第55話 ビッグカンガルー(グランマ)戦1



 ビッグカンガルー(グランマ)が現れた!

 ビッグカンガルー(グランマ)の先制攻撃!



 ああっ、先制とられたー!

 そこさえ押さえておけば、僕のつまみ食いで無力化できたのに。


 ちょっと、さすがにマズくない?

 今までのボスは攻撃力、ふつうに三桁だった。ゴドバが規格外だったけど、それでも最大で数万ていど。

 十六万? ほんとに、十六万? ああ……何度見なおしても十六万。だって、上限値って99999なんだけど。なんで160000って表示できてんの? ホムラ先生の752レベルから、なんか変になったー!


 いや、とにかく、最大でも数万の攻撃しか受けたことないんだよ。十六万なんて受けたら、死ぬ? 死ぬよね?


 えーと、敵の攻撃力から自分の防御力をひいて、出た答えが、受けるダメージ。

 えっと、160000ひく99999。約六万か。僕のHP約三万……ダメだ! かるく死んじゃう!


 しかもだよ。いつもなら、器用さ99999だから、どんな攻撃もヒョイッとかわしちゃう。でも、今は敵の器用さのほうが六万も高い。かわせない……。


 次のターンで僕がつまみ食いするしかない!

 たとえ何人か倒れても、僕さえ生きてれば、まきかえしはできる。


 そう思った瞬間だ。

 巨大カンガルーの両足がビュンと勢いよく僕の前に……。

 ああ、狙ってくるんだ? 僕? なんで? ぽよぽよだから? カンガルーって草食じゃなかったっけ?


 やられる。

 せめて、全滅さえしなければ、誰かが生き返らせてくれるか……。


 僕があきらめのなかで、迫りくる足をながめていると——


 ガキンッ!

 いい音がして、カンガルーの親玉ははねかえされた。


「ん? 助かった? あっ、そっか。白虎の加護がかかってるんだ」


 白虎は神獣の一種だ。前に倒したときに、白虎のお守りくれたんだよ。僕だけしか守られてないんだけど、魔法、直接攻撃、魔法、直接攻撃の順番でないと、ダメージを受けつけない。よかった。ビッグキックは直接攻撃だった。


 カンガルーのおばあさんはチッと舌打ちしつつ、再度アタック。けど、それも直接攻撃だ。あっけなくガードされてしまう。


 ビッグカンガルー(グランマ)はそこで行動をやめた。ビッグカンガルー、そうか。おばあさん。ひまごは漢字で書くとだね。ひ孫、孫、子、親、グランマ。カンガルーの一家だったのか。


 僕らのターンだ。なんとか、しのげた。

 とりあえず、僕は風神のブーツをやたら、ふみふみする。これで僕の素早さが百倍まであがる。カンガルーおばあさんが二回行動したのは、僕らより素早さが高いからだ。でも、これで僕のほうが早い。


「ぽよちゃん。みんなにスピードファイターかけてくれる? 最初に自分にかけるの忘れずに」

「うっす!」


 ぽよぽよ王がおぼえるスピードファイターは、風神のブーツの装備品魔法と同じだ。足の裏が地面につくたびに、自身のスピードが三百パーセント上昇する。重ねがけ上限は百倍。


 これで、とりあえず、カンガルーばあちゃんの行動力は封じた。僕が攻撃に失敗するとか、万一のときにもダメージを負う回数が減る。


「アニキ。ぽよ、あと四十回は動けそうっす。なんかしとくっすか?」

「キュイキュイ言うてんな。今日のぽよちゃん、ようしゃべるわ」


 三村くん、緊張感欠けるから黙ってて。


「うーん。今はいいよ。あとは身を守って待っててね」

「うっす!」


「かーくん。どないするんや? つまみ食いか?」

「食べれるだけ食べる。上限超えた数値はうばえないんだよね。でも、みんなにふりわけながら食べれば、なんとか」


 まずは素早さだな。

 僕はカンガルーの巨大な肩にストローをさして、チューチューするイメージ。チューチュー、チューチューチュー……そろそろ限界値かな。あれ? でも、まだ吸える。チューチュー。チューチューチューチューチューチュー……あれあれ? なんか、まだぜんぜん行けるぞ?


 僕は満足してから、カンガルーばあちゃんのステータスをじっと見た。ゼロだ。素早さゼロになってる。変だな。一回で全部吸えてる。前、ゴドバから数値とったときは、僕がマックスの99999になったら、残りは吸えずに残ったのに。


 ちょっと試しに力も行ってみよう。僕の基本の力が五万だから、49999までは吸える。

 チューチュー、チューチューチューチューチューチューチューチュー……ああっ? やっぱり、全部吸えてるー!


「なんで? 僕は力99999なんだけどな。十六万吸った残りはどこへ?」

「君が小説を書くで、仲間に数値をふりわけられるようになったからだ。表記上は上限の99999にしか見えないが、じつは、それ以上の数値は仲間にあたえる余剰ぶんとして内包されているのだよ」と、ホムラ先生が説明してくれた。


 便利! 全知全能! これでもう解説いらず。



 ……いりませんか?



「ハッ! テロップさんなの?」



 ……わたしはもう必要ありませんか?



「いや、言葉のあやだから! いるからね! いてくれないと、バトルの気分が盛りあがらないよ?」



 それはよかったです!



 テロップと会話してしまった。これ、もしかして、どっかから天上の人とかなんとか、見てるのかな? 僕らを呼んだ女神さまがテロップ係?

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