【第二巻発売中】魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~
第244話:侯爵家の聖女さまとアリアさま。
第244話:侯爵家の聖女さまとアリアさま。
――リーム王国への即時派遣が決定した。
二学期に入ってから殆ど学院に通っていないけれど、大丈夫だろうか。出発は明日決行で、アルバトロスに滞在しているリーム王やリームの第三王子殿下も一緒に付いてくるそう。
第三王子殿下は学院へ留学しているから直ぐに国へ帰らないのはまだ理解できるけれど、リーム王は何故私たちと一緒にくっついて国に戻るのか。さっさと転移魔術陣を利用して戻れば良いのにと、不満を漏らしたくなる。
あとアルバトロス王国からの派遣メンバーが凄い事になっていた。私を筆頭にアリアさまと侯爵家の聖女さままで派遣されるそうだ。
護衛や側仕えとして副団長さまにソフィーアさまセレスティアさま。ジークとリンは言わずもがなで、アリアさま付きの護衛騎士に侯爵令嬢さまが侍らせている護衛騎士も。別枠で近衛騎士の人たちも護衛だし、儀式魔術を使うということで教会のシスター陣も参加する。あー……そういえば儀式魔術だったなあと、天井を仰ぐ。
別の事考えようと、ふと二学期からの出来事を振り返る。
「学院、通えていない……」
謁見場でリーム王とのやり取りを終え、城の廊下を歩きながら言葉を零してしまったのを、後ろを付いて来ていたお二人は聞き逃さなかったようだ。前世では大学にはお金がなくて縁がなかったし、確り学べるならと一学期は結構楽しく通っていたというのに。
「仕方ないな。大陸中にお前の名が広まっているんだ」
「ええ。これからもこのような事は多々ありましょう」
苦笑いを浮かべるソフィーアさまと『頼りにされたなら、その分相手から奪い取って差し上げれば良いのです』とセレスティアさま。セレスティアさまって豪胆だよねえと、苦笑を浮かべると鉄扇を広げて口元を隠し目だけ笑っている。
『ナイはまだ甘いのです』とか言いたそうな感じだった。
「私の所為でご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
学生の本分は学院で確りと勉強することである。ソフィーアさまとセレスティアさま、そしてジークとリンの教育を受ける為の時間を奪っているからなあ。申し訳ないと切に感じてしまう。
「お前が頭を下げる必要はないだろう。それに学院で学ぶことは全て家で習っていたからな」
「わたくしもです。父が幼少期に良い家庭教師をつけて下さったので、問題はありません」
お二人は学院で学ぶことを、家で既に習っていたようだ。え、私だけみんなから学習力が遅れるパターンになるのだろうか。学院の勉強について行けなくなったら、家庭教師を雇えば良いか。今ならそのお金はあるんだし、公爵さまにでも紹介して貰えば変な人は派遣されまい。
「高位貴族って凄い……」
本当に。そして幼少期から高レベルの教育を受けて逃げ出さなかったのも。小さい子ならば、嫌だと言って逃げ出したり真面目に勉強しなかったりとかありそうだ。ご家族の方々も教養が高いから、そういうのを見て育ったのだろう。
お二人の元々の素養や性格も理由に上がるのだろうが、若干十五歳にしてこの肝の据わりようは羨ましい限り。私は恐らくこうは成れないだろうなあと、苦笑して少し後ろを歩くジークとリンを見た。
「ジークとリンも、また私に付き合わせてごめん。騎士科の授業について行けなくなったら教えて。家庭教師雇うから、一緒に三人で勉強しよう」
三人で部屋で一緒に勉強をするのもアリだし、孤児仲間のクレイグとサフィールも子爵邸で働くことを望んでくれたから、五人でやるのも楽しそう。
「気にし過ぎだ。特進科ほどじゃないからな、こっちは」
「うん。実力さえあれば、あとはどうにでもなるよ」
本当に大丈夫だろうか。ジークの言葉はまだ信頼できるけれど、リンは頭脳よりも肉体へ能力を振っているからなあ。ちょっと、いや大分心配なのだけれども。駄目なら私とジークに家庭教師の方と付きっ切りで教えよう。進級や卒業できないとなれば、支援してくれている公爵さまの顔に泥を塗ることになるものなあ。
「大丈夫かなあ」
心配になって声に出てしまった。
「お前、ジークフリードとジークリンデには過保護だな」
「そうですか?」
「ええ。甘いですわねえ」
家族みたいな関係だ、甘くなるのも仕方ない。お二人も咎めるというよりは揶揄うような印象を受けるから、気にはしない。くつくつと笑いつつ前を見てまた歩き始めると、謁見場から先に退場していたアリアさまと侯爵家の聖女さまが何故か一緒に廊下の隅に立っている。
どうしたのだろうと顔を向けつつ先へと進むとぱぁと明るい顔になるアリアさま。接点なんて殆どないのに、どうしてこうも私を慕ってくれているのか。ソフィーアさまとセレスティアさまに断りを入れ、アリアさまの方へと足を向ける。明日は一緒に同道することになったのだ、挨拶をしておいた方が良いだろう。
「ごきげんよう、リヒターさま。アリアさま」
アリアさまの名前を先に呼びたい所だけれど、彼女たちの実家の爵位を考えるとどうしても侯爵家の聖女さまの方が先になる。リヒターは家名、ロザリンデが名前だったはず。
「ごきげんよう、竜使いの聖女さま」
「ナイさま、ごきげんよう」
リヒターさま、アリアさまが声を上げたのだった。
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