2 サイレンーさよなら、
かなしげな
帰りは静かだった。本当につらくて、畑に全部投げ出してしまいたかったが。物を大切にという監督の言葉が染みついていたのか、バットを引きずることさえなかった。
閑散とした帰路でしかし、心は穏やかでなかった。
もう、あつくはない。少し大きくなった体はただ、畳の上につぶれたチョコレートクッキーの空き箱のように、大切な中身を失っていた。
蜩の声が聴こえる。夏の終わりがどうしてこうも寂しいのか、私にはわかりたくなかった。
春半ばにて朱夏を想う @3ma
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