交換日記

後藤権左ェ門

交換日記

 交換日記とは斯くも残酷なものである。


 何故なら交換する相手がいないと成立しないものだからだ。


 交換する相手のいない俺にとっては無縁のもの。


 交換日記に興味があるわけではないが、蚊帳の外にされるというのは面白くない。


 あー、友達・恋人いるやつ全員に天罰が下らないかなぁ。


 本当の日記が交換されちまえばなぁ……


 ……


 …………


 ………………


 それだよ! 本当の日記を交換しちまえばいいんだ!


 どうせ本当の日記にはお互いの悪口が腐るほど書かれてるんだ。


 それを読んだらどうなる? 火を見るより明らかだ!


 でも、どうやって交換するかなぁ。


 家に忍び込むわけにもいかないし。


『私がお手伝いいたしましょう』


「うわぁ! 誰だお前! 勝手に人の部屋に入ってくるなよ!」


『怪しいものではありません。私があなたの願いを叶えて差し上げましょう』


「はっ! あんたが日記を交換してきてくれるって?」


『このカメラで2ショット写真を撮影してください。そうすれば、その2人の日記が交換されます』


「そんなことで本当に俺の願いが叶うのかぁ? 怪しいもんだなぁ。まぁ試すだけタダだしな、もらっといてやる……」


 言い終わる前に怪しい男は消えていた。




 次の日、俺はカメラを持って学校へ行く。


 これから仲のいい2人の関係を崩壊させられると思ったら笑えてくるぜ。


 誰にしようかなー? いけすかないイケメン野郎か、爽やかスポーツマンか。


 可愛い子ぶってるぶりっ子女も捨てがたいなー。


 でも、やっぱり1番はいつも俺をイジってくるあのチャラ男だな。


 俺はカメラを取り出す。

 あいつに仕返ししてやれるなんて、最っ高の気分だ。


「お! お前いいカメラ持ってんじゃーん!」


「ちょ、やめてくれよぅ」


 まずい! カメラを取られてしまった。


「いいじゃん、いいじゃん! そうだ! お前と美緒の2ショット撮ってやるよ! お前いっつもキモい目してチラチラ見てるもんな」


「いや、ホントに勘弁してくださいぃ!」


「それじゃあ撮るぞー! ハイ、チーズ!」


 あぁぁぁぁぁぁ!!!!!!


――――――――――――――――――


『あぁ、残念……

手伝って差し上げたのに、逆にやられてしまうとは……


あまり悪いことは考えないことですね……


次はどなたのお手伝いをしましょうか……』

 















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