フラグ折り犬

るるあ

本編


3の月 火の日

 父上から命じられた為、今日から日記を書く事にした。

 日記とは、自分の行動や思考を振り返るために重要な物だというので、なるべく毎日書こうと思う。



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4の月 水の日


 今日から私は魔狼ゲレーロと絆を結ぶ事になった。産まれた時から側にいた親友の事を、ずっと犬だと思っていたので驚いた。

 父上に、どんな時でもゲレーロと行動を共にしなさいと厳命された。魔狼は、魔石を加工したブローチを契約者固有の魔力で染め上げれば、そこに住む事が出来るらしい。

 先日、枯渇前まで魔石に魔力を注いだ理由はこれだったのか、と合点がいった。

 また、ふらぐ?について説明を受けたが、よく分からなかった。

 涙目の父上に、次代を引き継ぐ、健闘を祈ると言われた。母上はずっと笑顔だった。

 なんだか背筋が寒くなった気がしたが、風邪だろうか?ゲレーロをモフモフして暖まることにする。



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5の月 土の日

 今日は私と、魔狼のゲレーロについて書いておこうと思う。

 我が領は広大な森に隣接しており、そこに住む魔物とうまく共存する為、主である魔狼とパートナー契約を結んでいる。

 私は父上の魔狼、ゲレゲレが産んだゲレーロと絆を結ぶ事が出来た為、後継補佐として盾となる資格を得た。

 後継は満場一致で姉上に決まっているので、本当は婿殿と契約して頂きたかったが、魔狼はうちの血筋がいいらしい。

 それに、王弟である義兄上は頭脳派で線も細く、猫派だと言うし、自分と姉上の間に何かが居るのは納得がいかないというヤンデレ?(母上に教わった)なので、まぁ、私がなるべくしてなったのだろう。

 しかし、武に長けた、女傑と呼ばれる姉上が、義兄上の前ではあんな風になるのは、見てはいけないものを見た気がする。

 姉は猫だったのだな…。


 私は睦まじすぎる姉夫婦に直面すると、どうしたらいいか分からず固まってしまうのだが、決まってゲレーロが連れ出してくれる。

 ゲレーロは、空気を読むのが上手いと思う。私はクソ真面目で朴念仁とよくからかわれるので、見習いたい。



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6の月 木の日

 魔狼との絆について、自ら冒険者ギルドで公的に契約するよう、父上に申しつけられたので、従者のロレンスと共に行く事にした。

 母上はなんと、既に私達にぴったりの冒険者風装束を用意して下さっていた。流石だなと関心していたのだが、ロレンスは変な顔をしていた。何故だろう?

 そうそう、窓口の女性に契約の件をお願いした時なのだが、、その女性を慕う、若干薄汚れた、いや、働き者の冒険者達に因縁?をつけられた。

 不敬ではあるが、私達はお忍び中。余り大袈裟な事になっては家の評価が下がる。

 そこで、ゲレーロを顕現させ、登録に来た旨を懇切丁寧に説明する事にした。話せば解る、よく父上が言っていた。

 美しくも凛々しい顔つき、尻尾を含めた体長が私の2倍はあるのに、私にはお腹を見せて撫でるよう強請る所など、実演しつつなるべく具体的に、麗しい様子を示したので、理解して貰えたように思う。

 ちょっとゲレーロについての愛が溢れすぎた気は、する。しかし、彼女(ゲレーロは雌だ)の魅力は1鐘程度では語り尽くせない程なのだから、仕方ない。

 邸に帰還し、念の為、両親にギルドでの事を報告した所、母上から、家名を出さずにうまく収めた、よくやりましたとお褒め頂いた。

 新人冒険者というものは、荒くれ者に絡まれるのがお約束?らしい。

 話中、父上の目が死んでいた気がしたのだが、昔ゲレゲレを登録した時に何かあったのだろうか?

 まぁ、ゲレーロについては無事に済ませたので良かったと思う。



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7の月 闇の日

 魔狼と契約した為、王都の学園に編入する事になった。領地の学校では魔狼についての専門家が居ないので、よく学ぶ為だ。

 登園初日、廊下を歩いていた時にピンクブロンドの令嬢とぶつかりそうになったのだが、我が親友・ゲレーロが風魔法でクッションを作成し、事故を防ぐ事が出来た。

 令嬢を助け起こす事も、ゲレーロが魔法で行ってくれたのには驚いた。その際、舌打ちのような音がしたが気のせいであろうか。

 そして、何処からか、令嬢を慕う令息達が現れて連れて行かれてしまった。人気があるのだな。

 そうだ、あの令嬢は、デビュタントで殿下と踊っていたヒロイリーナ男爵令嬢だ!

 婚約者のアキュラ大公令嬢は大変特徴的な髪色なのだな、とロレンスに確認したら、別人ですと説明を受けたから、憶えていたぞ!

 社交に疎い私でも思い出す事に成功した。大きな進歩だな!

 これは、心配性の母上にご報告しなくてはならん!



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8の月 水の日

 母上から手紙で、王都に居る届け出を冒険者ギルドにしておくように連絡があった。

 母上は用意周到、あの時の冒険者風の装束も送って下さったので、またロレンスと行くことにした。

 さすが王都の冒険者ギルド、我が領地の物よりも広くて整然としていた。また冒険者の数も多く、小綺麗にしていた。高ランクの者や貴族が多いのだろうか?


 また、興味深い冒険者チームを見つけた。

明らかにオーラの違う精悍な青年を、薄汚れ、いや、仕事熱心な男女が取り囲み、何やら揉めているようだった。


 気にせず窓口へ並ぼうとした時、その彼らに割り込まれてしまった。

 【何があっても平常心、自身は壁の一部になり気配を消せ】という父上の処世術を思い出し、成り行きに任せていると

 精悍な青年がギルドカードを取り上げられ、窓口へ返却されていた。


 “ロレンス、先程のギルドカード、SSSランクだけが持てるミスリル製だった気がするのだが、このギルドは大丈夫か?”


 と、ゲレーロの念派スキルで聞いたつもりが、うまく行かず私が口に出していたらしく、ギルドが騒然としてしまった。

 ゲレーロでもミスをする事があるのだな。可愛いなと、ゲレーロをモフモフしていると、気が付けば揉め事は終わっていたようだ。

 その後、無事王都での滞在手続きは完了した。ゲレーロはそそっかしいんだな、とロレンスに言ったら、棒を呑んだような顔をしていた。何故だろうか?



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12の月 闇の日

 今日は学園の卒業式だった。

 私の学園編入も終わるので、両親共に式に参加して下さった。

 顕現させたゲレーロも帯同を許された為、母上が魔石等でおめかしさせていた。とても可愛かった。

 魔石は、魔道具方面に明るい義兄上が作成したものだと言う。エイシャキ?エイゾウ?とか言う機能があって、母上のお気に入りだそうだ。

 これでダンザイ?を姉夫婦にも見せられるなどと言っていたが、私が聞いてもはぐらかされてしまった。まあ腹芸が出来ぬ私はおとなしくしているのが正しいのだろう。

 

 式典は恙無く行われたが、その後の晩餐会は酷いものだった。

 第二王子殿下とその取り巻き達が、このような公式の場で大公令嬢に、冤罪で婚約破棄を申し付けたのだ。

 大公に喧嘩を売るとは、幽閉か毒杯だな。

 また、ロレンスに聞いたところ、アキュラ大公令嬢とは既に婚約白紙撤回になっているらしい。ああ、王家は切り捨てたのか。

 

 流石に私でも、母上の言うダンザイとはこれの事だと理解した。そう言えば姉上は婚約者候補に上がっていたな。

 

 私はゲレーロに、因果応報だな、と話して撫でていると、ゲレーロは揉めている団体に向けて、高い音で吠えかけた。

 途端に王子殿下とその取り巻き達がバタバタと倒れ込んだ。

 辺りは騒然となり、宴はお開きとなった。

 騒動関係者達は、後日招集があるらしかった。



 その後の話を母上から聞いたが、あのピンクブロンド、頭がおかしい。

 なんと、自分はカクシキャラ?の王弟と結ばれると暴れているらしいのだ。既に我が辺境に婿入りしているのを、何故誰も教えなかったのか?

 あんなに沢山の令息達に、さらには第二王子殿下やその取り巻きと引っ付いていたのは何だったのか。

 



 まあ色々あったが、王都での生活は大変有意義だったと思う。

 この経験を領地での生活に活かして、姉夫婦を支えて行けるよう精進していきたい。


 しかし、ピンクブロンドの髪色は流行っているのだろうか?我が領地の孤児院で、同じ様な女児がよく見かけられると母上から聞いた。

 今度、孤児院への視察を母上から命じられて、ゲレーロと共に伺う予定がある。

 手練のロレンスも一緒であるし、何かあるようなら確認しておくべきだろうか?

 まあ、私にはゲレーロがいるから、何かあっても大丈夫であろう!


 

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