2サイレンー ボールペン

 俺の名前は†刹那=テセンボンデ=シャカパチ=卍=ファイヤー=漆黒の堕天使=堕ちた右腕χ†だ。名前が長いので俺のことは「堕ちた王」とでも呼んでくれ。朕の国を滅ぼした極悪人である「ベリアルの左腕」と「サタンの右足」と「バアルの左足」と「ベルゼブブの躰」と「フラウロスの心臓」と「悪魔の頭」を追ってこの学校に滞在している。今日は学校に行くと「ベリアルの左腕」の手先であるクラスメートX(彼(彼女)の身の安全の為に名前は公表しないでおく)が拙者の机に悪魔文字を残していた。ここらの民草が使うニホンゴという言葉では「死ね」であったり「アトデウラニコイ」と読むらしい。朕は「王国」の一族の末裔で悪魔文字の翻訳ができる為にこれが「帰りに体育館裏に来い」と読む事が出来るのだ。これは吾輩の能力の一つでしかない。普段は雨乞いを飯を食べている片手間に行っている。これも王の責務だ。皆は我に恐れ慄いて話しかけることすら出来ないようだが余は民草の心情もよく把握しているが故に構わない。それよりも今日はこのつまらない授業とやらの後に戰いが待っているのだ。僕はこの神聖な戰いに勝利する事で新世界をたたかいとる必要がある。決戰の刻は近い。

 学校が終わって体育館裏にやってきたが、珍しく六人が揃って待ち構えていた。斯様な好機は今しかないと決断した朕は「王国」の伝家の宝刀を取り出した。刀の名は「クーゲルシュライヴァー」と言ふ。短剣よりも遥かに短いこの剣であるが、後光射し煌り耀く光輝なる朕の神速の剣捌きによって瞬く間に3人の目を抉り出し、残る3人を串刺しにした。これで煌り耀ける新世界の新たなる秩序を鬮ることに成功した朕であったが、現実は無常であった。何も知らぬ無辜の民草が「禁忌」を犯した朕を牢獄に叩き入れせしむるべくこの世界の治安組織に通報したのだ。連中を葬り去ることは蠅を殺すよりも簡単なことであったが、朕は無辜の民にあらぬ疑いがかからぬよう、またこの世界の秩序を徒に乱す事が無い様、大人しく連行される事を決意したのだ。私がこれを書き留めている最中、サイレンの音が聞こえた。

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