第27話
ベッド脇に座った佳太くんが心配そうな声で聞いてくる。
私は頷いた。
実際に朝よりも随分楽になっている。
熱はもう微熱ほどしかなさそうだ。
「どうして私の家がわかったの?」
「それは……先生に聞いて」
そこまでして会いに来てくれたってこと?
そう聞きたかったけれど、自意識過剰に聞こえるかもしれないのでやめておいた。
「迷惑だった?」
私は慌てて左右に首を降った。
「そんなことない!」
大きな声で否定して、むせこんでしまう。
お母さんが持ってきてくれていたコップのお茶を差し出してくれたので、それを一気に飲み干す。
そうすることで少し落ち着くこともできた。
私はベッドに腰掛けて佳太くんを見た。
本物の佳太くんだ。
ずっとずっと探していた佳太くんだ。
そう思うと今度はジワリと目の奥が熱くなってきて、あっと今に視界がボヤけてきてしまった。
今日の私は風邪のせいで感情の制御が難しいみたいだ。
ボロボロとこぼれだす涙を止めることができなくて、佳太くんが慌てて「どうしたの? 体、つらい?」と聞いてくる。
私はまた子供みたいに左右に首を振って「そうじゃなくて、佳太くんに会えたことが嬉しくて」と、素直に伝えることができた。
「私、佳太くんに嫌われたんだと思ってた。だからもう放課後も花壇に来てくれなくて、もう、会えないと思って」
本当に子供みたいにしゃくりあげながら説明すると、言葉はとぎれとぎれになって、意味をうまく伝えられない。
それでも佳太くんは真剣に私の言葉を聞いてくれて、何度も頷いてくれた。
佳太くんは私の手を握りしめると「嫌いになんてなるわけない」と、囁いた。
「嫌いなら毎日毎日花壇に会いに行ったりもしない」
「本当に?」
「俺を信じて」
佳太くんの手がギュッと強さを増して、私の汗ばんだ手のひらはかすかに震える。
好きな人とこんなに近い距離にいることに今更ながら緊張してきてしまった。
「佳太くんは何年生なの? どれだけ学校内で探してみても、全然見つけられなかったの」
佳太くんの学年とクラスが知りたい。
そうすれば自分から会いに行くことができるんだから。
しかし、佳太くんは沈黙したまま答えてくれなかった。
代わりに中腰になった佳太くんの顔がスッと近づいてくる。
なにか耳打ちされるのだろうかと思って私の顔を近づける。
しかし次の瞬間、唇に柔らかな感触が覆いかぶさってきていて、私の頭は真っ白になった。
その感触はすぐに離れていってしまい、まばたきを繰り返す。
「俺の番号を教えておくから、なにかあったら連絡して」
佳太くんがそう言ってスマホを取り出してくれたのに、私はまだぼーっとしてしまって返事もできなかったのだった。
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