Y3、Q3、B2、C1

 チベッツは自らの部隊第509混成部隊の司令部に戻ると直ちに観測用のB29が発進させ、気象観測を行わせた。

 観測機から翌日の広島の天候は良好という報告を受け作戦命令第35号を発令させた。


作戦命令35号


作戦日: 1945年8月6日

状況説明: 以下を参照せよ

離陸: 気象観測機は0200(頃) / 攻撃機は0300(頃)〔時刻はすべてマリアナ標準時〕

起床時刻: 気象班は2230 / 攻撃班は2330

食事時刻: 2315から0115

必要携帯食: 気象班は2230に39食 / 攻撃班は0030に52食

トラック: 気象班は0015に3台 / 攻撃班は0115に4台


機体番号   ヴィクターナンバー   機長      補助乗員     同乗者

気象任務

  298        83      テイラー

  303        71      ウィルソン

  301        85      エザリー

  302        72      予備機

攻撃班

  292        82      ティベッツ  指令により

  353        89      スウィーニー

  291        91      マクォート

  354        90      マックナイト

  304        88      マクォートのための予備機


燃料: 82号機-7000ガロン / その他の全機-7400ガロン

弾薬: 全機が各機1000発

爆弾: 特殊  〔原爆(ファットマン)〕

カメラ: 82号機と90号機にはK18、その他の装置は口頭指示による

宗教上の式: カトリックは2200に / プロテスタントは2230に


状況説明:

 気象観測機    一般状況説明は2300に搭乗員休憩室で

   任務別状況説明は2330に以下の通り

    機長と操縦士は搭乗員休憩室で / 航法士とレーダー係は図書室で / 無線通信士は通信室で / 航空機関士は作戦室で

   2330に食事

   0015にトラック


 攻撃任務

   一般状況説明は2400に搭乗員休憩室で

   任務別状況説明は0030に以下の通り

    機長と操縦士は搭乗員休憩室で / 航法士とレーダー係は図書室で / 無線通信士は通信室で / 航空機関士は作戦室で

   0030に食事

   0115にトラック




「諸君、今夜の我々の作戦は歴史的なものだ」


 出撃命令を伝えたティベッツは、搭乗員に伝えた。

 8月6日に日付が変わった0:37すぐに気象観測機三機が離陸。

 投下予定地点の広島は勿論、予備の小倉、長崎上空にも向かう。

 観測機が一時間後1:45エノラゲイが離陸。

 爆発を観測する科学観測機と写真撮影機が続行して飛び立った。

 6:30四国上空にさしかかったエノラ・ゲイでは兵器担当兼作戦指揮官のパーソンズ海軍大佐、兵器担当補佐ジェプソン陸軍中尉、爆撃手フィアビー陸軍少佐が爆弾庫に入り、ファットマンの起爆装置をアクティブにした。


「兵器のアクティブ化完了」

「了解」


 報告を聞いた後ティベッツ大佐は機内放送で搭乗員に告げた。


「諸君、我々の運んでいる兵器は世界最初の原子爆弾だ」


 はじめて積み荷の正体を明らかにした。

 機密保持のために最小限の人員、原爆の操作員ととパイロット――爆発の衝撃波を回避のための155度旋回と急降下を行うパイロット以外、銃手には伝えていなかった。

 だが、言われてもそれがどのような平気か理解出来なかった。

 重要なのは、生きて帰れるかどうかだ。

 それに新兵器と言っても、パンプキンのように英国のトールボーイかグランドスラムの従弟分程度の威力だろうと考えていた。

 戦局を覆せるような兵器だとは誰も思わなかった。

 そんな物があればとっくに使っているはずだと思っていた。


「レーダーに反応」

「敵味方識別装置に反応なし」


 迎撃士官のビーザー中尉と通信士のネルソン上等兵の報告の方が重要だった。敵機の接近に機内に緊張が走る。

 エノラ・ゲイは直ちに急上昇し2000メートルから8700メートルまで上昇する。

 だが、レーダーの照射を受け続け、日本機が接近してきた。

 しかし、観測機に攻撃が集中しエノラ・ゲイへの攻撃はなかった。


「作戦は続行する」


 高高度で迎撃出来る日本機は殆ど無く、敵機は一度の攻撃で離脱していった。


「先発のストレートフラッシュより報告。Y3、Q3、B2、C1」


 広島を気象観測している機体だ。

 略号の意味は


 低い雲は雲量4/10から7/10で小さい、中高度の雲は雲量4/10から7/10で薄い、高い雲は雲量1/10から3/10で薄い。

 助言:第1目標を爆撃せよ。


 すぐにティベッツ大佐は決断した。


「予定通り広島に投下する。準備せよ」

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