魔女の師匠と弟子の愚痴大会

野上チヌ

魔女の師匠と弟子の愚痴大会

 ジュウと焼鳥の焼ける匂いがする。そのなか、二人の魔女が喧嘩をしている。店はこの二人以外誰もいない。店長はこの二人喧嘩を迷惑そうに落ち着くのを見守っている。


「ですから師匠焼き鳥は塩です」


 そう師匠に文句を垂れ流す私を手を振って一蹴するのは私の師匠です。


「焼き鳥といえば王道のタレです」


 金髪の髪をなびかせ、決めポーズして師匠はそう言います。


「そんなことありません。すべての調味料の中で見たとき王道なのは塩です」


 すべての調味料の中で見るとタレはマイナーとても塩には敵いません!


「フィールドを変えてはいけませんよ」


「そんなことないですー。いいんですー」


 私は師匠に負けないように言い返す。


「塩は皮やボンジリなどなど、油っぽいものが多いでしょう」


「それがどうかしたんですか?」


 師匠は溜めてからボッソっとこう言った。


「太りますよ」


「な、な、な、何をいいいますか」


 私は持っていた串を落としてしまうほど慌てふためいた。

 な、なんですって? 太ると? これはいくら師匠でも許されませんよ。


「ほどほどだからいいんですー。師匠こそ体重管理に気をつけないとほうきがポキっと折れてしまいますよ」


 私はここぞとばかりに反撃をする。師匠は太っているを気にしているのかのか「そんなことないです」と言っておどおどしています。


「私はあなたがコッソリお菓子を盗み食いをしているのを知っていますから」


 な、どうしてそれを……。


「私だっておなかすくことだってあるんです。体重は管理しているので関係ないです」


「そうですか。あと、この話は止めませんか。お互いに傷つくだけです」


「そうですね」


 私と師匠はこの話題をやめることにした。でも、まだ、私の怒りは収まらない。


「師匠、お酒はほどほどに。酒臭いです」


 私の言葉に師匠は手に持っていたグラスを落としかけた。


「な、酒臭いですって!」


 そう言われても酒臭いのは本当だ。さっきから師匠は酒を飲んでいるので酒の匂いがするのは当然だ。師匠のテーブルにはもう空のグラスが何杯もある。


「そう言うあなただって獣臭いわ」


 獣臭いって、ここへ来る前にシャワーで落としたつもりですが。そんなに匂います? 私は動物が好きでいつも動物と触れ合っている。


「あなたいつも動物を触ってるからシャワーで落ちないくらい匂いがついているわよ」


 私は自分の匂いを嗅ぐ。微かに獣臭かった。


「ちょっと臭いだけじゃないですか。師匠ほどじゃないです」


 私がこう言うと師匠はむくれて黙ってしまった。私はしばらく師匠に勝ったことを喜びつつ、塩の焼き鳥をほおばった。


「……生き物オタク」


「生き物オタク?」


「あなたのことです」


 もしかして悪口言われてます? 師匠もう許しませんよ。


「酒飲み。私が昼間禁止にしているのに勝手に飲んでいるでしょう」


 師匠は本当に酒飲みだ。ほっとくと朝から晩まで飲んでいるので、私が昼間飲むのを禁止している。………でも、たまに盗み飲みしている。


「ばれてました?」


 師匠は口に手をあて、驚いたふりをしている。

 これはまた盗み飲みするつもりですね。


「あなたのその緑色の髪、目立って嫌なんです」


 私のこの綺麗な髪色、そんなに目立ちますか? どちらかと言うと師匠の方が金色で目立つ気がしますが。でも、私の髪色を侮辱されたのは癪に障ります。


「師匠のばか」


 ここから私と師匠のどうしようもない愚痴大会が始まった。

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魔女の師匠と弟子の愚痴大会 野上チヌ @hiramenoko

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