サンディエゴの米太平洋艦隊司令部
「日本軍が新たな作戦を発動したようだ」
サンディエゴの臨時太平洋艦隊司令部の部屋でニミッツが集まった部下達に言った。
ハワイの太平洋艦隊司令部は日本軍の奇襲で焼失したため使用不能。
前線がマリアナ方面へ前進したためニミッツはフィリピン戦前後からウォッゼに司令部を移していたので、スタッフに被害は無かった。
フィリピンが攻略され、硫黄島も確保されれば更に前進しグアムに司令部を置く予定だったが、作戦失敗により取りやめとなった。
しかも、ハワイ空襲によりハワイの支援能力が無くなったため、ニミッツは艦隊を維持する為、ウォッゼからサンディエゴに司令部を置いている。
ハワイの施設が復旧するまでの間だが、サンディエゴに司令部を置くことにした。
サンディエゴは、ハワイに移るまで太平洋艦隊の主要拠点だっただけに海軍施設は充実しており、不自由はない。
本土に戻ったため後方との連絡や物資の手配はむしろ楽になったぐらいだ。
勿論、良い事ばかりではなかったが。
「ワシントンは、全力で阻止せよとの命令だ」
本土のため、ワシントンからの催促や要望も聞こえるようになってしまった。
新任のため、仕事の仕方が分からない新大統領の見当違いな指示に、命令違反の硫黄島撤退と大損害で窮地に立たされた海軍省の文句が重なり、ニミッツは苦労している。
しかし、ワシントンのやり方についてはある程度心得ているので自分が部下、前線に立つ艦隊の盾になれば良い。
とりあえずは、日本軍の攻撃に対処するのが当面の目的だ。
「それで、連中の次の攻撃目標は分かるか? 情報部は把握していないようだが」
最大の問題は日本軍の攻撃目標と作戦内容が分からないことだ。
暗号解読により日本が大規模な部隊を移動させていることは理解している。
しかし肝心な攻撃目標が分からないことだ。
頻繁に無線通信を行い、暗号電を出しているがどれも当たり障りのない内容ばかりだ。
明らかに欺瞞工作、アメリカ側の解読要員を疲弊させる事が目的だ。
更に攻撃目標を定められないようにしている。
本当の命令は伝令を使っているのだろう。
日本軍が後退し本土に戻った結果、簡単に人が行き来して連絡できるようになった。
以前なら支配領域が広すぎて無線で指示しなければならず、簡単に解読できたが、今後は見込めない。
結果、作戦内容も分からなくなってしまった。
上がってきた情報からニミッツ達が推測するしかないのだ
「情報では日本軍は上陸部隊も用意しているようです。規模にして三個師団、六万から一〇万といった所でしょう」
「場所は何処だ。部隊集結中ならB29を投入すれば良い」
マリアナは孤立状態だが空襲のために船団を送る努力は続けられていた。
しかし、日本側の通商破壊部隊、空母と潜水艦の連合部隊による攻撃のためたどり着けるのはごく少数だ。
B29による空襲は行われているが物資が足りなく、機数が少ないのと日本側の迎撃により、損害が大きくなっている。
硫黄島攻略が失敗し、米軍が撤収したため硫黄島は機能を回復。
マリアナへの巡航ミサイルによる攻撃も再開され、被害も大きく成果は上がっていない。
しかし、敵の作戦準備を妨害できるならやる価値はある。
「残念ですが、日本もそのことを理解しており上陸部隊の集結地は、大湊や鎮海湾などB29の作戦圏外です。鎮海湾は中国大陸側から攻撃出来ますが、補給の問題もありB29の動きはマリアナ以上に低いです」
中国大陸にも発進基地を作っていたが、インド経由で陸路と空路で物資を運び込む必要があり、送れる量が少ない。
そのため、中国大陸からの攻撃は遅々として進んでいない。
日本陸軍航空隊の妨害、迎撃は勿論、基地への空襲などを行っているので、成果どころか今後の活動も期待できない。
「日本軍の上陸を防ぐ事は出来ないか」
ニミッツはB29による空襲を諦め他の手段は無いか尋ねた。
日本軍の上陸を防げないなら迎え撃つしかない。
「日本軍が攻撃するとしたら何処だ」
「一番近いのマリアナです」
沈黙する幕僚達に代わりスプールアンスが答えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます