極東戦争までの情勢
戦争中アメリカは、――というより日本人を蔑視するルーズベルト前大統領は、太平洋、極東においては日本をアメリカが潰し蒋介石に任せるつもりだった。
リメンバーパールハーバーを唱えたルーズベルトにとって日本の無条件降伏以外は重要ではなく、日本を占領するために、日本軍を叩き潰すために米軍を緻密に運用する事に長けていた。しかし、それ以外の事は手を抜いていた。
と言うより、理解していなかった。
ヨーロッパよりアジア方面の情報と知っている人間が少ないのも原因だった。
そのため、日本本土に対する侵攻作戦と占領計画は完璧に整っていた。
だが他の地域に関しては、かつて統治していたフィリピンを除いて殆ど知識を持っていなかった。
しかし、アジアの警官になるべき蒋介石は八年も日本と戦争を続けて勝てずあてにならず、中国大陸の駐留アメリカ軍司令官も見捨てるほどだ。
敗北させた日本に代わってアジアに進出した米軍だったが、日本が抱えていた地政学的な問題、厄介ごとも同時に引き受けること――ソ連の南下に対処する必要が出てきた。
とりあえず、日本の植民地だった台湾は、中華民国に引き渡し、朝鮮半島は三八度線より北を進出してきたソ連が南を米軍が統治する事にした。
しかし、占領統治と統一政府を巡る問題から、すぐに米ソの対立がすぐに表面化。
中国で国共内戦も起こったため混乱する。
その中でソ連が傀儡国家として北朝鮮と北日本を独立させた。
見せかけでも独立させることでソ連が占領統治をしていないことを世界にアピールする狙いだった。
また、出来たばかりの国連で親ソ連の加盟国を増やそうという魂胆であった。
対抗上、アメリカも韓国を独立させ、占領統治していた日本の独立と主権回復を宣言せざるを得ない状況となった。
かくして、日本は独立を早期に果たすことが確約され、間もなく講和会議と主権回復が行われる予定だった。
しかし、軍事の問題は大きかった。
軍国主義の解体を名目に日本軍の大部分を解体してしまった。
しかも戦後の混乱の中、戦争放棄と非武装を主体とする憲法が出来上がってしまう。
空襲により財産を失った日本国民は諸手を挙げて歓迎したため、引っ込める事が出来なかった。
しかも日本を下した事を喜ぶ米国本土は歓迎する始末だ。
かくして日本軍の大半は解体されたが、日本がになっていた日本のみならず東アジアの防衛を米軍が担うことになって仕舞う。
だが強大なソ連軍に対して米軍は、戦後の軍縮、大崩壊と言うべき縮小規模、最盛期の一四分の一に数が減っていた。
復興のために軍備を削減する必要があるにしても、減りすぎており、世界の防衛など難しかった。
しかも、ソ連軍は各国に駐留するソ連軍の引き上げを宣言。
領土的野心がないことを示した。
これを見たアメリカは、ソ連の追及を躱すため、戦後の軍縮による人員減少を理由に各国への駐留兵力の引き上げをソ連に続いて宣言。
敗北後の占領統治を名目にしている日本以外の国と地域、中国大陸と朝鮮半島から少数の軍事顧問団を除き撤退を命じた。
米軍は手を退くことになったが、残された同盟国は頼りない。
南中国、中華民国はかねてから軍閥での腐敗が多く、武器の横流しもあり莫大な援助にもかかわらず、戦力は著しく劣っていた。
他の東南アジアは、かつての宗主国が乗り込んでいったが、日本が誕生させた現地政府が遺棄された武器弾薬を自国軍に装備させ、独立戦争を展開。
英仏蘭の三カ国は、鎮圧の為に軍隊を送った。
だが、遠く離れた東南アジア、本国はドイツとの戦いで疲弊している。
しかも日本軍の戦いを叩き込まれた現地軍相手に勝てるはずがなかった。
アメリカの仲介――マーシャルプランを受け入れることで本国の復興援助を得る見返りに植民地の独立を認めて撤退した。
フランスは、ベトナムでまだ頑張っているがベトコンの攻勢の前にいずれ敗退するだろうと言われていた。
一方ソ連は、共産国家となった各国に武器援助と大規模軍事顧問団を派遣。
各レベルに指導という名のソ連軍人による監視はあったが、東側各国は強大な軍備、米軍のいない南側の軍隊を圧倒する戦力を建設する事に成功。
その軍隊が、雪崩を打って攻め込んで来た。
所謂、極東戦争の始まりである。
「特に韓国は我々が大規模な武器援助をしなかったために敗走しています」
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