第二部 予言の巫女救出作戦

第四章 ウールリカへ行こう!

第42話 ぽよぽよ神、人間世界へ帰還

https://kakuyomu.jp/users/kaoru-todo/news/16817330649389117576(挿絵)



 帰ってきました〜!

 やっと人間の世界だ。おおっ、街の明かり。人ごみ。お店。食べ物。お城もあるねぇ。


 で、僕らはまっすぐボイクド城に帰って、ワレスさんに報告だ。蘭さんは自分のお城に帰りたいみたいだけど、魔王軍との対戦については、ボイクド国が中心だから。


「……そうか。裏切りのユダのほんとの名は、ユークリッド」

「ダークエルフだって本人は言ってました。誰かに裏切られて、闇堕ちしちゃったらしいんですよ。それで封印されたんじゃないかな」


 ワレスさんは興味深そうに僕の話を聞き入ってくれた。美形に熱心に質問攻めにされるのって、ドキドキするよね。


「じつは、魔王城について調べさせていた大賢者が帰ってきたんだ。その件に関しては、彼をまじえて、さらに調査してみる」


 ロンド、ちゃんと帰れたんだ。


「あと、猛がユダじゃないってバレました。処刑されかけてたけど、いちおう僕が逃がしたんで、追いかけてくると思います」

「おまえの兄の力量なら、一人でも案ずる必要はないだろう」

「あとですね。僕らのパーティーにいた火の玉モンスターのたまりんが、じつは予言の巫女の魂みたいなんですよ! それで、すぐにもウールリカに助けに行きたいんです!」


 すると、ワレスさんが呼んでくれたのが、この人物だ。


「ゴライをおぼえてるな?」

「もちろんです!」


 ボイクド城の会議室に現れたのは、二メートル五十センチはありそうな、民族衣装を来た大男と、小柄な茶髪の男。

 巨人がゴライ。小さいほうがモッディだ。

 二人とも以前、ヒノクニ武闘大会で僕らと優勝を争った仲である。


「彼らの出身はウールリカなんだ」と、ワレスさん。


 ウールリカは魔王軍の侵攻によって、現状、鎖国さこく状態と言っていい。多くの住人が国外に逃亡した。僕も旅の途中で、そんな人たちにたくさん会った。ゴライとモッディもウールリカ難民の一人なわけだ。


「お願いします!」と言ったのは、モッディだ。クチャクチャの巻毛で、いかにも羊飼いっぽい。あ、戦闘職業だけどね。ほんとの職業は知らない。


「おれたち、武闘大会に出てたのは、勇者を探していたからです。勇者でなければ、魔王軍に占拠された城から姫さまを助けだせない。勇者ならきっと武闘大会の上位になるだろうとふんで。あんたたちは強い。このさい、勇者でなくてもいいから、姫を救いに行く手助けをしてほしい」


 僕らは顔を見あわせた。

 蘭さんが勇者だと知ってるのは、僕らのパーティーメンバーのほかは、ワレスさんとその腹心の部下クルウ、それにボイクド城の城主などの要人。あとは蘭さんの家族だけ。

 それをゴライたちに打ちあけていいものか迷う。ゴライがいい人だとわかってはいるけど、そこまで信用できるのかは、まだ謎だ。


「ゴライさんとモッディさんは、ウールリカのお姫さまとどんな関係なんですか?」

「ゴライは王族の近衛騎士だった。おれは家令の息子です」


 そうだったのか。それなら、個人的にお姫さまを助けたいのもわかるな。もしかしたら、家族の安否を確認するためもあって、故郷へ帰りたいのかもしれないし。


「ウールリカへは僕らも行くところです。土地勘のある二人がついてきてくれるのは、とても嬉しいです。けど、ウールリカへは陸路で行けないんですよね?」


 それも、ワレスさんがちゃんと用意してくれていた。


「ゴドバからうばった船。あれをおまえたちにやろう。好きに使うといい」

「でも、あれがないと、謎の島に行けないんじゃ?」

「問題ない。ホムラがあのとき通った経路を解析して、どの船でも移動できるようにしてくれた」


 さすが、ホムラ先生だ。全知全能の魔神。または優しいマッドサイエンティスト。


「じゃあ、ありがたく、使わせてもらいます」

「ウールリカは激戦が予想される。おまえたちで大丈夫か?」


 正直、ぜんぜん平気だよね。僕とぽよちゃんがいれば。ほかのメンバーも強くなったしね。けど、ワガママ言えば、ワレスさんがついてきてくれるんだろうか?


 僕がジイッと見ると、ワレスさんは麗しいおもてを破顔する。金髪碧眼のこの美貌の人を見ると、なぜか僕は孔雀くじゃくを思いうかべる。羽をひろげた孔雀。なんかこう、勝ち誇ってる。


「ついていってやりたいが、おれは今、忙しいんだよ。夢の巫女が今のうちに魔王軍との最終決戦に備え、部下をしっかり鍛えておけと言うので」


 キヨミンさんか。あの人の予言も当たるんだ。ということは、やっぱり、決戦が近い?

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