-note-
岡田公明/ゆめみけい
疑問
生きている中で、いくつも疑問があります。しかしながら、それを全て覚えておくことは不可能です。
ふとした瞬間、例えばトイレだったり、お風呂だったり、空を眺めた時に、授業中に浮かび上がった疑問を、数日、否、一日も覚えておくことは、不可能でしょう。しかし、そのような疑問というのは、思いもよらぬ突飛な方向から、言ってしまえば全くお門違いな場所から浮かぶこともあり。
その浮かんだものというのには、無機物的な価値があるのではないかと考えるわけです。そうした、無機物的な価値というのは、一般的にあまり受けないでしょうし、そのような忘れてしまう小さなものに対する価値というのは、人が営む中で小さいものと考えます。
そして、たまたま調べる機会があったとしても、わざわざ調べないこともあります。実の所、人の思い付きの能力はその程度のものの訳です。
記憶を整理していく中で、浮かんできた情景を、1週間綺麗に脳内のフィルタリングで残すことは出来ません。
それは、あくまで長い営みの中で薄れていき、改変され、当時の思い出が輝かしくなったり、逆に風化して寂れていくこともあります。
そうなった時に、その思い出が正常で美しいものと言えるのでしょうか?
それは、あまりに誇張されすぎた偶像に過ぎないと、知らされる時も多いと自覚しなくてはいけません。
例えば料理でしょう。
食べたことのない、美味しい珍味に出会った時に、ふと残る印象と、その後に、その美味しいという部分が、誇張されて再び食べた時に、思っていたのと違う感というのは、拭えません。
また、その人間の記憶的限界を写真で補強できるという考えも、実に安直な物です。
あくまで、写真というのは空間の一部を切り取っているだけに過ぎず、それは記憶のクリッピングになるわけではないのです。
そうなった時に、新鮮な情報をいかにして美しく残すのかというのが、人には望まれます。それを可能とするのが、日記なのかな?と個人的に考えました。
これには、最大の利点があります。
そう、日記というものが行えるのは、写真や曖昧な記憶というものではなく、当時の記憶を記録として残す、言ってしまえば、記憶のクリッピングが可能な訳です。
そして、それを鮮明に残しておくことによって、生じることは、単純でその当時の記憶を懐かしむことができ、また当時の正確な記憶を再び掘り起こすことが可能になります。
人間の記憶には脆弱性があります、全てを保存するには脳というメモリーはあまりに小さく、そしていつの間にか、細かい記憶という物はそぎ落とされ、印象深いもののみが残ってしまいます。
また、大きな記憶を失ってしまった時、自分がどのような人間であったのか、その経路をたどるのは、難しいと考えます。
これは、人間の記憶の脆弱性であり、そして写真では補えない部分です。
あくまで、写真が空間を切り取るというのは当時のことを懐かしむことができる前提で成り立つものであり、逆に言ってしまえば、当時を懐かしむことができない、それを共有できない、また自身が忘れてしまった際に、その何にもならないものとなってしまいます。
ふと空を見て、カメラに捉えた満月や、あの日みんなと行った花火の写真も
完全に空間を切り取ることはできません、それは形とはなるものの、それ以外の何かになるのは不可能な訳です。
そんな訳ないと思うかもしれないですが、人の記憶は徐々に要領を増やすために削り、そしてそこに新たな記憶を補充します。
それを繰り返すことで、どうにかオーバーヒートしないことを保っています。
悲しみや辛さも、そして喜びや楽しさというのも、鮮明に数十年数百年と、記憶の中に保持し続けることは、不可能と言えるでしょう。
そうなった時に、その当時の感覚を拙いながらも文章に掘り起こすことで、自分の中で形として昇華し、それを新たな何かとして形に残すことが、工程としてまた結果として重要なのではないかと私は考えます。
それは、あくまで紙にと補足を加えます。
電子機器でそれを取ってしまうと、あくまでデータベース上であり、それを形と私は認識しないのではないかと思います。
いざという時の紛失を加味しても、実際に紙に手書きでというのが手間をかけつつも、記憶の振り返りや、その他の利便の面でも良いのではないかと思います。
必要なのは、形に残すことです。
そして、何かしらの形に起こす工程を行ううえで、自分を振り返り、そして立ち止まり考えることが可能になります。
昨日の食事を記憶から掘り起こすのが難しかったり、その時の会話で笑ったことを記録するのでも構いません、何かを書いて、自分の中にある何かを記録として残すこと、起こすこと思考する工程そして、後に自分自身を振り返るときに目安として現世に残すことが、大事なのです。
電子機器の脆弱性はそこにあります。
それは、やってみないと実感できない物なのかもしれません。
ただ、一つ言えることが、いつかの自分が、今の自分を後押ししてくれる可能性があるということです。
-note- 岡田公明/ゆめみけい @oka1098
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