パットンの前線視察
「パットン将軍、手短に聞きたい。我々は打つ手があるだろうか」
ニミッツの問いにパットンは自信満々に応えた。
「ご心配なく元帥。反撃作戦の立案は終わっております」
「速いね。流石、陸軍だ」
「いえ、立てたのは日本の連中です。日本の戦いは日本人に任せておけば大丈夫です」
パットンは我がことのように自慢げに言った。
多少、思い入れが強すぎるところがあるが、日本人ほど戦いで信用できる人間はいないとパットンは確信していた。
「連中は凄いですよ」
パットンは先の戦争と今回の戦いで視察したこと、侵攻の一報を聞いてすぐに北海道へ赴きつぶさに実見した時の事を思い浮かべてニミッツに語った
沖縄戦でパットンも驚嘆させたことの日本軍だったが、パットンの言うところの戦後の GHQ のアホどもの政策、旧軍解体、軍備放棄のおかげで骨抜きにされているのではないかと心配した。
だがそんなことは先日の前線視察、北海道の戦況視察で吹き飛んだ。
前線に行くとそこには何一つ見えなかった。
陣地はあるが守っているはずの兵隊もなく戦車も歩兵もいない。
全員が逃げ出したかと思ってパットが叫んだ。
「おい誰かいないのか!」
叫ぶと少尉らしき人物が駆け寄ってきた。
「おい兵隊はどこにいるんだ」
問い詰めると、少尉はパットンに突進し地面に押し倒した。
直後北の砲撃がに周囲に着弾する
だが大半の砲弾が無人の陣地に着弾しパットンたちは無事だった。
しかし、敵の部隊が接近してくる。
「砲兵! 反撃しろ!」
敵が第二射打った直後、味方の砲兵、警察予備隊の特科が擬装を全て剥ぎ取り応戦した。
既に狙いは付けており、向かってくる敵の歩兵をすぐさま制圧する。
だが敵の戦車はひるむことなく一直線にパットンたちに向かってくる。
正面にあるのは無人の陣地それも敵に破壊されたばかりの陣地であり障害は何もないかと思われた。
だが敵の進路の真横から偽装された陣地が現れ敵の側面に制圧射撃を加える。
「特車隊突撃しろ」
敵が混乱したところへ偽装を解いた戦車が突入し敵を分断。
包囲殲滅した。
見事な陣地の偽装と機動、適切な命令にパットンは驚くしかなかった。
「失礼だが、貴官は先の戦争で戦ったのか」
パットンは指揮官である少尉に思わず敬語を使うほど、敬意を持って尋ねた。
「はい中隊長として出陣しました」
「なるほど、しかし素晴らしい擬装だな」
「当時の敵の航空隊は優秀で見つかればとすぐに空襲を受けましたから。見つからないようにするのが大事でした」
生暖かい笑みを浮かべながら彼は答えた。
パットンはその意味を理解した。
米軍を相手にひたすら隠れて戦っていたのだろう。
だからこそ問わずにはいられない。
「どうして少尉の階級なのだ。貴官はどう見ても軍歴が長そうだし実戦経験もあるようだ。中隊長、大尉くらいはゆけるのではないか?」
「入隊した当時、一等警備士、大尉に相当する階級は全て埋まっており少尉、三等警備士しかありませんでした」
それを聞くとパットがすぐに無線で後方の警察予備隊の第二管区司令部第一部――人事担当の責任者を呼び出した。
「おい今すぐこの少尉を少佐に任命しろ。三階級昇進が前例がない? 馬鹿なことを言うな!」
怒鳴ったパットンは更にボルテージを上げ早口でまくし立てる
「彼は連隊を任せてもいいくらいの戦いぶりを見せたんだ。彼は有能だ。お前も部下も誰をも守ってくれる得難い人材だ。もちろん全力で支える必要はあるが、彼のためになら誰もが戦うと思える人材なんだ。戦えるように支援してやれ」
受け答えた人事の責任者は一等警察正に任命されていたが、元からの軍人ではなく、文民統制の為に送り込まれた旧内務省官僚だった。
パットンの気迫に負けた彼は早速、昇進させる手続きを行う羽目になった。
そしてパットンは改めて自分が少佐、三等警察正に任命した指揮官に命じた。
「俺は貴官にここを全て任せる。何か必要なものがあれば遠慮なく言ってくれ」
「兵力が足りません。しかし増援が足りないことも理解しています。出来れば、この後も戦えるよう、部下が疲れているので、せめて食事でも満足に食わせてやりたいです。米はともかく副菜が足りません」
「よーし分かった」
すぐさまパットンは米とともに肉魚野菜などの副菜をつけて提供した。
少佐、三等警察正は素早い対応に目を大きく見開き、それ以降、ねばり強く戦った。
「下手に指示しなくても彼らは必ず守り切ります。たとえ死んだとしても」
当時の事を手放しに絶賛するパットンの言葉にニミッツは同意した。
ニミッツも先の戦争で日本軍の頑強な抵抗に三年以上も対峙してきたのだから。
「では、この作戦は、天塩上陸作戦は実施ということで宜しいか」
「勿論です」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます