第5話 オマケでくれた装飾品



「ひゃー。一億円金貨なんて初めて見たよ。なんでこんな大金をぽよぽよが?」

「そこはまあ、大富豪なので」

「お釣り二千万もいらないなんて、悪いね。お礼に、これをあげるよ」


 さしだされたのは、何やら見たことのない銀色の羽飾りだ。


「これは?」

「お客さん、神獣ホワイトフェニックスをご存じですか?」

「フェニックスなら知ってるよ」


 てか、仲間にもいるんだけど。ヒナのふえ子と、そのお母さん、ふえ花さん。フェニックスの親子ともはぐれちゃったなぁ。


「お客さん。フェニックスじゃありませんよ。ホワイトフェニックスです」

「ホワイト……白い不死鳥なの?」


 たしかに僕らの知ってるフェニックスは目がチカチカするようなレインボー色。


「白いのは見たことないなぁ」

「ホワイトフェニックスは、とてもめずらしいアルビノ種なんです」

「で、そのアルビノのフェニックスが何か?」

「ふつうのフェニックスの羽も病気を治したり、戦闘不能を蘇生させたりする力がありますよね?」

「ありがたいですね」

「ホワイトフェニックスの羽は、戦闘中、30%の確率でを発動します。さらに、ダンジョンでは正しい道を示してくれるという優れた力があるのです。そのため、旅人のお守りとして使われているんですよ」


 ふんばるは、残りHP以上のダメージをくらっても、気力で戦闘不能にならずに持ちこたえる技だ。武闘王などの格闘家系の職業をマスターしないとおぼえられない。


「へえ。めずらしい。ありがとうございます!」

「それに、仲間が戦闘不能になったら、その羽でなでるといいよ。HP半分で蘇生する。消耗品じゃないから、何度でも使えるしね」

「助かります!」


 消費アイテムのフェニックスの灰効果も付属。それは嬉しい。


「そんな貴重な神獣の羽なんて、よく手に入りましたねぇ」

「だって、裏庭で飼ってるから」

「えっ? 裏庭で?」

「うん。飼ってる」

「……」


 それ、ほんとに神獣なの? ニワトリとかじゃなく? 日常生活に激しく入りこんでる神獣……。


「じゃあ、これ、もっと在庫ありますか? お金出すので」

「悪いねぇ。自然に羽がぬけたときしか作れないんだよ。今はそれ一個」


 そうだよね。大量生産の剣やよろいみたいにはいかないか。


「でも、かわりに転職の石はいかがですか? 消耗品だけど、祈りの巫女の呪文が封じられてて、その場ですぐ転職できる。一個一万円だけど」

「それください! 千個」

「在庫が三百個しかないよ」

「じゃあ、三百個」

「はいはい。三百万円ね」


 そのあと、僕はさらに爆買いした。僕らの時代ではなかなか手に入らない白紙の魔法書や、天使の羽、精霊の花飾り、めずらしい職業のツボ、強力な魔法効果のある精霊石などを買いあさる。


 すると、ダークさんが助言してくれた。


「清めのお札をたくさん買っとくといいぞ」

「清めのお札?」


 聞きなれないアイテムだな。見ると、解呪用消費アイテムだ。


「僕、装飾品の効果で状態異常にはならないんで」

「い、い、か、ら、買っとくんだ!」


 う、うーん。かなり強めのアプローチ。しょうがないから、千個ほど買っておく。一個五百円だから、たいした額じゃないし。


「もういいか?」

「満足です!」


 ふふふ。今回もいい物、たくさん買った。一点物がないのは残念だけど、しょうがないか。まだオバケじゃないからね。


「では、行くぞ」

「は〜い」


 擁護ようごの先生についていく保育所の幼児のごとき僕。なんやかんやで信用してる。店主に手をふって、店屋をあとにした。教会でお祈りして、そのあと、ようやくダンジョンだ。


 ほんとはさぁ。もっとお城のなかも見物したいし、女神さまに会ってみたいんだけどな。すっごい美人らしいし。でも、封印された古代の魔物が解放されたあと、蘭さんやアンドーくんや、ほかの仲間がどうなったのか、早く知りたい。みんな、無事だといいな。


「さ、こっちに来い」


 手招きされて歩いていく。

 お城を出てくんだけど……うん? なんか、見おぼえのあるとこへむかってく?


「さ、ここだ」


 ダークさんの指さしたのは、やっぱりね! 最初に僕が倒れてた洞くつじゃないか!


「あの、ここなら、僕、知ってたんですが……」

「いやいや、問題はここからだ。なかがややこしいんだよ」

「まあ、そうかも?」


 真っ暗だったし、迷いやすいかな?

 それにしても、光にむかっていってお城に出たってことは、奥へ走っていけば、もとの世界に帰れたんじゃ?


「ほんとに、ここであってるんですよね?」

「もちろんだ。だって、ここに倒れてたんだろ? ここがこの世界の出入口だからだ」

「そういうことですか」


 しょうがない。案内してもらうか。

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