よく噛める料理を選ぶ
ここまで「よく噛んで食べること」の重要性を説いてきましたが、その為には「よく噛める料理」を選ぶ必要性があります。10秒チャージといったことを謳った商品もありますが、そんなことばかりしていると噛む力が失われてしまいます(商品の良し悪しについてはここでは言及しません)。パーソナルトレーナーとして申し上げれば、食べることはトレーニングでもあるのです。よく噛めば顎の筋肉が使われますし、口内環境を整える事だって出来ます。
よく噛まなくてもいい料理というのは離乳食とか流動食と言った、噛む力や歯がない人の為にあります。現状として自分の歯が揃っていて顎の筋力が正常なのであれば、人生の長きにわたってその機能を保持し続けるように働きかける必要があります。誰だって歳を重ねても自分の歯で美味しくご飯を食べたいと願うはずです。
もう私は最近のトレンドというものが分からなくなってしまった人間ですが(苦笑)、スムージーだったり野菜ジュースだったりがまだ流行っているとしたら由々しきことだと思います(流行ってるかは知らん)。何故ならそれらは噛まずして胃腸に届ける事が出来てしまうからです。もちろん体調を崩している時や著しく食欲が減退している時などにそういったものを活用することは悪くないでしょうが、何故健康な顎と歯があるのに機械にそれをさせるのかはよく分かりません。また噛むことによって脳が活性化するということもありますし、リラックス効果も期待できます。
よく噛める料理とは何か?まず主食となるもので言えば、お米か硬いパンの様なものになるでしょう。麺類なら蕎麦が比較的噛み応えがあります。うどんやラーメンも美味しいですが、あまりよく噛んで食べるものという印象はないかと思います。ちなみに私はうどんもラーメンも好きなので、それらを頭ごなしに悪いとは言いません(言えません)。ですがベースを何に置くかというのは重要です。
さて、ここでよく言われるのは「炭水化物は食べていいの?」という話です。結論から言うと絶対に食べた方がいいです。特にビジネスパーソンは日々頭を使って仕事をしているはずですが、それはつまり脳を使っているということですね。脳がエネルギーとして活用できるのは糖質だけです。糖質というのは炭水化物を構成するもので、炭水化物は糖質と食物繊維に分類されます。ですから先ほどの「炭水化物は食べていいの?」への問いに「YES」と答えたのは、炭水化物と呼ばれるものを摂らないと糖質が十分に摂取できず、頭が回らなくなる、すなわち脳の機能が低下するからです。
ビジネスパーソンにとって重要な判断力が、炭水化物(糖質)を抜くことによって低下しているとしたら、それはまさに自業自得でありあまりにも滑稽です。ビジネスチャンスを逃さない為にも炭水化物を摂りましょう。しかもそれがよく噛むということに繋がるのですから、悪いことは何もありません。ちなみに私は普段1日3~4合程度の米を食べています。
かの有名な宮沢賢治の『雨ニモマケズ』の一説に「一日に玄米四合と味噌と少しの野菜」という記述があります。玄米は現代では少し敬遠されがちですし、さすがに「玄米四合」は多すぎるだろうと思われるかもしれませんが、「雨ニモマケズ」が執筆されたのは1931年とされています。当時の情勢を考えるとむしろこの食生活が普通だったようで、現代人が米を食べなさ過ぎておかずを食べ過ぎていると見る方が自然です。
ちなみに玄米はよく噛んで食べないと本当に消化不良を起こします。個人の消化能力にもよるでしょうが、よく噛んで食べれば問題ないとも言えますね。現代では白米を食べることが一般的で、またパン食が中心という人も多くなっていますから、玄米をわざわざ買えとは言いませんしそう言える権利は私にはありません。パン食が一般化してきたのは戦後にアメリカから入って来たからで、まだ100年も歴史がありません。確かにパンは美味しいものですが、私たち日本人の身体にはパンよりも米の方が合っているとみて間違いないと考えています。日常的に食べるものは米を選ぶ方がよいでしょう。
1958年に慶応大学の林髞(はやしたかし)氏が『頭脳』という著書の中で「米を食べると馬鹿になる」というとんでもない持論を展開し、実際に『米を食べると馬鹿になる』というパンフレットが彼の講演会場で数10万部印刷されて配布されたなんて言う話があります。それに加えて朝日新聞の「天声人語」でも同調するような話を展開。その理屈が本当なら宮沢賢治は馬鹿だったということでしょうか?彼は例外?私には、この林という教授や朝日新聞の方がよほど……あ、文字に起こすのはやめておきましょうか。米がダメだというのは戦後仕組まれたプロパガンダであることは間違いないでしょうし、その後に生まれた炭水化物が太るなんていうのもある種のプロパガンダと見て良いでしょう。稲作を大切にしてきた我が国の歴史と、それを破壊され続けている事実を見れば分かる話です。
ちなみに私が米食を勧める理由の最も重要なポイントは、多くの方が「米は美味しい」という事実を知っているというところにあります。もちろんパンも美味しいということは認めています。しかし例えばキャンプ場において飯盒で炊いた米は格別の美味しさで、おこげまで平らげたくなります。またどこかの旅館で出てくるような朝食でもお米が出ますが、それも何度もお代わりしたくなりませんか?稲作を大切にしてきた私たち日本人のDNAは米を欲しているのだと信じています。自宅でも炊飯器という文明の利器を使うのは悪くありませんが、土鍋で炊くと格別の味わいです。ハッキリ言ってスマホやテレビから得られる幸せを遥かに凌ぐそれがそこにはあります。
パンは噛めば噛むほど口の中がパサパサになります。唾液が吸われていくのです。ですが米は噛めば噛むほど(限界はあるけど)味が出てきますし、唾液の分泌も増えます。和食の特色の一つとして口内調理というものがありますが、これは例えばおかずを一口含んで、その後に米を入れて、咀嚼して砕きながら口の中で粥状にするという食事法です。これはパン食にはあまり見られません。
またなかなかランチ休憩が取れないという人もオススメなのがおにぎりです。私は仕事柄なかなかゆっくりランチ休憩が取れませんが、忙しいと分かっている日には自分でおにぎりを作るようにしています。自分でパンをこねるのはちょっと面倒ですが、おにぎりならふりかけなり塩なりを炊けたご飯に混ぜて握ってしまえば出来上がりです。それにおにぎりはよく噛んで食べないと喉を詰まらせますから、強制的に咀嚼というイベントを発生させる事が出来ます。
先述したようにそれをスムージーだとか野菜ジュースだとかで補ったり、はたまた唾液が奪われるようなプロテインバーの様なもので代用したりしても、厳密にはそれは代用できていません。
もちろんパンも便利ですが、パンを選ぶならちゃんとしたパン屋さんのパンを選んでください。コンビニやスーパーの袋パンはあまりにも不健康な添加物に塗れています。これはコンビニやスーパーの食材全体に言えることですが、1日置いても腐らないモノというのは不自然です。これは「Shi-ZEN Style」の考え方に明確に反します。もし自炊が難しければ、職場近くで個人的に経営されているパン屋さんやおにぎり屋さん、或いはコンビニや一般的なスーパーよりも値段が高いお店を探してみて下さい。その方が地域や健康を考えている人々への貢献にもなりますし、あなたも健康に過ごせます。
ビジネスパーソンはお金の流れを読み解くのが得意かと思います。また歴史から学ぶということにも長けておられるはずです。同じように食物の流れや歴史にも思いを馳せて頂ければと思います。そしてそれがお金という人間が作り出した造形物ではなく、自然が作り出したものであるという点も、よく咀嚼して生きていきましょう。
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