探索への道
マナに釘を刺されてから数時間後。本部のビルの明かりも消え、生徒にとっては夏休みに突入する一番ワクワクした時間にリュウトとトウヤは寮の入り口でルイを待っていた。
「そろそろ時間だよな?まさか来ないとか無いよな」
「それは流石に……あ!来たよ」
本部の道をゆっくりと歩いて来るルイ。二人の姿を見付けると、肩の辺りで手を振りながら歩み寄って来た。
「すまない、遅くなってしまったかな?」
「大丈夫だよ」
「それなら良かった。目的地はこの街の郊外にある。時間もあるしゆっくり行こう」
ルイの先導のもと、研究所の跡地と呼ばれる場所を目指して歩き始める二人。レンの事が引っかかっているものの、三人で探検に行くような雰囲気に胸の高鳴りを感じていた。
「では目的地に向かいながら改めて経緯を話そうか。調査を始めたのは一年程前。僕のクラスで例の支部から推薦という形で数名のクラスメイトが移動した」
「その中にルイの幼なじみもいたんだよね?」
先頭を歩くルイが大きく首を縦に振る。
「彼女の転移を止める為に直接話しをしたが、精神的というか、心の部分で違和感を感じて本格的に調査を始めたんだ。最初は父や祖父に相談したが軽くあしらわれて終わってしまった」
もうすぐ日付が変わろうとしている時間だからか、三人以外に歩いている人は一人もおらず、昼間では列を成す車もたまに一台が通って行く程度になっていた。
そんな月明かりの夜道を歩きながらルイは話しを続ける。
「その後はその支部の歴史を調べていたんだ」
「歴史?」
「あの支部は元々本部として使われていたらしいんだ。それを十年程前にこの街に移したらしい。理由を探ってはみたんだが、見付からなかった」
ルイの話しを聞きながら進んで行く道に、リュウトはどこか懐かしさを感じ始める。
「それからは家にある祖父の書斎から研究所の資料とかを漁っていた。そこで研究所の跡地があるって情報を見付けたんだ」
「他に何かわかるような事は無かったの?」
トウヤの問いにルイは静かに首を横に振った。
「後の事は
「なぁ、ルイ」
リュウトは立ち止まると、先を歩くルイを呼び止める。まだ遠くの方にある森へ視線を向けたまま立ち尽くすリュウトに、二人は小さく首を傾げながら歩みを戻す。
「どうかした?」
未だ視線は同じ方向を見つめたままのリュウト。体調でも悪くなったのかと思いルイが聞こうとした時だった。
「俺この道知ってるよ」
「え?」
「なぁその跡地って病院みたいな建物じゃねぇか?」
そう言いながらリュウトがルイへ視線を移すと、ルイは少し驚いた表情のままゆっくりと頷いて見せた。トウヤも訳が分からず片眉を下げながらリュウトの顔を覗く。
「どうして知っているんだい?」
「俺が助けられた時にそこで手当てを受けたんだ」
リュウトの言葉にルイは目を見開くと同時にリュウトの肩に手を乗せ揺さぶり始めた。
「それはいつの話しだ!建物は生きていたのか?そもそも誰に手当てを受けたんだ!」
「その前に落ち着けよ!」
リュウトの声に我に返ったルイは肩から手を離すと恥ずかしそうに顔を逸らした。焦ったリュウトもルイの姿を見ながら大きくため息を漏らす。
「すまない……つい……」
「ルイってイメージより感情的だよね」
「普段はこうならないように気を付けているんだがな……」
反省しているのか、俯き気味で話すルイにトウヤは微笑と苦笑が混ざったような笑顔を浮かべる。
「居たのは本部に来る前の数日間だ。その時にはもう廃墟だったし、機材も心電図とか病院で見る物と同じだったよ。手当を受けたのはユウキとリサだ」
「そうか、あの
思考を巡らしているルイを横目に見ながら、リュウトとトウヤはため息を漏らす。
「ひとまず、その廃墟に行ってから考えてみようぜ」
「それもそうだな。……すまない、無駄足を踏んでしまって」
小さく頷いてから俯き気味に呟くルイを見て、リュウトは肩にポンと優しく触れて廃墟がある方向へ歩き出す。
「気にしてねぇから大丈夫だ」
「行こうルイ」
先程まで先頭を歩いていたルイが今度は先を歩く二人について行くような状態で歩き出す。三人でどこかへ向かう感覚にリュウトもトウヤも、どことなく懐かしさを感じていた。
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