何も成し遂げられないで、どうして生きてられようか。

柊かすみ

目に物見せてやるからな。

 たった一度の成功で「僕は誰より有能」と勘違いしてこの歳に。驕り高ぶりこの歳に。何も成し遂げられないで、どうして生きてられようか。


 人に教えを乞うことも、友を作ってお互いに切磋琢磨し合うことも、何もする気がないのなら——努力する気がないのなら、やめてしまえば良いものを。


 それでも僕がこうやってまた息を吸い生きるのは、終止符を打つ決断を下す勇気がないからで。死にたくなくてしょうがない。……生きたいわけでもないのだが。


 そうして僕は駄目になる。呆けた面で朽ちてゆく。何も為せずに沈みゆく。やるというならやるべきで、やらないならばやらぬべき。……わかっているさそんなこと。


「何も『すべての競争で上に立て』とは言わない。が、自信を持てるなんらかが一つくらいはあったらね? 中途半端な現状は、ただの時間の無駄使い。……君にとっても嫌だろう? 虚無に溺れてこうやって、世界を恨みうじうじと、何も為せずにぐだぐだと。……できることならあるはずだ。本気を出してやってみろ!」


 ふと耳にしたその言葉。僕とは別のあの人も、僕と同じで悩んでた。——どうかしていたその僕は、これ以上ない屈辱をそれに覚えて歯噛みした。


 泣き腫らした目、濡れた頬。涙を袖で拭い取り睨む世界はまばゆくて。それでも僕は真っ直ぐに睨み続けて息を吸う。目に物見せてやるからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

何も成し遂げられないで、どうして生きてられようか。 柊かすみ @okyrst

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ