。
無事に彼等は降下予定地点である海岸線の後方へ降りた。
緊要地点及び、重要施設、特に上陸した部隊の移動に必要な橋や、戦略目標である鉄道線を制圧する。
同時に、北日本軍の移動を阻害するよう道路や端の周辺に陣地を構築し、反撃を抑えた。
「攻撃開始!」
本格的な上陸作戦は夜明け前から行われた。
艦砲射撃により北日本の防御拠点を破壊すると共に敵の目を海岸に目を向けさせ空挺部隊を援護する。
先ずは大和とテキサス以下水上艦艇による艦砲射撃が行われ沿岸守備部隊の掃討、上陸時に無防備となる瞬間、脅威となる存在の排除から行われた。
先の戦争で威力を見せつけた艦砲射撃により海岸は地形が変わるほどの破壊が振りまかれる。
その間に、海上警備隊の掃海艇部隊――旧海軍の掃海部隊で戦争中から潜水艦及びB29が敷設した機雷除去のため今日まで休まず活動していた。
その中でも技量の高い部隊が天塩海岸沿岸に進出し、仕掛けられた機雷の排除を行う。
「掃海完了!」
「上陸部隊突進せよ!」
安全が確保されると天塩海岸に多数のLSTと機動艇、ドック型揚陸艦より発進した舟艇が艦首を上げ全速力で浜辺に突っ込んでいく。
だが、突進していくのは彼等だけではなかった。
海岸から遙か離れた洋上より、多数の航空機が、独特の音を響かせながら各艦から飛び立っていった。
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