第33話 地獄のギガンテス戦1



 ギガンテスの前に近づいていくと、ドロドロとイヤな音楽が響いていた。いかにも、ヤバそうなボス。魔王城の中ボスは楽勝だったけど、コイツはどうかなぁ?


 前衛は、僕、蘭さん、トーマス、アンドーくんだ。後衛にバラン、ぽよちゃん、ケロちゃん、ランス。後衛は補助魔法と回復魔法しか使えないんだけど、ランスだけは弓聖って職業なので、後衛からでも攻撃できる。


 いつもなら、たまりんが詩神のハープを弾いてくれると、それだけでバリアや数値あげや、回復、突撃などのものすごい効果を発揮してくれたんだけど、たまりん、いなくなっちゃったから……。


 こうしていなくなると、ほんとに大切な仲間だったんだってわかる。戦闘でもだけど、やっぱり、青い火の玉がユラユラしてるの見れないとさみしいね。


「てか、ランス。いつのまに、弓聖なんてマスターしてたの?」

「ここ、さまよってるあいだだよ。思い出ってモンスター倒すと、たまに転職の石ってアイテム落とすから、それ使って大暗殺者と弓聖マスターしたよ」


 ここって、自分にむいた職にしかつけないんだよね? 大暗殺者が心の職業? ランス、意外と怖い人間アレルギー?


「弓聖になると、後衛から敵の後衛まで攻撃が届くようになるんだ! 魔法使いまくりだろ?」


 なんだ。だからか。大暗殺者マスターするのは弓聖になるための条件ね。


「かーくん。聞き耳!」

「キュイ! って、ロラン、何させるんだよ!」

「あはは。かーくん、可愛い」


 むーん。ぽよぽよで遊ばれてる。


「とにかく、あばれるってのは、クマりんが使う技だよね。通常攻撃が四連打になるやつ。地獄ぶんまわしは全体攻撃みたい。丸飲みが、ちょっと謎なんだけど。長押ししても詳細が見れないね」


 蘭さんがいるから、こっちは必ず先制攻撃。まず、バランの薔薇、ケロちゃんの石化舌自動攻撃発動。けど、やっぱり、ボスには石化は効かないね。


 ギガンテス、デッカいだけあって、数値はそこそこいい。HPつまみ食いすると死んじゃうから、HPだけはとれないんだけどね。


「HP五万か。欲しいけど、そこは我慢して、MPは……ゼロだ。力、五千! スゴイ。今までのボスのなかで特殊なやつをのぞけばトップだ。とりあえず、僕がつまみ食いするよ? 力と知力とってしまえば、敵の与ダメはなくなるからね」


 このとき、僕は完全にコイツを甘く見てた。何しろ、魔王城で無双しすぎちゃって、感覚がおかしくなってたんだよね。


 ブーツはいたうしろ足をかるくトントンしてスピードをあげる。これで、ほぼ僕一人で倒せるね。


「つまみ食い!」

「あっ、かーくん。ほんとに指輪の力で、僕の力が850あがりました。スゴイ!」

「指輪つけてるだけで、僕がつまみ食いした数値の10〜20%もらえるって便利だよね。じゃ、次は知力。つまみ食いー!」


 ペロンとな。

 知恵は力ほど高くなくて、600しかない。

 続いて、体力、素早さ、器用さ、幸運と、HP以外の項目を全部いただく。


「さ、いただいたから、倒しちゃうね」

「ちょっと待った!」


 ランスだ。魔法マニアの言いそうなセリフは……。


「せっかく知力あがったんだから、試したい!」


 やっぱりか。


「まあ、いいんじゃないの。HP五万は高いけど、まだロランもいるし、アンドーくんの力も六万だし」

「ヤッター! デッカイ魔法使いたい! 雷神の怒りー!」


 いきなり雷系の大技使った。最強魔法に近いやつ。


 攻撃魔法のダメージは、術者の知力からターゲットの知力をひき、たがいのレベル差がプラスマイナス5以内であれば、さっきの引き算の残り数値がそのままダメージになる。レベル差が術者のほうが高いとさらに有利。


 しかも、雷神の怒りは、敵全体にランダムで複数回の魔法を放つ。

 ギガンテスの知力は僕につままれてゼロになってるから、数値差六万かけることの三から五倍くらい。HP五万でも一撃死だ。


 すさまじい雷の柱が数本、ドカン、ドカンと闇を切り裂く。光がやんだとき、ギガンテスは……?


「倒れてる! ヤッタね、ランス!」

「チョロいぜ!」


 うん。楽勝、楽勝っと。

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