滅殺者戦(2)
「一か八か、やってみる価値はあるな」
最初とは逆で盾を前に向けた体勢で構えるルイ。その口元は僅かに微笑んでいるが、表情には焦りも浮かんでいた。
「リュウト、トウヤ、やつの両手を二人でどうにか出来ないだろうか。もしくは片手でも構わない」
「……考えがあるのか?」
この状況で策が無ければ全滅に等しい。リュウトがチラリとルイの方に視線を向ける。その行動に応えるようにルイはゆっくり頷いて見せた。
「初歩的な戦術では向こうの方が上だろうからね。ここの筋肉を使うのさ」
ルイは左の人差し指で自分の頭をトントンと叩く。ルイの頭へ視線を向けた時、何かを察したリュウトは納得したように笑みを浮かべ、魔剣を右下段に構える。
「何を企んでるか知らないが勝てると思ってるのか?」
不敵な笑みを浮かべ、手招きをするように三人を煽る
「トウヤ、やつの左を頼むぜ」
「わかった……行くよ!」
トウヤの合図と共に再び正面から斬り掛かるリュウト達。だが二人は
初めは上手く避けていく
「少しはやるようだな、だがもうこの体は人ではないんだよ」
焦れったくなったのか、
「くそ!」
「もう元の人間は死んでるからな、こんな体痛くもない」
「ならば本体が出るまで叩くまでだ!」
剣に魔力を溜めたルイが勢いよく駆け寄る。
だがリュウト達が許さなかった。貫いた武器を振るい
「逃がすかよ……!」
貫通した切っ先のせいで身動きが取れず地面へ磔の状態となった。リュウトとトウヤは抜け出されないよう、必死に武器を地面へと突き刺す。
ルイは飛び上がり、剣で
「……残念、まだ甘い」
肉の切れる生々しい音と共に手の甲から中指にかけて斬り開かれた手を見た後、落下してくるルイを睨む。
「ガキが、そんな魔力の弱い剣で何が出来る?」
「こうやるのさ!」
ルイは上空から剣を一振り。刃から細い三日月形の魔力が
だが威力が弱いのか、
「効くかそんな物――ッ!」
ルイは魔力を溜めていた剣を後方に、盾を前方になる構えへ切り替えていた。同時に魔力は盾へと移されていく。
「肉弾戦か?そんな物、盾ごとお前も斬り落として――」
糸で引かれるように剣が右手へ収まるも、その手で握る事が出来ず無様に地面へと落ちていく。
痛覚が鈍っているが故の欠点と言えるだろう。
「残念だな、そんな手じゃ握れないだろ。それに教えてやろう。僕の主力は
勢いよく魔力を宿した盾が滅殺者の体に直撃する。
数メートルの厚みがある石材の床も破壊する力が滅殺者の体へ万力のように圧力をかけた。
「く、そ……ぐぁぁぁぁあ!」
ルイの盾から魔力が消え、恐る恐る
「はぁ、はぁ、やったか?」
リュウトやトウヤも
「助かったぜルイ……やっぱりお前は脳筋だな」
「ふふ、だからこそこの
三人が僅かに気を許した瞬間、滅殺者の指がピクリと動く。
同時に
「これは!」
「まずい……離れ――ッ!」
魔装具を持つ者は魔力を感知出来る。強い吐き気を催すような魔力に三人が
「どこへ逃げる気ダ、アァ?」
黒血の中からタコのような軟体の触手が現れ、三人の足に絡みつく。抜け出そうとするも引っ張られる力の方が強い。
「第二回戦と行こうゼェ!!」
滅殺者は笑顔を浮かべながら、触手で捕まえた三人を道連れに穴の中へと落ちて行く。
「痛って……」
「二人共大丈夫か!?」
落ちてきた穴がビー玉程の大きさに見える下層。リュウト達が見上げていると、滅殺者の狂ったような笑い声が聞こえてくる。
その声色は、人が普通に発するのとは違い、地の底から響くような黒い感情が込められていた。
「ここでオレが、我らが呼び出されたんダ……他の奴らはみーんな殺さレタ……だからナァ」
「これは……まずい!」
その魔法陣にも似た何かを理解したルイは、周囲を見渡し上階へと戻る入り口を見つける。
「リュウト、トウヤ!あそこへ走るぞ!!」
「誰が逃げるっテ?」
入り口へ向かう前に、触手によって壁を壊され瓦礫に塞がれる。
「逃げんナヨ……お前達は我らをここに閉じ込めたダロ?だったら一緒に居ようゼェ!」
薄暗い部屋が魔法陣によりわずかに明るくなる。そこで顕になったのは、十メートル以上はあるだろう巨大なタコのような外見。そして頭と触手の部位の間に、人間として残された上半身が埋められた
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