第31話 やっと集まった仲間たち
そのあと、暗闇をさらに何時間も歩きまわった。疲れたら回復の泉に戻り、小休止。メンバーを代えて、また探しに行く。そのくりかえし。
「ランス、起きて! しっかり!」
「ふへへ……ついに知力が99999に。これで人間アレルギーが治せ……る」
「それは夢だよ。寝るなー!」
てなぐあい。
この世界ではその人が心にいだく願望が形になって現れるって、ユークリッドが言ってたもんね。本人にはきっと思い描く自分の世界が見えてるんだろうな。
ロランは自分が魔王を倒して、平和がおとずれた世界を夢見てた。
トーマスはミルキー城で大将軍になった自分を。
スズランは兄のロランと二人で世界中を冒険する夢を。なんで二人? 僕らはジャマ者?
僕らの馬車の馬は、なんと、ユニコーンになっていた。ただの馬だと思ってたんだけどな? そりゃ、キレイな白馬ではあるんだけど。まさか、この馬もほんとは秘密があるのか? それとも、ただのこの馬の願望?
「はぁ……これで全員? ほかにいない人は?」
「ロランにアンドー、トーマス、ラフランス、スズラン、アジ。人間は全員——ああっ! かーくんがおらんで!」
「いや、僕、ここにいるからね」
「かーくんがおらんで!」
「だから、ここにいるからね」
「かーくんがおらん!」
「誰かコイツ、黙らせてくださーい!」
ぽよちゃん、バラン、クマりん、ケロちゃん、モリー、ヒカルン、ネコりん四匹。モンスターたちもそろってる。
ちなみに、シルバンとミニコを探すの手間どった。銀晶石でできたゴーレムのシルバン。ミスリル製のミニゴーレムのミニコ。
二人はなぜか、こっちの世界ではタキシード姿のイケメン執事と、メイド服の美少女になってたからだ。美少女というか、幼女よりじゃっかん育った少女? 小学低学年くらい。でもね。その姿がなぜか、子どものころの僕にそっくりなんだよね。これ、見たら、猛が大喜びするなぁ。
シルバンは銀髪、ミニコは黒髪。そうか。これが、彼らの心の形か。もしかしたら、ミニコは僕の妹のつもり?
「ご主人さまが、ぽよぽよミー!」
「ごめんね。ぽよぽよな主人で」
「だから見つからなかったんですミ〜」
「ははは。語尾だけ、なんとなく、ミニコ」
バランはふだん小人だけど、僕らと同じサイズになってた。そうすると、もともとキレイな薔薇の精だから、もう近よりがたいほど厳か。職業も神獣だし、背中に蝶の羽ある。半透明で青いもようの羽。夢のなかの生き物みたい。
「たまりんがいませんね」と、蘭さんが言うので、僕は事情を説明した。
こっちの世界では、なぜか、蘭さんにもぽよぽよ語がわかるらしい。三村くんはアレなのに。
「たまりんはウールリカで待ってると……」
「本体の限界が来てるんだって。早く助けに行かないと」
「たまりんは予言の巫女である可能性が高いんですね。ここを出たら、すぐに救出にむかいましょう」
「はあっ、ここなら知力マックスなのになぁ」と、ぼやいたのは、当然、ランスだ。人間アレルギーの魔法マニア健在。
「僕、自分の数値をパーティーメンバーにわけあたえられるようになったから、あとであまりの知力をランスにあげるよ」
「えっ? ほんとか? いいのか?」
「あれ? ランス、僕の言葉わかるんだ?」
「だって、前にみんなで精霊職についたろ? おれもう精霊騎士もマスターしたよ」
「マジっ? じゃあ、これ、あげる」
僕は願いの国で買ってきた精霊騎士の一式をとりだした。
「おれ、よろいは着れないな。胸あてとブーツと弓をくれ。杖もほしい。いちおう盾も。めちゃくちゃ性能いい武器防具じゃないか」
精霊職、ノームの村でみんなおもしろがって転職したよね。僕は今、それになれないんだけど。
「この世界では、心の形にあった職業にしかなれないみたいです」と説明してくれたのは、スズランだ。マーダーの神殿で修行した祈りの巫女ね。
ということは、僕の心がぽよぽよだから、ぽよぽよ系以外の職業につけない、と。
「ほかに精霊職マスターした人は?」
「はい! おれ」
「アジ、早いね。マスターしてたんだ」
「おれは精霊までしかなれなかった。精霊騎士の素質ないみたいだ」
「精霊さえマスターしてれば、このシリーズは装備できるよ。あっ、バランにも一式渡すね」
「ありがとうございます。精霊の国の美しいよろいですね。今はもう失われた高い技術で作られています」
バランは武器の薔薇水晶の杖以外は全部つけかえだ。アクセサリーはそのまま。
前にレッドドラゴンを倒したときに手に入れた炎属性のあらゆる攻撃をふせぐマントを半透明なよろいの上に羽織ると、それはもう美しいのなんの。枝や葉が乳白色のオパールでできた、真紅の薔薇って感じ。
スズランも精霊をマスターしてたんで、一式プレゼント。蘭さんもマスターはしてるけど、精霊王のシリーズのほうが装備品魔法が優秀なんで、装備はそのまま。
早く三村くんやトーマスが精霊マスターしてくれたらなぁ。
とにかく、全員集まった。
やっと出発だ!
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