悪役令嬢日記―それは私ではありません。だから私を聖女と呼ばないでー!―

花月夜れん

日記

6月3日

本日、頭を打って私になった。ここのことは覚えてる。だって、私の大好きな世界だもの。

毎日エラノールが書いてた日記。続けないと変に思われるよね。何書こうかな。


6月4日

お見舞いにメインターゲットがやってきた。ヤバい、格好いい格好いい格好いい!! 大好き。その冷たい視線すら愛おしい。


6月5日

婚約破棄をほのめかされた。はぁ、嫌だけどルート通りならしかたがないよね。なぁんて、私は諦めないんだから。この先に起こること全部覚えてるし、全員私がヒロインより先に救ってあげる!! 待っててー!


 …………。


「どうだ、何か思い出したか?」


 私は首を横にふる。だって、これで私は婚約破棄されたあと、隣国の王子から求愛されて、なぜか宰相の息子や魔導師長、騎士団長、他にも他にも求婚され、とりあえず求婚されまくり、聖女の力に目覚めて国を守ったのはどうしてか、理解しろと言われたって無理な話でしょ?

 しかも、私の記憶がない日なんて、三日しか日記が続いていないし……。

 私室でお兄様が項垂うなだれる。私も負けないくらい項垂うなだれたい。


「明日、シュバルツ様がいらっしゃるぞ」


 婚約破棄したはずなのにいまだ婚約者であるシュバルツ様。やっぱり私がいいなんてムシがよすぎませんか?


「お兄様、私自由に生きます!」

「え、は? 何を言ってるんだ? だって」

「だって記憶がないんですもの。聖女の力の使い方だって知りません。だからきっとまた捨てられてしまいます」


 泣くふりをすればきっと聞いてもらえるはず。だって、お兄様は私の味方ですもの。


「いや、ダメだ!! 思い出すんだ! エラノール」


 思い出したくてもですね……。


「三日で書き飽きてる日記では無理ですぅぅぅ!!」

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