第2話 転生したらそこは魔界でした

 「何だこの禍々しい感じの城は……」


 さっきまで自分を包んでいた眩い光が消えたと思ったら全然知らないところにいるんだが……。

 そして目の前には見るからにヤバそうなオーラを放つ城がある。

 おまけになんかどす黒い瘴気纏ってるし……。


 「むっ怪しいやからがいるぞ!」

 

 そんな声が聞こえたかと思うと目の前の空間が歪みオーガみたいなのが二体も出てくる。

 そしてあの契約社員らしい女の子が持たせてくれた紙を奪いとった。


 「ヒッヒィッ!?」


 オーガは俺をジロリとしばらく睨みつけた後で、奪った紙を眺めると突然、跪いた。


 「こっこれははは、と、とんだ失礼を致しましたっ!」

 「あ、貴方様が顧問役であることも知らずにッ!」


 顧問役……なんなんだそれ?

 転生前の世界じゃぁ企業や団体、政府とかから依頼を受け、専門的な知識や経験をもって補佐や指導したりする役職だよなぁ?

 前世社畜の俺が……転生先は何か企業の顧問役なのか?

 そりゃあ大出世で脱社畜じゃんか!

 あ、でも働き続けなきゃならないんか……。

 だが脱社畜は目出度いッ!

 これで俺のプライベート時間は確保されるっ!


 「で、どこのどんな企業の顧問役なんだ?」


 そうとわかれば気になるのは新しい職場についてだ。

 ひょっとしたら前世の知識を活かして会社の業務効率を改善したり売上を伸ばしたりして出世街道を歩めるかもしれないッ!

 知識無双バンザイ!

 (見に染み付いた社畜的思考からは脱出出来てない模様)

 

 「企業……ですか?」


 俺の質問に対してオーガは、言うことが分からないのかしばらく考え込むような顔をした。


 「逆に顧問役様に訊きたいのですが企業とはなんでしょうか……」

 「えっ……俺、どっかの会社の顧問役になるとかじゃないの?あ、ひょっとして個人事業主の顧問役とかなのか?」

 「恐れながら申し上げますが……」


 巨体のオーガが見た目とは裏腹に萎縮しながら切り出す。


 「貴方様は、誰に仕えるのかがわかっておられないのでしょうか……?」


 え、仕えるって何?

 ひょっとして国王とかの顧問役ってこと?


 「まぁ、そうだよ」

 「ならば申し上げます。貴方様は今日より今上魔王陛下の顧問役に就任されるのです」


 ……え……?

 もはや分からないとかそんな生ぬるい次元じゃない。

 ん、今上?魔王?はぇ?

 そして顔を上げて視界に映った禍々しい感じの城を見てはたと気付く。

 ひょっとしてここは魔界なのだろうかと……。


 「ん?魔王って、魔王?」


 思わずクッソ低レベルな質問をかましてしまうのだがそれも仕方ないこと。

 なにせ当方、魔界は初めてなんだから。


 「と、とりあえず上の者に繋いで参りますのでしばしお待ちください!」


 魔界も縦社会なのかと社畜的思考を巡らせつつこうして転生者としての生活がスタートしたのだった。

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転生したいとは言ったけど魔王の顧問役になるとは聞いてない〜転生してもブラック職場ってマジですか?〜 ふぃるめる @aterie3

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