第77話 コットンライク潜入調査



 ちなみに、僕らが今いるこの町はコットンライクっていうらしい。綿っぽい何か。化学繊維だろうか?


「昔は綿の加工工場がたくさんあったんですよ」と、モッディさんは変わりはてた町のようすにヘコんでる。


 どう変わってるのか僕らにはわからないんだけど、綿工場はみんなつぶれてた。廃墟になった工場がならんでるのは圧巻……悪い意味で。要するに、オバケが出そう。


 いちおうここにも市場はあって、買い物にいそしむモンスターたちがつどっていた。


「聞きまして? コットン港のジャッケルさまがやられたらしいざますよ!」

「ええっ? ジャッケルさまが? そんなバカな」

「怖い世の中ですわね。奥さま。でも、この町にはウジットさまがいらっしゃいますもの。安心ですわ」

「ウジットさまがいれば心強いですわね」


 買い物カゴさげて、井戸端会議するモンスターのおばさんたち。

 どっかで聞いたような会話だね。ここでも、僕はするっと話題に入りこむ。これぞ、ぽよぽよの奥義。


「ウジットさまって、この町のボスだよね?」

「あら、なんて可愛いぽよぽよざましょ。美味しそうだわぁ」

「今夜は、ぽよぽよの味噌煮込みにしようかしら?」


 み、味噌煮込み? この前のシチューのほうが美味しそうな気がするけど……いや、食われたくないよ? 食われるつもりもないけどね? でも、味噌はないよ……。


「ウジットさまって、ここのボス?」

「迷いぽよぽよね。ウジットさまを知らないなんて」

「うん。僕、迷いぽよぽよ。ウジットさまって、誰の部下なの?」


 おばさんたちはホホホと上品に手をそえて笑う。けど、その手の奥でヨダレたらしてるんだよね。


「これだから、ぽよぽよは。義のホウレンさまに決まってるざましょ?」


 やっぱり、か。ヤドリギとゴドバが倒れて、残る四天王はユダとホウレンだけ。ユダは古代に封じられてたみたいだし、となると、自由に動ける四天王は、ホウレンだけだもんね。


 ん? 四天王のなかの誰かが魔王じゃなかったっけ? てことは、ホウレンが魔王?

 もしそうなら、油断できないね。

 まあ、こんな田舎町にホウレンがいるわけはないんだけど。猛を助けに行ったとき、魔王城にいたよね? ふだんは魔界にいるって見ていい。


「それじゃ、ウジットさまはどこにいるの?」

「関所で何かあったとき、すぐにかけつけられるように、廃墟工場の詰所にいらっしゃるわよ」

「廃墟工場ね。ありがとう」


 やっぱり、関所ごとに強い隊長を置いてるんだな。となると、蘭さんたちは町があるたびにボス戦か。


「あら、待ちなさい。あなたはうちのオカズになるざます」


 またこのパターンか。モンスターの思考法ってみんな同じなのか?


「こら、おまえたち。このおかたをどなたと心得る。ぽよぽよのなかのぽよぽよ。ぽよぽよ神のかーくんさまにあらせられるぞ」


 水戸黄門が出てきそうなセリフを放って、馬車からとびだしてきたのは、エアリーサンだ。けど、今、ぽよぽよ職だから。これまた、美味そうなぽよぽよにしか見えないっていう……。


「ああ、エアリーサン。いいから、いいから。じゃね、おばさんたち」

「誰がおばさんざますか!」


 えっ? そこ? モンスターも年齢を気にしてる?


 とにかく、ぽよぽよの僕らはチョコマカかわして、おばさんたちをまいた。


「廃墟工場へ行こう。で、戦わずにフローランをつれて逃げる」

「ええけど、時間かけられへんで?」

「ランスの隠れ身でこっそり行って、こっそり帰ってくる」


 ランスが思案顔になる。

「隠れ身使うんなら、馬車は置いていったほうがいいな。ターゲットが少なく小さいほど、長時間きくんだ」


 そうなんだ。知らなかった。


「じゃあ、僕、ぽよちゃん、エアリーサンとランスで行こう。あとのメンバーは、そのあいだに市場で買い物すませて」


 なぜか、よこから手を出す人が。ホムラ先生だ。


「買い物資金を渡しなさい」

「いや……着服しますよね?」

「もちろんだとも」

「われに渡すがよい」

「ゴウヨンさんも着服しますよね?」

「神は金塊を望まれた。職業の神に栄えあれ!」


 絶対、違う。


「おれが預かっとくで?」と、三村くん。

「財布盗んだ前科持ちが?」

「かーくん、水に流す言うたやんかぁ」

「……」


 かと言って、モッディさんも僕があげたお金でカジノに直行した人だ。

 どうしよう。信用できる人がいない。人選ミスッた!

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