泡沫バスボール

ゆめみる

第1話 泡沫バスボール

「はぁーーー、泡になって消えたいなぁー」


深いため息をついて湯船にかれこれ3時間。


私の名前は海野 美咲(うみの みさき)。

24歳独身、デザイナー職3年目。

趣味は見ての通り長風呂。

普段は隠してますが、人魚族の血を引くグッピーの人魚です。人魚とは言っても、人間に擬態する方がもはや楽なのでヒレはいつもしまってます。ちなみに先程のボヤキはマーメイドジョークです。


今日は、いえ、今日もお仕事が上手くいきませんでした。社会人3年目ですが社内では相変わらず雑用係。デザイナーなのに、主な仕事はマニュアル制作と会議資料作りです。毎日雑用の合間を縫ってコンペ用のデザインをして、上司からいびられ、あれやこれやで時間が過ぎて9時頃帰宅します。本当はもっとバリバリ働くデザイナーになりたかったのに...ストレスはどんどん溜まります。


人魚なので水に浸かると多少ストレス発散できますが、最近はこれだけじゃ無理なのでオトモにバスボールを買うのが日課になりました。

シュワシュワ〜と溶けて中からおもちゃが出てくるアレです。


風呂に浸かるのに飽きてきたのでそろそろ...と

おもむろにアレのパッケージを破いてぬるくなった湯船にドボン!


シュワシュワ...

シュワシュワ...

...

「あーユニコーンのコンパクトだかわいい〜!!」


シュワシュワ溶ける気持ち良さ!

まだ全部溶けきらないところからなんのおもちゃかワクワク胸を踊らすこの時間!!

夢見る乙女にはたまらない!!!


ちっちゃくて、安っぽいおもちゃに幼魚だった時のトキメキが抑えきれず今の私は社会人をやめて悪と戦う魔法少女へと変身するのです。

魔法少女の隣にいるのは丸っこいユニコーンで、私はヒラヒラのかわいいワンピースにかわいいステッキを振り回して、だいっきらいな会社ごと敵をふっとばすのです!!


「はぁー、今度セボ〇スター大人買いしよ。」


魔法少女の私はシャンプーで洗い流され、いつもの私に戻りました。

空想でぶっとばした会社に出社する明日を憂鬱に感じつつも、毎日なんだかんだ頑張ってる社会人マーメイドのお話です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

泡沫バスボール ゆめみる @YouMemiru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ