ガツン閘門攻撃

「間もなく目的地です」


「高度を上げる」


 現在位置の確認の為に高橋は晴嵐を上昇させて地形を見る。

 上昇中、後席が叫んだ。


「隊長、右前方にコロン市です」


「間違いないか」


「間違いありません! 奥深いコロン湾に二本の水路が湖に通じています。パナマ運河です!」


 何度も地図と模型で脳裏に焼き付けたコロンの地形だった。間違えるはずは無い。


「攻撃隊に作戦通り、襲撃するように命令しろ」


「了解!」


 偵察員は通信機を使い攻撃隊各機に攻撃を命令する。同時に青い信号弾を打って知らせる。

 すると各機は青い信号弾を打ってから編隊を解き、それぞれの攻撃目標に向かっていった。


「よし、良いぞ」


 作戦通りに展開する攻撃隊の動きを見た高橋は笑みを浮かべた。

 攻撃目標は四ヶ所、コロンにあるガツン閘門、ガツンダム、そして太平洋側にあるペドロ・ミゲル閘門、ミラフローレス閘門の四ヶ所。

 ここを各六機合計二四機が襲撃する。

 高橋は自分の機体を含め六機を率いて本隊および予備となり戦果確認と万が一攻撃に失敗した場所を攻撃する事になっていた。

 特に重要なのがカリブ海側にあるガツン閘門とガツンダムだ。

 ガツン閘門はガツン湖から直接カリブ海へ出るためにパナマ運河最大の三閘室、三回の水位調整を行う重要な施設で、ここを破壊できればパナマ運河の修理に時間が掛かる。

 そして近くにあるガツンダムは、人造湖でありパナマ運河の水路を作り上げているガツン湖を作るために堰き止め用のダムとして作られた。

 このダムのお陰で船が航行可能な水位をガツン湖が維持できる。

 ダムが決壊すれば、修復だけで数ヶ月も掛かる上、航行可能な水位に水が溜まるまで時間が掛かるだろう。

 ここの破壊が成功するか否かが作戦の成否を決めるため高橋少尉はコロン上空で旋回していた。

 奇襲効果のためか、対空砲火は上がっていない。

 一発も撃たれること無く攻撃隊は各機目標へ向かっている。

 ガツン閘門は二つの水路で作られており一つに対して三機ずつ急降下して攻撃に向かう。

 まず一機が徹甲爆弾を投下して閘門の付け根に命中させた。

 魚雷による攻撃も考えていたが、効果が少ないと考えられた。

 閘門は扉のようなもので、扉を蹴破っても再びはめ直せば良い。

 だが、蝶番が付いている壁を破壊すれば、扉は倒れてしまう。

 しかも崩れた壁から直さなければならない。

 特に閘門は、湖からの水圧を受けるため、蝶番にあたる箇所、土台の部分は特に強度を必要とする。 

 そこを爆弾で吹き飛ばせば簡単に修理はできない。

 やるからには徹底して攻撃する。

 爆弾は見事、閘門の付け根に命中し予定通りの故岡を発揮した。

 土台部分は吹き飛ばされ強度は低下する。

 その次の機体は水路に落ちたが、水路の底を大きく抉り、爆発の衝撃で閘門に負荷を掛ける。

 そして三機目が一番機と同じ箇所に爆弾を投下し、遂に限界を迎えた閘門は崩壊。攻撃を成功させた。


「やったぞ!」


 閘門が大西洋側へ崩れ湖の水が濁流となって下流側の閘門を破壊して行く。


「しかし、もう一方は成功していません」


 だが攻撃が上手くいったのは、ガツン側では一閘門のみでもう一つは失敗していた。

 それに、ガツンダムがまだ健在だ。


「俺たちがやるしか無いか」


 高橋は考えた。どちらを攻撃するべきか。攻撃隊の燃料はあまりない。直ぐに決める必要がある。


「よし、我々は作戦の優先順序に従いガツンダムを攻撃する」


 上手く行かなかったときの事を考えて、攻撃目標の優先順位が決められていた。

 パナマ運河の機能を考え、一番修理に時間が掛かり厄介な部分、ガツン湖を作り出すガツンダムを攻撃するのが優先とされていた。


「全機続け!」

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