宇垣の独断 日本人の性
佐久田の出撃不可という命令に耐えきれず、宇垣は独断で攻撃隊を編成し発進させてしまった。
どうも日本海軍は、突発的な敵の攻撃、予想されたものであっても対処しないと気が済まない性格のようだ。
たとえやるべき計画があっても、それを放り投げて敵に対処してしまう。
第一次マリアナ沖海戦でも、第一航空艦隊の一部が先走って攻撃機を出したため、各個撃破された。
その後、艦隊がやって来て撃滅の機会を得たが、肝心な兵力が足りず、撃退出来なかった。
その事をまるで反省していない。
東京初空襲からしてそうだった。
あのときは、英国を脱落させるためインド洋を制圧する必要があり、南雲機動部隊を出していた。
しかし東京空襲に慌て、作戦完了間近の機動部隊を呼び戻し、ミッドウェーに行かせて惨敗となった。
予想外の敗北の後ショックから立ち直り、インド洋へ再出撃しようとしたがガダルカナルで反撃を受けて、再び呼び戻し奪回作戦に従事させられた。
何とか短期で終え、インド洋へ再出撃したが、再び米軍の攻撃があり呼び戻される。
この繰り返しだった。
何とか昭和十八年に恒常的にインド洋へ攻撃に出られるようになったが、最大の好機、アメリカの援助が整わないときにインドとのシーレーンを寸断するという好機を失った。
その後、どんなに日本海軍がインド洋で暴れソコトラ島を占領し、シーレーンを途絶させても英国は不利になることはあっても降伏しなかった。
突発的な事態への対処に日本海軍はパニックを起こしやすく、対処しづらい。
だが、それこそ日本海軍いや日本人の習性だった。
農耕民族である日本人にとって、日常は大切である。
そして災害の多い日本において突発的な事態に迅速に対処し日常を戻すことは絶対に必要だ。
幸いにもこれまでは自分たち、災害が起きた場所で対処出来た。
しかし、自分たちの外、日本全土で同時に災害、突発的事態が起きたとき、どれから対処するべきか考える力がなかった。
限られた資源を有効に活用する優先順位を付けることが、時に対処を後回しにするという選択をすべきなのに出来なかったのだ。
その点、英国は四百年にも及ぶ海洋国家であり、二百年前の七年戦争から世界規模で戦う事になれていた。
アメリカも海外こそ少ないが、広大な国土を開拓する過程でインディアンを制圧するなどの戦争を行い経験しており、長期戦を戦うのに何が必要かを理解しており工業力の優位もあって効率的に戦う術を心得ていた。
一方の日本は、二〇世紀に入りはじめて日本全土どころか太平洋全域で戦争をする羽目になった。
特に、様々な要素、軍備の他に、資源確保、生産、物流、供給という複雑な構成要素が組み合った総力戦では致命的な資質だった。
「この後の重大局面で使える兵力が無くなるぞ」
実際、佐久田の予想は当たった。
第五航空艦隊は全ての稼働機を以て発見した空母群に対して攻撃を行った。
だが、米軍は最新鋭機F8Fを投入し迎撃に当たらせた。
最新鋭機の前に日本の攻撃隊は次々と撃墜される。
しかし、一部の攻撃隊は突破に成功。
包囲するように接近したこともあり四方から迫る攻撃隊に米軍の迎撃管制は能力オーバーとなり、空母への接近を許してしまった。
少数の機体が見つからず空母群へ突入、完全な奇襲となり空母への攻撃を成功させた。
ワスプ、フランクリンそしてランドルフが所属する空母群へ突入この三隻全てを大破させた。
丁度次の攻撃隊を編成していたため飛行甲板に武装と燃料を満載した艦載機が翼を並べておりそこへ攻撃を受けてしまった。
甲板では誘爆が起こり大火災を起こした。
三隻の被害は大きく戦闘不能となったが、幸いにして沈没は免れた。応急修理ののち、本国へ送り帰されるが、そこで終戦。
戦後の海軍縮小により修理は中断し、予備艦となった後、スクラップとされた。
だが第五航空艦隊の活躍はそこまでだった。
空襲による被害を含め稼働機の七割を喪失し、戦闘不能となった。
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