第41話 日の光ー!
ジグザグ、ジグザグ、もういいかげん疲れた。僕らがヘトヘトになるまでのぼりつめたさきで、ようやく、見おぼえのある場所に出た。
「ここ、あそこじゃない? ほら、古代の魔神が封印されてたノームたちの採石場!」
「ですね。地面に大穴があいてる」
やっと……やっと、もとの場所まで来た。よかった。ちゃんと地上あったんだ。なんかもう、階段じたいが無限ループじゃないかと疑ってしまったよ。
「ここまで来たら、外まですぐだね」
「ノーム村まで、もうひと息です」
出てくるモンスターは今の僕らにとっては、ほんとにザコだ。チャラッと戦闘音楽鳴ったとたんに、敵のほうが逃げだしていく。そりゃ怖いよね。魔神なみの僕ら。
「ああ、この道、おぼえある」
「かーくん。ロラン。そげじゃないよ。こっちだったが」
「ぞげだったー」
ハッ! 喜びのあまり、出雲弁に……。
キラキラした鉱物が特徴的な坑道は、地下は地下でも、さっきまでの暗い地の底とはまったく違う。なんか、ワクワクする。そう言えば、ひさびさに小銭もひろってる。願いの国では小銭ひろいの特技使えてなかったな。小銭っていうか、片手じゃ持ちきれないようなデッカイ宝石なんだけど。それも原石じゃない。しっかり研磨されて、きれいにカットしたルースストーンだ。売れば一つで何兆円? 国宝級だよね。
そして、ついに、坑道を進む僕らの前に、遠く丸い光が……。
「光だー!」
「太陽!」
「お日さまですね」
はぁっ、実質、どれくらいのあいだ、地下にいたんだろう? 願いの国のお城に数時間。そこから橋渡って数時間。魔王城で一晩くらい。魔界を出たあとがもうわけわかんないんだよなぁ。数日だった気もするし、数ヶ月だったような?
おかげで、日の光がまぶしいーっ。体にしみるね。
「ヤッター! 外や。外やでー!」
「西日……草原、新鮮な風……」
「キュイ〜!」
「あっ、ぽよちゃん。草食べるなら猫車で食べようね。いっぱい、つんどいてあげるから」
僕らは文字どおり泣いて喜んだ。人間って光と風を求めてるんだ。生きてる実感がするぅー。
廃墟城は見た感じ、あんまり変わりがない。いや、こっち側からだとわかりにくいけど、一部くずれてるのかな? たぶん、地盤の崩落のせいだ。ノーム村は大丈夫だろうか? 心配だ。震源地から離れてはいるけど、だいぶ、ゆれただろうな。
馬車と猫車も嬉しいのか、よく走る。そう言えば、馬車をひくお馬さん、ユニコーンじゃなくなってる。やっぱり、心の形だったのか。
「馬に名前つけてなかったねぇ」
「えっ? スプリンター号でしょ?」
「そうなの?」
「僕はそうだと思ってましたよ?」
むう。いつのまに。さては蘭さん、一人で決めたな。
茜色に染まる空。
黄金に輝く草原。白や紫の花。ぽよぽよたちがはねまわってる。ちょうちょはフワフワ飛び、巣に帰る小鳥の鳴き声……。
ああっ、世界ってキレイだー!
ノーム村をかこむ森が見えてきた。森の入口にはナッツとナッツのお母さん、ノームの村長さんたちが立っていた。
「かーくん、アジー、アンドー!」
「みなさん、ご無事で何よりです」
「クピコピーピピコ。ポピー」
僕らはノーム村に迎えられて、ごちそうざんまい。プリン以外の食べ物がえらく美味い。そのあとはもう爆睡だ。疲れはててたんだよね。
で、翌日。
「クピピ、コピーピコ、ピラー」
ノーム語はあいかわらずだけど、精霊職をマスターしたおかげで、言葉が理解できる。ちなみに、「朝が来ただば。出発するだば」と、村長さんは言った。
「じゃあ、僕ら人間の世界に帰りますので、あとのことはお願いします。オーク族とも仲よくしてあげてくださいね」
「任せるだば。これからは島のすべての種族が力をあわせるだば」
「ナッツとお母さんも、これまでお世話になりました。ほんとにありがとう」
「いやいや。楽しかっただば。ええ子だば。ナッツ、お母さん、元気でだば〜」
ノーム村のみんなや、ぽよぽよ族に見送られて、僕らはオーク城へむかった。人間の世界へ帰るためには、オーク城の地下水路に置いてある船を使わないといけないからだ。
「オークキングー!」
「ブヒー、キング。留守はわたしらにお任せあれー」
「たまには遊びにきてくださいブヒ」
オークたちにも盛大に見送られる。
えっ? オークキングが誰かだって? 僕だよ!
なんで僕、人間なのに、オークだの、ぽよぽよだの……。
とにかく、思い出深い謎の島を、こうして僕らはあとにしたのだった。
第一部『不本意ながら、ぽよぽよの僕』了
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