滅殺者戦(1)
「ルイお前!何やってんだよ!?」
リュウトの焦りが混じる声に返すことなく真っ直ぐ見つめ続けるルイ。そもそも
「おい!聞いてんのか!」
ルイは静かに目を閉じ、数秒後にゆっくり開くと首を小さく横に振った。
「あいつは人じゃない」
言い放ったルイの瞳は、変わらず飛ばされた
「人じゃないって?あの人は
「く、首が!」
ルイの言葉に半信半疑なリュウトだったが、砂煙が晴れ、
砂煙の中から首元が皮1枚で繋がった
「上手く隠したつもりだったんだがな……よくわかったじゃないか」
首の骨をコキコキと鳴らしながら、睨み付けているルイを見て微笑む。
「恐らく貴様は、階段を降りてきた一人目を喰らったんだろう。そのまま戦闘に入り二人目に致命傷を負わせた」
「ふふ、それで?」
「餌である二人目を引きづりながら、下に逃げた三人目を追って来た。そしてここに来て二人目を喰った後に見付けて、あの訳の分からん装置に入れた……違うか?」
ルイの質問に答える事無く
「ハッハッハッ!お前はどうやらかなり頭が切れるらしいな。そもそもなぜ私が悪魔だと勘づいた?」
「貴様の言動だ」
「これでも祖父が
祖父がマスターと言う言葉を聞いて、口元に笑みを浮かべていた
「少なくとも
胸元で盾を構え、剣の切っ先を
「お前がマスターの孫?……あぁわかったぞ?この喰った
こめかみの辺りを人差し指でトントンと叩きながら楽しそうに話す
「ああ、そうかお前がそうなのか」
天井へ向けられていた瞳がルイの方へ狙いを定めた。目が会った瞬間、ルイは脇を締めて更に体勢を低く構える。
「お前は、お前達だけは許しちゃいけないなぁ……」
「
おざなりに剣を構え、舌を出しながら醜い笑顔を浮かべる滅殺者
《スレイヤー》。だがその瞳は何かの感情で真っ直ぐにルイへと向けられていた。
「やるぞリュウト、トウヤ」
ルイの言葉を合図にトウヤは鎌を、リュウトは魔剣を出現。ふと二人の横顔が視界に入った時、ルイの中で自責の念がこみ上げてくる。
「……すまないな、戦いに巻き込んで」
ルイの言葉にリュウトとトウヤは顔を見合わせ、お互いに口元を緩ませる。
「今度、またあの店のケーキ奢れよ」
「俺達まだお持ち帰りしてないからね」
思ってもいなかった言葉を聞いたルイは、横に並ぶ二人の表情を見て無言のまま頷く。ルイの表情は嬉しさと照れくささが混ざったような、これから戦うにしては何とも緩い顔をしていた。
「助かるよ」
「よし、いくぜトウヤ!」
リュウトの合図と共にトウヤが突っ込む。リュウトは魔剣を右上から、トウヤが鎌を左下から
だが
鎌の刃が眼前を通り過ぎると、自身の剣を体の方に引き寄せリュウトの体勢を崩す。転がるようにリュウトを地面へ転倒させると、トウヤの振り下ろした追撃がリュウトに牙を剥く。
「仲間同士で殺り合えばいいさ」
滅殺者がその場を離れ、鎌の切っ先がリュウトの腹部に狙いを定めた。瞬間、鎌とリュウトの間にルイが立つ。
盾から魔力を放ち自身とリュウトを覆うように甲羅状のバリアを展開し鎌を防ぐ。
「邪魔しやがって」
数メートル離れた位置で楽しみに眺めていた
「助かったぜルイ」
「礼は後だ、もう一度斬り掛かるぞ!」
リュウトが立ち上がると今度は三人で滅殺者を挟み込むように攻勢に出る。
だが候補生三人と悪魔が乗っ取った
剣でリュウトの魔剣を、トウヤの鎌は避けられ、ルイの構えている盾を蹴り飛ばす。体勢を立て直しては攻撃に入るも、鍔迫り合いどころか滅殺者にダメージを与える事も出来ない。
三人は一度距離をとる。攻めに講じていたせいか三人の息は荒くなっていた。
「あれが
未だ傷一つ負ってない
「いや違う。いくら
「はぁ、くそ。前の悪魔より強いって事か」
半年前に決死で戦った甲殻の悪魔が霞んでくるような感覚に陥るリュウト。
「……だがこっちは
はあるはず」
「でも向こうは傷も無いし疲れてもないよ?」
リュウトは歯を噛み締めながら魔剣を握る手にも力が入る。三人でも歯が立たない相手に恐怖よりも、届かない怒りが溢れていた。
「何か大きな一撃があれば……」
「俺が魔力で撃ってもいいけど避けられるしな」
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