第2話

「・・・あの、最上さんですよね?」


待ち合わせ場所の喫茶店で、

アイスコーヒーを飲みながらスマホをいじってる彼女にそう声を掛けた。


すると彼女は僕のことを見るなり、

「もしかして、明石さんですか!?

よかった~、ちゃんと来てくれて。

新宿、遠くなかったですか?」

笑顔でそう言った。




セクシー女優というだけで、

僕は彼女のことを気の強い冷たい女性だと、勝手にそう思い込んでいた。


だが、最上こなつは僕のイメージとは真逆の

明るくて笑顔の可愛い女の子だった。




「いえ、全然遠くないデス。新宿、近いでス。

この度は、わざわざすいマセン」


緊張で語尾がカタコトになっている僕を見て

彼女はクスクスと笑った。


「それならよかったです。

すいません、先に飲み物頼んじゃいました。

明石さんも何か飲みますよね?」


「・・・じゃあ、僕も同じもので」


僕がそう言うと、定員を読んだ彼女は僕の分のアイスコーヒーを頼んでくれた。



「それで、どんなお話なんですか?」


「お話?」


僕は届いたアイスコーヒーに口をつけながら、

彼女の質問に質問で返した。


「小説ですよ。やっぱり、AV女優が出てくるってことは、エロい小説ですか?

明石さんてそんなお話を書けるくらい、いろんな女性とヤッてるんですか?」


彼女が突然そんなことを言うものだから、

僕は思わず口に含んでいたアイスコーヒーを吐き出してしまった。


「明石さん!?大丈夫ですか?

お洋服についちゃってますよ。ティッシュかタオル持ってます?

私、拭くもの借りてきますね」


「ダ、ダイジョウブ、デス。タオルなら持っているノデ」


僕はリュックからタオルを取り出し、

洋服に付いたアイスコーヒーのシミをポンポンと叩いた。


「・・・すいません。お見苦しいところを」


顔を真っ赤にしながら必死に洋服のシミを拭いている僕を見て、

彼女はまたクスクスと笑った。




「それでは、取材をはじめさせていただきます」


僕はリュクからノートとペンを取り出すと彼女に言った


「はい、よろしくお願いします。なんでも聞いてください!」




セクシー女優という職業の過酷なスケジュールを知り、正直ここまで大変な仕事だと考えていなかった僕は彼女の話を聞いてとても驚いた。


セクシー女優たちの戦場は、アダルト業界だけではなかった。


活躍の場を着々と広げている彼女たちは、テレビ、ラジオ、雑誌、SNSとその活躍は多岐にわたる。


彼女が住んでいるのは、妖艶で過激で峻烈な

僕の住んでいる世界とは全く異なる場所だった。


そんな彼女の話を、僕はいつの間にか食い入るように聞いていた。




「すいません。三十分程の予定だったのに、とっくに過ぎてしまって。

貴重なお話をありがとうございます、とても参考になりました」


「・・・もういいんですか?」


「はい、十分です。とても参考になりました。

最上さんもお忙しいと思いますし、そろそろ行きましょうか。

よければ駅まで一緒に行っても良いですか?」


そう言いながら、僕はノートをリュックにしまおうとした。


だが、彼女は僕の腕をギュッと掴むと、

「待ってください」

と言った。

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アダルトでAVな彼女 鉄生 裕 @yu_tetuki

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