第32話 地上めざして
回復の泉から進んでいくと、そのさきは一本道になっていた。これなら、もう迷う心配はない。きっと、先行したロンドとエンリコも脱出できたはず。
「回復の泉すぎると、だいたいボス戦ですよね。ここにはいなさそう?」
「そう言いつつ、ロラン。僕をなでるのやめてくれない?」
「あっ、ごめんなさい。かーくんが可愛いから、つい」
「ぽよぽよだからね……あのさ」
「はい?」
「地面におろして」
「あ! ごめんなさい。ほんとに、かーくんが可愛いから!」
やっと、勇者のダッコから解放された。歩きながら、ずっと僕のことモフってるんだもんな。
「かーくん。おれもモフっていいか? その姿なら、アレルギー出ないかもしれない」
なんて、ランスまで。
平穏な旅。ところがだ。その直後、馬車と猫車をつらねた僕らの一隊は、長い橋に到達した。ユークリッドに見送られたあの橋にそっくり。
でも、ここは出口側だ。なぜなら、橋の手前に巨人が立っている。一つ目のビックリするほど大きな巨人。三十メートルはあるかなぁ?
「ああ……ボス、ここにいた」
「いましたね」
僕はみんなを呼びとめた。
「ちょっと待って。遠耳で確認っと。地獄のギガンテスか。有名な巨人だね。スキルは丸飲み、あばれる、地獄ぶんまわし」
のっとるや呪いを使わないのか。これは意外。でも、お供にさまよえる魂が出てくるかもね。
「へぇ。かーくん、そんな技使えるんですね」
「それだけじゃないよ! ぽよぽよ神の僕といっしょにいるぽよぽよは、ターン開始時に必ずアルテマハイテンションになるんだ。しかも、ステータスも二倍だしね。みんなもぽよぽよになればいいのに」
そしたら、ぽよぽよ軍団で猛アタックだよね。
「待って」と、蘭さんが真剣な顔で言う。
「ぽよぽよって『仲間〜』ってスキル使えましたよね? 自分のテンションをパーティーメンバーに感染させる技。あれを使ってもらったら、毎ターン、仲間をアルテマハイテンションにできますね」
「そうだけど、その必要ないと思うよ。僕とぽよちゃん、数値上限になっちゃってるし」
「ほんとだ。また差がひらいてる……ぽよぽよなのに、HP以外全部の数値がマックス」
「ギガンテスからつまみ食いできるし、余剰ぶんをふりわけとこうか?」
すると、三村くんが口をはさんだ。
「せやった。さっきこれ、分裂したで」
三村くんが手のひらにころがしてみせたのは、スリーピングにもらった黒い吸血の指輪だ。
「じゃあ、これ、ロランがつけてて。僕がつまみ食いしたとき、この指輪をしてる人はみんな数値あがるから」
「ありがとう!」
可愛いのはどっちだ! ぽよぽよじゃないのに、超絶可愛い!
ふりわけは、こうだ。
僕のMPから20000をランス、17211をロランへ。
力50005をアンドーくん。
体力30008をトーマス。
知力44450をランス。ランスは泣いて喜んだ。
素早さから20000をロラン、17010をランス。ランスはさらに泣いた。号泣だ。知力高くても素早くないと、たくさん魔法打てないからね。
器用さ38788は、ロランへ。
おかげで僕の数値はだいぶスッキリした。
レベル62(ぽよぽよ神)
HP16651、MP80000、力50000、体力75000、知力55555、素早さ48000、器用さ50000、幸運55555
ただし、これも以前のようにマスターボーナスがかかれば、HP以外は全部、上限を超える数値になるよう計算してる。今はぽよぽよ神の特性でこの倍だ。
「うわー! おれの知力が六万に! MPも三万。無限に魔法使える!」
「おれも体力が三万あがったから、これで、みんなの壁役として、もっと役に立てる」
「わあっ、わの力が六万だよ? どげすうだ?」
みんな、喜んでるなぁ。よかった、よかった。
「バランは薔薇効果で毎ターン千ずつ数値あがるから、今回は我慢してね」
「かまいません。すでに充分な力を得ております」
自分の数値をふりわけるのには、スマホの電力をほとんど使用しないとわかった。電力は45%残ってるな。ほとんどはゴドバ戦で使用したんだよね。小説を書くは僕イチのチート技なんだけど、スマホの電力必須なとこだけがネック。残り半分になってるから、もしものときに備えて、大事にとっとこう。
「では、行きましょう。ギガンテス、倒しますよ!」
蘭さんが言うので、僕らはうなずきあった。
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