第54話 連戦ボス波止場



「百一億パーンチ!」


 あっけなかった。二体めも倒れた。


「てことは、これからは持たざる商魂で一円すてるだけで、百一億攻撃力」

「む? どうせなら、大きく出なさい」

「先生がひろうためですよね?」

「ハハハ。何を言ってるんだね?」


 どっちみち、最近、大金しかひろわないからなぁ。一円玉持ってないかも。


 波止場は続く。

 三体めのボスだ。

 思ったとおり、すべてのステータスが4000。まあ、このまま倍々で増えるんだとしても、最後の五体めで、16000。僕らの今の数値なら、それでも楽勝だね。

 むしろ、一万六千も数値つまめるなんて、嬉しい。なんて気前のいい敵だ。


 塩の香りのする波止場を僕らは口笛なんか吹きながら歩いてく。


「かーくん、口笛ヘタすぎんで」

「ええ? こんなもんでしょ?」

「こうや!」


 三村くん、めっちゃ上手! まるでハーモニカのように複雑なメロディーが海風にただよう。

 もう勝利を確信して、完全に油断してたね。


 三体めのボス。これもペロリといただいて、百一億一万パーンチ。ペロリというか、チューチューというか。


「ああ、この調子だと、魔王も百億パーンチで瞬殺?」

「かーくん。でも、わがやられたみたいな変な魔法がああけんね。気をつけたほうがいいよ」

「そうだよね。ごめん」


 イケノくんに忠告されて、ちょっと反省。たしかに、四天王はみんな、禁じられた古代の魔法を使ってきた。もし、ほかの四天王や魔王もそうだとしたら、今の僕らだって安心はできない。


 さて、四体めのカンガルー。倍々で体も大きくなるから、ビッグカンガルーというにふさわしい。八メートルの巨体。数値はやっぱり八千だ。


 ペロン。チュー。ペロン。チューのパーンチ!


「次で最後だねぇ。一万六千もごちそうしてくれるなんて、ありがたいなぁ」

「かーくん、食いしん坊なね」


 このまま五体めも倒して圧勝だね。


 で、五体め。思ったとおりの全ステータス16000。これ、僕らでなかったら、ここでこの物語は終わってた。レベル60まであげてもステータス三桁のパーティメンバーで、どうやって防御力も攻撃力も16000の敵に勝てるというのか。


 でも、素早さ16000は99999マックスの僕やぽよちゃんに対して先制をとれない。その時点でペロンチューされてしまう。敗北確定だ。


「わあっ。全部で三万もステータスもらったよぉー。ラッキー」

「指輪しとるし、おれも4700あがったで」

「わも」

「おれもです。もしかして、指輪であがる吸血数値って、三人とも同じですね」


 トーマス、するどい。同じ指輪のコピーだからかな。


 もしも、ヤドリギ戦みたいに、とつぜんお金が使えなくなっても対処できるよう、僕は思いきって、さらに四百億円、持たざる商魂ですてた。これで五百一億一万ダメージ。いくら強い敵でも五百億よりHP多いわけないよね。


「じゃ、パーンチ! はい。おしまい」


 五体めもすんなり倒せた。よかった。よかった。

 コットン港。魔王軍も厳重配備してはいたけど、僕らが相手じゃ、てんで無力だよ。


 と思った瞬間だ。

 急に戦闘音楽がアップテンポになった。ドドドドド——と、どこからか地鳴りがひびく。


「な、何?」

「かーくん!」

「あれだない?」

「ハッハッハッ。君たち、本番はこれからのようだね」


 ホムラ先生、落ちついてる場合じゃないですよ?

 ゲート前には高い塀が築かれていた。五十メートルはありそうな。その塀をかるくピョンととびこえて、何かが僕らの前に現れる。


「うわー! 巨大すぎる!」

「あかんわー!」

「まさに、ビッグカンガルーです」

「ハッハッハッ!」


 だから、ホムラ先生、何が楽しいんだー?


 現れたのは、体高が百五十メートル以上の超巨大ビッグカンガルーだ。たぶん、五体めのやつの十倍はある。


 僕はイヤーな予感がした。

 十倍? 体が十倍?

 今までの法則で行くと、体のサイズと数値の増えかたは比例してる……。


 思ったとおりだ! ビッグビッグカンガルーの全ステータス、十六万!

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