第65話 新しい仲間が増える

 良質な銅が大量に届いた。

 協力してくれたのは荊州の商人だった。


 何の事はない。

 荊州と益州をテリトリーにしている商人の力を借りれば、劉焉を頼らずとも銅を買い付けることができた。

 しかも劉焉が提示してきた額の半値だった。


 裏で協力してくれたのは蒯越である。

 朝廷に貸しを作っておいた方がいい、と判断したのだろう。


『呂布と王允の組み合わせが上手く機能している』と蒯越に思わせるだけの何かがあったらしい。


 さっそく呂青は銅を積載した馬車を荀攸のところへ届けた。

 すると荀家の面々がやってきて、その場で会議が始まった。


「呂青殿、これと同じ品質の銅を買えるだけ買い付けてほしい」

「いや……しかし……私が動かせる金には限度がある」

「問題ない。荀家の私財が残っている」


 本気の文官の目だった。

 荀家の人は一度火が付くと止まらなかった。


 同じ頃、武官の方でも成果があった。

 樊稠と張済は涼州へ。

 徐栄と華雄は司隷へ。

 呂布と高順と張遼は并州へ。

 独立勢力に帰順を促すため軍を進めていた。


 大半の勢力は大人しく降伏した。

 そのまま軍に加わる者もあったし、武器を捨てて農民に戻る者もあった。

 抵抗してくる賊軍は討伐されて別の州へ逃げていった。


 賊の中で一大勢力を築いていたのが白波賊はくはぞくである。

 洛陽を北西へ進むと(直線だと三百キロくらい)白波谷と呼ばれる土地がある。

 そこに巣食っていた黄巾賊の残党である。


 まずは呂布軍と一戦交えた。

 あまりの強さに驚いた白波賊のリーダー楊奉ようほうは長安に帰順することを誓った。


 しかし移動中に部下のヒソヒソ話を聞いてしまう。


『楊奉は逆臣として殺された李傕の旧友である。きっと王允が許さないだろう。楊奉だけでも始末して首を差し出した方がいいのでは?』


 楊奉はビビって逃げ出した。


 困ったのは残されたメンバーである。

 副官の徐晃じょこうがリーダーに繰り上がった。

 その後、楊奉の行方を知る者は誰もいなかった。


 ある日、門の警備についていた呂青のところへ李粛の馬が走ってきた。


「でっかい斧を担いだ男が帰順を申し出てきた。白波賊の残党を名乗っているが、呂青殿はこの男をご存知か?」

「でっかい斧? でしたら徐晃でしょう。丁重に迎えましょう」


 賊といっても数年間生き延びてきただけあって、並の軍隊より組織化されていた。


 もう一つ嬉しい知らせがあった。

 徐栄と華雄が洛陽にいた賊を蹴散らして、三年ぶりに旧都を取り戻したのである。


 劉協が喜んだ。

 その他の廷臣も歓喜した。


 徐栄と華雄は焼け跡からボロボロになった霊廟れいびょうを見つけると、簡単に修復してから長安へ帰陣した。

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