Donec Mors Nobis Partem

きょうじゅ

本文

 四百年だった。


 俺が吸血鬼を狩る吸血鬼ヴァンパイア・ハンターとなってまでこの女吸血鬼を追い続け、そして今こうして本懐を遂げるまで、費やした歳月は四百年だった。


 もとはと言えば、妻の仇だ。四百年とほんの少し前、俺の新妻はこの女吸血鬼に啜り殺され、そうして俺は復讐のために鬼となったのであった。


 それから。この女は、俺が挑んでは敗れる度、挑んでは敗れる度に、俺の上で腰を振り、俺を辱めた。嬉々として。吸血鬼同士で交わっても子などできないというのに、なんと淫蕩な女なのかとずっと思っていた。


「今、なれば……教えてやろうかの……」


 胸に木の杭を打てば、どんな吸血鬼も土に還る。あと二打ちほどすれば完全に絶命するだろうというところで、女は口を開いた。


の妻はな……吸血鬼たる、のことを、吸血鬼なるが故に子を為せぬのことを、一言、嘲ったのよ。あの日」


 もう一打ち、杭を打ち込んだ。女が低く呻く。


「ああ……四百年……楽しかった……殺して、殺して、殺して、時には殺しおうて……それも叶わずして……なお……殺そうとして……そしてまた殺して。の存在だけが、の生きるよすがであったよ……」


 杭を打ち込むための槌を、最後に大きく振り上げる。


「のう……もう一度……生まれ変われるなら……今度は、は、の、」


 杭が打ち込まれる。残ったのは土と、骨だけ。


 そして俺は、その場から動かなかった。もうじき、太陽が昇る。

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Donec Mors Nobis Partem きょうじゅ @Fake_Proffesor

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