第111話
ビリーは、チーム【銀の一角獣】の面々を見た。
依頼人は、三人組の少年少女。おそらく、新人の冒険者。
荒事を知らない、初々しい顔立ちをしていた。
全員、緊張しているようで、ぴんっ! と背を伸ばして座っている。
「改めまして、チーム【銀の一角獣】です。本日は依頼を引き受けていただき、ありがとうございます。よろしくお願いします!」
「「よろしくお願いします!」」
ごとごと、とーー二頭の馬が牽く馬車の中、自己紹介が始まる。
「アラン・ゴーシュです。チーム【銀の一角獣】のリーダーをやっています」
最初は、向かいの席の真ん中に座る少年。飴色の髪を、青いバンダナでまとめている。
纏うのは、軽装鎧。佩くのは長剣。腰のベルトには、小袋がいくつか揺れている。
「ブロッソン・リンク。よろしくお願いします……」
続いて、左隣の少年。温厚そうな顔立ちだが、がっしりとした体つきをしている。
こちらも、纏うのは軽装鎧。携えている得物は、メイス。
「ジーヴィー・ローニッツァです。本日はよろしくお願いします」
最後は、右側の少女だ。はしばみ色の髪をおさげにした、そばかすの。
纏うのは、新緑色のローブ。手には、魔杖。恐らく、魔術師。もしくは回復術師。
「アランにブロッソンにジーヴィーっていうのか。よろしくな! 俺はビリー、ビリー・ザ・キッド」
「……え、俺たちが依頼したのは、デッド・スワロゥさんだったはずなんですけど……」
「あー、それなんだけどなー、俺はオマケって思ってもらっていいぜ」
顔を不安で曇らせかけたジーヴィーに、ビリーは言う。
「お前らが言うデッド・スワロゥってのは、こっち。ほら、挨拶しなさいって!」
ぺしん、と。その背中を叩く。頭を下げさせる。
「よ、よろしくお願いします……」
【銀の一角獣】の面々は、心なしか引いていたように思える。
当たり前といえば当たり前かもしれない。
大の大人、それも、顔面にでっかい傷を持つ男が小柄な少年に主導権を持たれているように見えているのだから。
「こいつ、ちょーっとばかり事情持ちなんでね、俺がついてやっているの。そーしないと、色々面倒が起こるもんだからね」
「じゃあ、キミもそうなの?」
デッド・スワロゥの横を陣取って座るキリは、【銀の一角獣】の面々にぺこり、とお辞儀する。
「うん、そうだよ!」
馬車で揺られること、おおよそ3時間。
目的地は、小さな村だった。
草原と村の境に立つ門には、「ようこそ、チャリオラ村へ!」という看板。
「おお、お待ちしておりました!」
出迎えてくれたのは、ちょび髭の中年の男。
「依頼を出した、クレイトンです。本日は魔物討伐の依頼を引き受けていただき、ありがとうございます」
クレイトンの案内で、一行は村にある牧場に来ていた。
道すがら、そこがクレイトンが経営する牧場だということを聞いている。
「魔物が出るんです」
嘆息する、クレイトン。
「ひどいもんですよ。牛にいたずらしたり、資材や道具を荒らしたり、牛乳のタンクをひっくり返したり」
「それじゃあ、実害が出るのも時間の問題ですね」
アランが、憮然とした表情で頷く。
「早いとこ、退治しないと」
「ちなみに、なんの魔物ですか?」
「……あれです」
ジーヴィーの問いに、クレイトンは牧場の片隅を指差す。
牧場を囲う柵の側に、そいつらは屯していた。
見た感じ、巨大すぎるソーダゼリーに見えなくもない。
「あれは、まさか……」
ブロッソンが、メイスを構える。
そいつらの脅威を、冒険者として充分分かっているからだ。
「みみ、みみみ!?」
「みみみみみ!」
「みみみーみみ!」
そいつらの脅威を、【異世界】の知識として分かっていない【名無し】の剣士に、ディスコルディアは言う。
「あれは、魔物だ。スライムという」
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