第五艦隊と演習結果

「長官、全艦隊、集結完了しました」

「よろしい」


 生まれ故郷の名を持つ巡洋艦、自らが旗艦と定めたインディアナポリスの甲板でスプールアンスは報告を受けた。

 あたりを見回すと、多くの艦艇、彼の指揮下にある第五艦隊の艦艇が動き回っていた。

 さらに、彼らを支援する支援艦艇群、タンカーや補給艦が忙しく回っている。


「予想より、被害が少なくて良かった」

「ええ、ウォッゼ環礁が使えて良かったです」


 ウォッゼが空襲を受けたとしった第五艦隊は直ちに、日本艦隊迎撃の為にウォッゼへ急行した。

 初めから、マリアナ攻撃を予測していたスプールアンスは、ハワイ防衛の名を借りて艦隊をハワイ近海まで進出しており、ウォッゼまでの進出は迅速だった。

 ウォッゼへ到着したとき、予想通り、マリアナへの上陸が開始されたと知ったスプールアンスは直ちに地震の作戦行動計画に従い、ウォッゼの復旧と次の作戦の準備を始めた。

 空襲を受けたウォッゼ環礁だったが、広大な環礁のため、泊地としての使用は可能だった。

 また日本軍がマリアナ奪回作戦のため、機雷敷設などを早々い切り上げたため、再使用までの時間は短くて済んだ。

 陸上設備は破壊されていたが、問題は無かった。

 補給はタンカーと貨物船を燃料タンクと倉庫代わりに。

 航空機の補充は護衛空母を使った。

 港湾施設は元々、存在せず、浮きドックと工作艦により艦艇の整備を可能とした。

 かくして艦隊が到着したその日からウォッゼは機能を回復した。

 そして予定通り、補給を開始し短時間で終わらせた。

 次の作戦の為に。


「全艦艇、出撃だ。目標は日本本土。マリアナの友軍を救うためにも、急いで向かうぞ」

「了解しました」


 スプールアンスの号令で第五艦隊は直ちに出撃。

 作戦目標である日本本土へ向かった。

 それは藤山邸で演習が行われる数日前の事だった。




 熱海の藤山邸では日本側指揮官が悲鳴を上げた後も、兵棋演習は続いた。

 佐久田の攻撃は執拗でハワイ再空襲の時のように丸一日中艦載機を飛ばし関東地方の日本軍基地を完全に破壊、その能力を、艦隊及び航空機支援能力を奪った。

 日本側はすぐさまマリアナ近海の機動部隊を北上させて米軍機動部隊を攻撃しようとしたが、佐久田は日没と共に米軍機動部隊を東方へ退避させ逃れた。

 再度の関東空襲を恐れた日本側は、日本周囲を捜索するが空振りに終わり、燃料を空費しただけだった。

 再び捕捉出来たのは、佐久田がマリアナ周辺で作戦行動中の日本軍上陸船団を空襲したときだった。

 既にマリアナ諸島各島の七割を制圧していた状況であり、撤退するにも時間も物資も兵力も投入しており、引き下がれない状況だ。

 日本本土空襲を防ぎ絶対防衛圏を復活させるためにも、マリアナの奪回は必要だったし、当初の作戦目的のため、攻略は継続させていた。

 また、船団の速力が遅く、機動部隊に追随出来ない事もあり、船団は残された。

 その船団を佐久田は容赦なく空襲した。

 勿論、支援と護衛の為の戦力は残されていたが、兵力の分散となり、米第五艦隊の前に各個撃破された。

 護衛戦力の後は、輸送船団が撃滅され、マリアナへ上陸した部隊は孤立した。

 第一機動艦隊の主力が本土近海よりマリアナへ来援したが、既に手遅れだった。

 佐久田の指揮する米軍機動部隊は既に離脱し捕捉する事は出来なかった。

 日本の第一機動艦隊は残存艦艇を収容、再編成して、更にマリアナ攻略を継続しようとしたが、後方で補給を終えた佐久田の米軍機動部隊が再び来襲。

 空母機動部隊同士の戦いが始まった。

 激烈な戦いとなり、双方空母の半分が沈み、艦載機も七割の損害を出し痛み分けとなった。

 だが、深刻だったのは日本側だった。

 艦載機を補充しようにも、根拠地である関東地方は空襲によって壊滅し、予備の機材が無かった。

 しかも、マリアナを攻略している上陸部隊への補給も行わなくてはならない。

 だが、船団は海の底だ。

 米軍機動部隊が船団へも攻撃を仕掛けたため、大きな被害を受けたのだ。

 物資を満載した船団がいなくなり、目に見えて上陸部隊の作戦能力は失われていった。

 一方、佐久田の米軍機動部隊は一度後方へ下がると護衛空母部隊から艦載機を補充、再びマリアナへ来襲した。

 流石に日本側も今回は守る事は出来ず、大きな損害、上陸した部隊の内半数以上を見捨てて本土まで撤退させた。

 結果は、日本側の作戦部隊が半分以上喪失。

 米軍も、空母部隊の戦力が半数を喪失した。

 しかし、米軍の損害は補充の見込みがある、何よりマリアナの防衛に成功している。

 日本軍のマリアナ奪回作戦は失敗に終わった。

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