白衣の滅殺者
「どうシテ……私は力も得タ、
「そんな簡単な事を聞くのか?」
「アァ!?」
剣を振り続けながら口を開いたルイ。だが答えを言う前に防御に使われてた大剣が限界を迎え、斜めに斬り払うと共に刀身の中間辺りで二つに切り離された。
「これで終わりだ。大人しく降伏しろ」
「私はまだ……負けていナイ!」
大剣をルイに向かって投げ付ける父親。ルイは飛んでくる大剣を再び二つに別つと、囮として投げたのか、目の前には父親が向かってきていた。
大きく口を開け、ルイの首元に喰らいつこうとする。しかし直前でその動きが止まった。
「あ、……がハァ!!」
ルイは父親の左胸に剣を突き刺していた。
全く動じないルイの目に恐怖を覚える父親。ルイはその隙を見逃さず、左胸から左肩の方へ切り上げる。最初に裂かれていた左腕がついに切り落とされた瞬間だった。
「グがァァァァァ!!」
なおも冷徹な瞳で睨むルイ。
父親は鮮血が溢れる左腕を抑えながらルイからゆっくりと離れる。
「グァァ!クソッ……魔力は私の方が上なはず、なぜ……!」
溢れ出る鮮血はもはや人と同じ色ではなく、吸い込まれそうな程に黒く澄んでいた。
だが悪魔故の生命力なのか、腕は再生せずとも出血は徐々に収まっていく。
「そんなの、まだ体に慣れてないからですよ」
その時、どこからともなく声が聞こえる。
やがて父親の左隣から、ユウキも使っていた空間を割いた穴から白衣を着た人物が現れた。
その姿を見た瞬間、今まで立っているのがやっとの状態だったトウヤの瞳に怒りの炎が燃え上がる。
「お前――!!」
「トウヤ知ってるのか?」
鎌の柄を杖として使いながらルイの隣へと来ると、荒い息を整えながら鎌を構える。
「アイツがレンを連れてった奴だ……」
「なんだと……?」
だがトウヤの言葉には表情どころか関心すら向けない白衣の
「お前カ……どういう事ダ?」
「詳しくは後でお話ししますよ。今は戻りましょう」
知り合いかのように話し掛ける父親を尻目に白衣の
「全て回収したな――それではごきげんよう。ルイ君、トウヤ君。ああ! リュウト君にもよろしくお伝え下さい」
父親を先に黒穴へ通らせ、丁寧にお辞儀する白衣の
「そういえば――我々の実験材料の『廃棄』ありがとうございました。おかげで手間が省けましたよ。それでは今度こそ」
「待て!」
トウヤは鎌を握りおぼつかない足取りながらも黒穴へと駆け寄る。しかしルイは直ぐにその後を追いかけ、トウヤの前に右手を出した。
「よせトウヤ。仮に通れても今の状況では危ない」
「……わかった」
白衣の
「だが次は必ず……」
ルイは父親が消えた黒穴の奥をじっと見つめながら呟く。
やがてゆっくりと閉じていく黒穴が空間から消え去ると、家の方から二人へ近付いてくる足音が聞こえてきた。
「ルイ! トウヤ! 今物凄い魔力を感じたけど、何があったんだ?」
駆け付けたリュウトにルイは振り返る事無く、小さくため息を漏らす。
「逃げられた。いや、と言うより増援が来て勝てないと見越したから逃がした、かな。でもこれは取り戻せたよ」
ルイはそう言って、盾を持つ左手を広げる。握られていたのは、父親の胸ポケットに入っていたリュウトのペンダントだった。
「これ……ありがとな」
左胸を突き刺した時に奪い返したペンダントを歩み寄ってきたリュウトに返す。その後二人から少し離れ、ほぼ壊滅したパーティー会場を見渡す。半壊した屋台、抉られた地面。避難した客人は家の中で恐れ戦き、主催者である母親も意識を失っている。
「ルイ……お前……」
変わり果てた実家と、人ではなくなった父親との戦い。ルイの心境を考えると言葉に詰まるものの、リュウトは何も言わない事もまた出来なかった。
「なぁリュウト……僕は間違っていないよな?」
突然、ルイは背を向けたままリュウトに話しかける。
「え?」
「
リュウトは少しだけ目を泳がせた後、まるで覚悟が決まったかのように視線を鋭くさせた。
「多分、俺でもそうすると思う。家族を止めんのは家族だと思うからな」
リュウトの答えを聞いたルイは、フッと僅かに口角を上げる。体ごとゆっくり二人の方へ向き直ると、疲弊したような、でもどこか安心したような穏やかな笑みを浮かべていた。
「ありがとう、それが聞けて良かった……」
その後、緊急で呼んだ
来客者も小さな傷はあるものの、悪魔と化した一人の女性を除き全員無事であった。
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