僕の毛玉日記

@ramia294

   

 あの日…。


 僕は、毛玉を拾った。

 小さな毛玉は、僕の部屋の同居人になった。

 大きくも無い部屋を、興味深そうにクンクンと調べる姿は、可愛かった。

 この時は、まだ鼻が目立たず、前後の判別にも困った。

 毛玉は、ペットフードをモリモリ食べて、育っていった。

 

 その日…。


 毛玉は、僕の布団に潜り込んで寝る。

 暖かそうな毛玉には、暑すぎないか心配だったが、気にしていない様だ。

 僕は、とても暖かく冬場は、重宝した。

 この頃、毛玉には、小さな耳と、可愛いシッポが…。

 可愛い毛玉が、ますます可愛くなった。

 とっても可愛い僕の毛玉。

 いっぱい食べて、大きくなあれ!


 この日…。


 毛玉の顔が、ずいぶんハッキリしてきた。

 足も長くなり、いっけん、転がっているのかなと見える移動方法は、しっかり歩いているのだと、観察出来た。

 顔は、やはりネコにしか見えない。

 

「ミュー、ミュー」


 ご飯が食べたいよ。


「ヒュン、ヒュン」


 おやつを下さいな。


 可愛い鳴き声。

 しかし、トイレに行くときは、もう少しお下品な声で鳴いた。


 どの日…?


 毛玉が、初めてしゃべる。


 トウチャン

 オヤヅ

 ゴハン

 オジッコ

 ウン


 話せる言葉が増えていく。

 ますます可愛くなった僕の毛玉。


「トウチャン、ワタジのお名前は、いつまで毛玉なの?」


 僕は、毛玉という名前が、気に入っていたが、ちゃんとした名前をそろそろ考えないといけない。

 すでに、毛玉の体重は、10キロ近い。


「ネコに似ているから、似猫で、ニコちゃん。君の名前は、今日からニコちゃん」


「ワタジ、ニコちゃん。トウチャン、これからもヨロジク」


 毛玉は、ますます大きく、可愛く成長していった。


 めでたい日…。


 毛玉改めてニコちゃんは、ペットフードよりも僕の食べ物を欲しがる。

 缶ビールをクンクンして、魚の煮付けから目が離れない。

 

「アタジもトウチャンと同じ物を食べたいよ」


 繰り返されるニコちゃんの言葉。

 テーブルのニコちゃん。

 よく見ると可愛いシッポがふたつに分かれています。

 まだまだ先っぽのほんの少しですが、もう大丈夫。


「おめでとう。ニコちゃんは、無事猫又になりました。これでトウチャンと同じ物を食べる事が出来ます。缶ビールも飲めます」


 その日から僕のテーブルには、二人分の食事。

 ふたつのコップ。

 ビールは、一缶。

 食事前には、乾杯。

 

「ニコちゃん、今日も楽しい一日ありがとう」


 ニコちゃんの食事は、僕と一緒。

 嬉しいニコちゃん。


 でも、懐かしい毛玉時代…。

 思い出すのでしょうか?

 時々、ペットフードをかじっています。


         おわり

 

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