第37話 モンスター図鑑1P~2Pくらいまで

前回のあらすじ:ちなみに配管の種類は合流式です


グオオオオオオオォォォ……


「お、音がでかくなった」


「こっちで正解か」


 まだ見ぬ道の奥から聞こえる、丹田にまで響くような重低音の唸り声。果たしてこれで何回目だろうか。先に進むにつれて声の音が大きくなっていく。


 アルリシャの水道は、下水の配管が細かく枝分かれして複雑に入り組んだ、大規模な迷路のような造りになっている。十字路を進んだ先に待ち構えるのはまた十字路。自分の進んでいる道が正解か不正解なのか、そもそも自分が今どこにいるのかさえわからない。カビついた薄暗い配管をひたすらさまよいながら歩いていく。

 目的地への目印となるのは、先ほどから時折聞こえてくる唸り声だけだ。目的地に近づくに連れ、この唸り声も大きくなる……のだと思う。

 実際はどうなのかわからないけど、今はこの声を頼りに動くしかない。


 簡単に言うと京都市の地図みたいな形をしているよ!


 迷路だけなら総当りするだけだから簡単だけど、メインストーリーに絡むダンジョンということもあってか、なかなか手強いモンスターも出現する。

大して面白いことは起こらなかったので戦闘シーンは割愛しようかな?どんなモンスターが出てきたのかだけ紹介しておこう。



[MonsterFile No.1: どくどくねずみ]


・常に3体1組で行動している、どくねずみの強化版モンスター。全身が黒い体毛で覆われており、その名の通り毒を持っている。卓越した連携攻撃でプレイヤーを翻弄する

・3体はそれぞれ違った特徴を持っており、それぞれ身体、爪、毒尾が異様に発達している

・1体目が体当たりで転倒させ、2体目が爪で切り裂き、3体目が毒を付与。直線に並んでの攻撃といい、おそらくモチーフは鎌鼬かまいたち……いやジェッ◯ストリームアタックだなこれ



[MF No.2:キラーフィッシュ]


・その名の通り人食い魚。100匹くらいいた

・速え、小せえ、ぜんぜん魔法当たんねえ

・うおおおおおおおお唸れ私のエイム力(平均キルレ0.4) !喰らえ、偏差シャドースラッシュ! ≪≪HeadShot!≫≫

・範囲魔法持ちのカルナを差し置いてキルスコア堂々の1位の座を手にしたのはフェルミンだった。弾速の遅い初級魔法で偏差撃ちをバンバン決めていく様は圧巻の一言。それに比べリヴァイアちゃんは0キルだけど何をやっていたの?応援してたじゃねーよおめぇも頑張んだよ。



[MF No.3:ヘドロスライム]


 スライムっていいよね。スライムってえっちぃよね。……おお!フェルミンも理解わかってくれるか!あのにゅぷにゅぷ感がたまんないよね。スライムが女の子と交わるところを想像するだけで燃えるよね。はあ、もはや私がスライムになりたい。リヴァイアちゃんもそう思うだろ?……なになに?僕はどっちかというとスライムみたいな女の子の方が好きだって?その発想は無かったよリヴァイアちゃん……!そうかそうか、スライム娘というのは……なんて言うかこう、気持ちよさそうだな。ぶにゅぶにゅしてそうだ。スライム娘の左胸に手を突っ込んで「君の心。あったかいね」って。スライム娘を全身に纏って「今度は君が私の心をあたためてくれ」って。……ハッ、妙案!私もスライムになって、お互い抱き合って、混ざり合って「これで身も心も一つになれたね」って。


 的な話をしていると、珍しいことになんとカルナが会話に加わってきた。こういった神聖な話題にはノータッチだと思っていたんだけど。


「皆さんはあんなのが良いんですか?」


「いや、あれはちょっとヘドロ過ぎて嫌だなあ。欲しいのは概念としてのスライムであって……」


「はあ、よくわかりませんね」


「興味ない話しちゃったね、ごめんよ」


「皆さんスライムに夢見てますけど、ああいったゲル状のモノって身体がべたつくし掃除は大変だしでそんなに良くないですよ」


「へー、…………試したことあるの?」


「…………………」


「あっ」



[MF No.3:エレキーモ]


・強力な電磁波を纏ったエネルギー体のモンスター。物理攻撃が一切効かず、素早い動きでプレイヤーを翻弄する。

・その正体は水蒸気の塊だった。カルナの炎魔法によって跡形もなく蒸発させることで勝利した。

・戦闘エリアの近くで、配線が切れ漏電している箇所を発見した。おそらくそこからエレキーモが誕生したんだろう。



[MF No.5:ベニワニ]


・赤いワニ

・というかガララ〇ニ

・たぶん捕獲レベル8



[MF No.6:バッドバットバット(大群)]


・バッドバットバットの大群



[MF No.7:アゲハコウモリ]


・アゲハ蝶の羽を持ったコウモリ

・たぶん捕獲レベル5

・フェルミンがいきなり「こいつは食材だ。食おう」とか言い出した。食えるわけねーだろ。コウモリとアゲハ蝶が合わさったモンスターのどこに食材要素があるんだよ。たとえ世がグルメ時代だったとしても食わねーと思うぞ。





「おいおい、いつまで歩けばいいんだよ」


 一時間以上も下水道をさまよい続け、しびれを切らしたフェルミンが遂に愚痴を吐く。嘆いたところで目的地が来てくれるわけでもないが、さすがに私も疲れてきた。景色は変わり映えしないし、もしかしたらスタート地点に戻ってしまったんじゃないかとさえ思ってしまう。

 直接声に出していないけど、残りの2人も同じような考えだろう。


「どうです?このままじゃ埒が明かないですし、いっそ四手に分かれるというのは?」


「あまりいい案じゃないけど、そうするしかないか」


 リヴァイアちゃんにも意見を聞いてみると、このまま四人で行こうと言った。


「この道の先から気になる音が聞こえたんだ。だからこっちを確かめてみないかい?」


 リヴァイアちゃんが指差した方向へそっと耳を澄ましてみる。何者かの唸り声が確かにこの方向から聞こえる。……ん?なんか別の声らしきものも聞こえてくるぞ。


「奥の方からなんか聞こえるんだけど」


「本当ですか、ナナオさん」


「何かあるな。近づいてみようぜ」


 奥に行くにつれて、音は大きくなってくる。さっきより鮮明に聞こえる。これは……2人組か?声の主は2人、もしかしてプレイヤーか。なにを話しているんだろうか。

 聞き取ろうと、もう一度耳を澄ます。2人組は、綺麗な透き通る声で━━━



「━━たしかに女の子みたいな顔をしてるけど、あいつはちゃんとちんちんついてるぞ」


「大丈夫だって。小学生男子のちんちんなんて、たま袋で包んじゃえばそれはもうカサブタにしか見えないから」



 ━━━たぶん声の主はプレイヤーに擬態したモンスターだな。会話内容を聞く限りきっとそうだ。


「みんな、奥の方から敵が来るぞ」


「もう目の前にいますけど……」


「うそんっ!?」


 会話に気を足られてまったく気がつかなかった。2人組はすぐそこまで来ていた。

 私たちと同じ魔法少女、プレイヤーだ。


「どもっす」


 そう言いながら2人は軽く会釈し、


「まさか他のプレイヤーとであうとは……。えー、あー、まあその、挨拶でもしときますか!どうも、揺るぎなきヘルムフリートです。で、こっちはげらくもだ」

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