船坂弘曹長
「アメ公をたたき落とせ!」
突撃に参加した船坂弘曹長も教導隊の一人だった。
宇都宮の部隊出身で関東軍に配置されたが、南方の防衛の為アンガウルへ派遣された。そこでフィリピン攻撃に先立ち前進基地としてペリリュー及びアンガウルを確保しようとした米軍の上陸を受け、船坂達は二ヶ月にもわたる戦いを行い、レイテで米軍が撃退された後、駆けつけた連合艦隊によって救援された。
帰国した船坂は休養の後、教導隊へ志願。沖縄に来ていた。
彼は帰投出来ないと知ると前線への攻撃を志願。擲弾分隊長として擲弾を担ぎ、兵の先頭に立って突撃した。
「伏せろ!」
米軍の機関銃射撃を見るとすぐに伏せる。
だが船坂は冷静に射撃地点を見定めると、擲弾砲を向け、発射。
見事一発で命中させ、機関銃を沈黙させた。
「行くぞ!」
敵を黙らせると前進を再開した。
しかし突進しすぎて、敵兵にばったり会ってしまう。
「この!」
船坂は持っていた擲弾砲で米兵を叩きのめし、持っていた小銃を強奪。そのまま連射して敵兵を倒した。
「やっぱM1ガーランドはいいな。だが短機関銃ならもっといい」
アンガウルの戦いで物資不足となり、敵兵の武器を強奪しながら戦い続けたため米軍の武器にも詳しかった。
「お前達! 突撃するぞ!」
敵兵を一人で倒しなおも前に進む。
しかし、視認の難しい夜間の為、船坂達は再び米軍部隊と接触し乱戦になり脇腹に銃弾を受けた。
「この!」
それでも船坂は、冷静にガーランドを操作し、米兵を倒した。
「隊長! 負傷しています。後退されては」
「ダメだ」
前進し戦い続ける。
常人なら戦うどころか瀕死の重傷なのにそれでも船坂は戦い続ける。
アンガウルでも幾度も負傷、それも瀕死の重傷を負っていたが、数日で回復し前線で戦いまた負傷して戻ってきて回復すればまた前線へ行く戦いを繰り返していた。
あまりの激しさに部下達は不死身の分隊長と行って敬っていた。
その不屈の戦いぶりは沖縄でも発揮されていた。
「今度こそアメ公をたたき落とすぞ!」
アンガウルでは救援の連合艦隊が間に合ったため助かった。だが今度は自力で追い落としたかった。
そのまま、海岸線にたどり着いた。
「海だ! 遂に着いたぞ!」
船坂の声に部隊では歓声が上がる。
中には持っていた日の丸を掲げて喜ぶ者もいた。
その光景は感動的で丁度朝日が昇ってきた事もあり、多くの将兵の目に焼き付いた。
しかし、直後、米軍の艦砲射撃が始まった。
予想外の夜間強襲、しかも砲撃の混乱で突破されつつある状況にバークナーは混乱した。しかしパットンが早急に艦砲射撃による撃退を決断。
夜明けと共に砲撃を命じた。
バークナーは誤射の危険を訴えたが、パットンは翻さなかった。
「ブラッドレーはオマハビーチでドイツ軍を艦砲射撃で撃砕している」
ノルマンディー上陸作戦の時、最大の激戦地だったオマハビーチを突破できたのは座礁覚悟で接近し水平射撃を浴びせた駆逐艦のお陰だ。
パットンは囮部隊の指揮官としてカレーにドイツ軍を集めるため参加していなかったが戦況報告は聞いており、戦例を元に直ちに実行させた。
船坂達は、この艦砲射撃を浴びることとなり、船坂は爆発に巻き込まれて宙を舞った。
「分隊長!」
部下達が大声で叫び駆け寄ると、船坂は全身血まみれになった。
彼らは船坂を放っておけないと担ぎ上げ、後方へ退避させた。
そして、軍医に診せたが、傷を見た軍医はもう助からない、と行って治療しようとしなかったが、直後、船坂は目を覚ました。
「攻撃を続行するぞ!」
再び前進しようとする船坂を部下達は止める事になって仕舞った。
夜襲に成功した日本軍だったが、夜明けと共に米軍の支援攻撃、艦砲射撃と航空攻撃が行われ、日本軍の攻撃を撃退しつつあった。
時間切れと判断した八原は攻撃中止を進言。
長参謀長は攻撃続行を主張したが、長期持久の方針と前線からの損害多数の報告を受け、長は八原の意見を認め、攻撃中止に同意。
日本軍は洞窟陣地に戻っていった。
船坂を部下達が止めたのは、この命令に従っての事だ。
だが素直に聞く船坂ではない。
「仕方ない。味方の撤収を援護する。前線へ向かうぞ」
といって前線に出て行き、追撃してくる米軍を相手に激しく擲弾砲による砲撃を敢行し足止めした。
しかし米軍の反撃も凄まじく、船坂は至近弾を再び受けて全身血まみれになって意識不明となり、部下に拾われて撤退した。
以後、日本軍と米軍の間では防衛線を突破しようとする米軍と阻止しようとする日本軍の間で激しい消耗戦を繰り広げることとなる。
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