第17話、優しい風
『レオドラ平原撤退戦』から52年後。
「そのあと、どうなったの?」
「そうですね…………、エドとボボは殺されてしまいました。残っていたガルレオン族の戦士約3千名と私が率いていた巨鳩空戦団28名も全滅でしたね」
「エリシア様はどうして助かったの?」
「私はヘルメスタの奇術で肩と足に怪我をして、出血で気絶していたところを巨鳩に助けられたんですよ」
「そっかぁー、でもエリシア様が生きていて良かった」
「ふふふ、…………ありがとう」
エリシアは幼い少年の言葉に困り顔で微笑んだ。
ここはボーチ平原のガルレオン族の村。
エリシアは数年ぶりにこの村へ訪れている。
「こらーっ、ジン!いつまでも遊んでないでお手伝いしなさいよ!」
二人が家の前の草原で話しをしていると少年の母親がやって来た。少年は慌てる。
「わ、わかったよー、 すぐ行くからー」
「あっ、エリシア様、おばあちゃんが起きましたよ」
「わかりました。ふふふ、ジン、また後で遊びましょ」
「うんっ!」
エリシアが部屋に入るとベッドの上で上半身を起こした老婆がいた。
「起きて平気なのですか?」
「ああ、今日は久しぶりにエリシアが来てくれたから体調がいいんだ」
「ふふふ、……ジンは元気ですね」
「顔は父さんに似ているだろ?」
「そうですね。目なんかそっくりです」
「
「歳を取ったよ。……もうよく見えないけど、エリシアはあたしが子供の頃から変わらないのかな?」
「風族は200歳を過ぎないと老化が始まらないのですよ」
「……そうだったな」
「ねぇ、エリシア」
「ん、なんですか?」
「母さんって呼んでいいかな」
「ええ」
「…………母さん」
「ふふふ」
エリシアは老婆の頭をそっと撫でた。
「もう少し寝るよ」
「ええ、 おやすみなさい。 サラサ」
翌朝サラサは息を引き取った。享年79歳。ガルレオン族の中では長生だった。
数日後、ボーチ平原にたてられたサラサの墓に花を供え、エリシアは空を見上げる。
優しい風が長い金色の三つ編みを揺らす。
その姿はレオドラ平原で大使を始めた頃と差ほど変わらない、
華奢な少女のままだった。
【この無職、異世界で有能過ぎる!~100年前の戦争.sideエリシア~】
――――完結。
物語は【この無職、異世界で有能過ぎる!】で続きます。
この無職、異世界で有能過ぎる!~100年前の戦争.sideエリシア~ 黒須 @kurosuXXX
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